1. 貴腐ワインとは?
豊かな香りと凝縮された甘さをもつ貴腐ワイン。まずは、ほかのワインとどう違うのか、そしてどうして値段が高いのか説明しよう。
普通のワインとの違い
貴腐ワインは、辛口ワインやほかの甘口ワインとは違う独特の香り(貴腐香)や凝縮感のある甘味をもっている。貴腐ワインに使われるブドウは普通のワインで使われているのと同じブドウだが、貴腐菌(ボトリティス・シネレア菌)がブドウについて特定の環境で育つことで、糖分の凝縮された貴腐ブドウとなる。その貴腐ブドウが独特の芳香や濃厚な甘味などを生み出しているのだ。
貴腐ワインの値段
貴腐ワインは非常に高価なものが多いが、それには理由がある。まず、貴腐ブドウは気候や土壌などさまざまな条件が整った特定の産地でしか育たず、不作の年にはワインを生産できないこともある。そしてブドウの収穫でも、手摘みして果実を厳選するという大変な手間がかかっている。また、干しブドウのようになった貴腐ブドウからはごくわずかしかワインを造ることができない。こういった手間や希少性の高さから値段が高くなっているのだ。
2. 世界三大貴腐ワインと産地
ここでは世界三大貴腐ワインのソーテルヌ、トカイ、トロッケンベーレンアウスレーゼにくわえて、日本の貴腐ワイン産地についても紹介しよう。
ソーテルヌ
フランスの南西部に位置するソーテルヌ。言わずと知れた貴腐ワインの名産地だ。ソーテルヌ地区はガロンヌ川とシロン川が合流する場所にあり、秋には夕方から朝にかけて霧が発生し、午後になると暖かく乾燥する。これが良質な貴腐ブドウの栽培に理想的な環境となっている。ソーテルヌの中でも最も有名なのが、格付けで唯一の特別一級となっている「シャトー・ディケム」だ。一切妥協せず造られ、貴腐ワインの最高峰に君臨している。貴腐ワイン好きならぜひ味わっておくことをおすすめしたい。
トカイ・アスー
ハンガリーの北東部に位置するトカイ。フルミントというブドウを主要品種とするトカイワインのなかでも、もっともよく知られているのはトカイ・アスーだろう。トカイ・アスーは、貴腐化したブドウを発酵前や発酵中のブドウジュース、または同じ年に造られたワインの中で発酵させて、オーク樽で熟成させて造られる。深い琥珀色でアプリコットやハチミツのような強い香りをもち、甘味だけでなく酸味も持ち合わせている。
トロッケンベーレンアウスレーゼ
ドイツのワイン法で最高級ワインに格付けされるトロッケンベーレンアウスレーゼも世界三大貴腐ワインのひとつに数えられる。トロッケンベーレンアウスレーゼとは産地名ではなく、収穫時の果汁糖度が一定の基準を満たすと名乗ることのできる肩書きだ。干しブドウ状になった貴腐ブドウを用いた極甘口で、アルコール度数が低めであることを特徴とする。
3. 日本の貴腐ワイン
日本でも貴腐ワインは生産されている。日本における貴腐ワイン造りは、1975年にサントリー登美の丘ワイナリー(当時のサントリー山梨ワイナリー)で偶然貴腐化したブドウが発見されたことから始まった。そして1978年に発売された「登美 ノーブルドール 1975」は大きな話題となり、その後もコンクールで受賞を重ねている。現在では国内のほかのワイナリーでも貴腐ワインを造るようになっている。
4. 貴腐ワインの美味しい飲み方
貴腐ワインは特有の香りをもち、粘性が豊かで凝縮された甘味がある。そんな貴腐ワインの美味しさを存分に堪能できる飲み方を覚えておこう。またワインだけをデザートとして飲むのもよいが、料理と合わせるとまた格別だ。ぜひ貴腐ワインと一緒に楽しんでほしいおすすめの料理も紹介しよう。
貴腐ワインが美味しい温度
貴腐ワインの風味を楽しみながらもすっきりと味わうには、冷やして飲むのがおすすめだ。4~8℃くらいがよいだろう。グラスは小ぶりなものを使って少しずつ飲むとよい。そしてグラスの中で温度が上がっていくにつれ、さまざまな香りが表れるのを感じてみよう。
貴腐ワインに合う料理
貴腐ワインにはブルーチーズやフォアグラ料理との相性がバツグンだ。ケーキやパイナップルなどのフルーツ、ドライフルーツなどともよく合う。バニラアイスクリームに貴腐ワインを垂らして食べるのも人気がある。また、お正月のお祝いでおせちと一緒に提供すればその場が一層華やぐことだろう。
5. 貴腐ワインを使ったスイーツも
貴腐ワインが好きな人には貴腐ワインを贅沢に使って加工されたスイーツもおすすめだ。甘いもの好きな人へのちょっと特別な贈り物としても喜ばれるのではないだろうか。
貴腐ワインのチョコレート
世界三大貴腐ワインのひとつであるソーテルヌに漬けこんだレーズンを粉砂糖とビターチョコレートでコーティングした、芳醇な香り漂うチョコレート。熱いチョコレートをかけることでアルコール分はとんでいる。レーズンの甘酸っぱさとカカオのほろ苦さがマッチしてお酒のお供にもぴったりだ。パッケージもオシャレなのでギフトとしてもおすすめしたい。
貴腐ワインのレーズン
貴腐ワインに漬けこんだレーズンは、香り高いフルーティーさと豊かな甘味をもった大人向けの味わいだ。レーズンとの相性がよいとされるワインやウイスキーはもちろん、お茶請けとしても活躍するだろう。
結論
世界中のファンが愛してやまない貴腐ワイン。とても希少で高価だが、一度飲むと忘れられない味わいとなるだろう。甘いワインが苦手な人も、ブルーチーズなどと合わせると貴腐ワインとの相性のよさに驚くかもしれない。日本でも貴腐ワインは造られているのでぜひ一度飲んでみてはいかがだろうか。