1. テロワールとは?意味などの基本的な特徴を解説

はじめに、テロワールという言葉の意味や語源など、基本的な部分から解説していこう。その意味を日本語で表現するのはニュアンス的に難しいともいわれるが、フランスを筆頭に、ヨーロッパでは古くから根付いたワイン用語のひとつなので、よく理解しておこう。
テロワールの意味
テロワールの意味とは、簡単に説明すると「ブドウ畑全体を取り巻く自然環境要因」のことを指す。これはフランスにおけるワイン法のベースともなっており、特定された地域や地区、ブドウ畑から造られたワインには、特有の個性が表れるという思想である。日照時間や気温、降水量などの気象条件をはじめ、地質や水はけなどの土壌の条件、そして地形や標高など、ブドウ畑を取り巻く自然環境のすべてがテロワールとされるのだ。また近年では、ワインの造り手もテロワールのひとつとして考えられるようになった。しかし実際にはテロワールは個々によって考え方が違うものでもあり、国単位で大きくテロワールを考える専門家もいれば、さらに細かくひとつの畑の中でのテロワールを語る専門家も存在するそうだ。
テロワールの語源と由来
テロワールの語源は、ラテン語で「領土」を意味する「テリトリウム」という言葉といわれている。テロワールという言葉自体は、直訳すると「風土」や「土地の個性」といった意味合いとなるが、同じブドウの品種でも畑によって味わいや品質が大きく異なるという事例があったことから、その事実を理解するためのキーワードとして、テロワールという言葉が使われるようになったという。
2. テロワールの影響が強い品種・弱い品種は?

テロワールとは、フランスのワイン法のベースとされるほど重要視されているが、実はすべてのブドウの品種がテロワールの影響を強く受けるとは限らないことも覚えておきたい。本項ではテロワールの影響を強く受けるブドウの品種と、テロワールの影響が弱いブドウの品種の特徴をそれぞれ解説する。
テロワールの影響が強い品種
テロワールの影響を強く受けるブドウの品種を代表するものは、シャルドネ、ピノ・ノワール、そしてリースリングだ。シャルドネでテロワールによる味わいの違いを例に挙げると、冷涼な地域では柑橘系の香りがあり、すっきりとした酸味のあるワインとなるが、温暖な地域では濃厚な果実香と、しっかりとした飲み口のあるワインとなる。このようにテロワールによりはっきりと個性が分かれるブドウの品種は、「テロワールを映し出す鏡」といわれることもある。
テロワールの影響が弱い品種
反対に、テロワールの影響を受けないブドウの品種も存在する。それが、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロである。どのようなテロワールであっても味わいが変わりにくいので、どの土地で造られたワインでも、本場フランスのボルドーワインの味わいを模倣しやすいといわれている。
3. 日本のテロワールとは?

日本ワインというワインをご存じだろうか。これは国産のブドウだけを全量使用して造られたワインのことで、日本を代表するワインブランドだ。近年は日本でも、テロワールを反映したワイン造りが盛んに行われており、世界でも注目を浴びるワインが世に出ている。では、日本のテロワールの特徴を、土地ごとに解説していこう。
北海道のテロワール
北海道の冷涼な気候は、ドイツによく似たテロワールといわれている。ドイツ系のブドウの品種であるケルナーやミュラートゥルガウをはじめ、オーストリアやチェコを代表するブドウの品種、ツヴァイゲルトレーベなどが栽培されている。
長野のテロワール
長野のテロワールの特徴とは、昼と夜の寒暖差が激しい内陸性の気候であることだ。これはフランス系のブドウの品種に向いたテロワールとなっており、シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどが栽培されている。
山梨のテロワール
山梨は日本ワインの発祥の地でありながら、高温多湿になりやすいため、実はブドウの栽培にはあまり向かないテロワールである。湿気を避けるために工夫を凝らした「棚栽培」という伝統的な栽培法を用いて、日本固有のブドウの品種である甲州や甲斐ノワールを栽培している。これらのブドウは上質なワインを生み出すとして、国内外より高い評価を受けている。
4. テロワールはワイン以外にも影響する?

テロワールが与える影響は、ワインだけではない。産地独特の味わいや、特定地域の原料特有の個性などと考えると、テロワールはさまざまなものに影響を与えることがわかる。本項ではワイン以外のものが、テロワールから受ける影響について解説しよう。
ワイン以外のテロワールの影響
極端かもしれないが、飲料水で例を挙げると、都会の水道水と山の湧き水の味わいを比べたとしたら、その違いは誰にでもすぐにわかるだろう。これもひとつのテロワールといえる。特定の土地の素材のよさが顕著に表れるということなのだ。このことから、テロワールは日本酒やお茶、コーヒーや野菜など、さまざまな分野において重要なキーワードとなるのである。
結論
はじめはテロワールと聞いても、ピンとこなかったという人もいたかもしれないが、わかりやすく考えれば難しい用語ではないことをわかってもらえただろうか。ワインはもちろん、さまざまな分野で考えられているテロワールだが、今後は日々の買い物の際などに、テロワールを意識して商品を選んでみるのもおもしろいかもしれない。