1. ピーマンの基本的な栄養価
「日本食品標準成分表」には、生ピーマンとピーマン炒めの栄養価が収録されている。このうち基本である「青ピーマン(生)」の100gあたりの栄養価は以下のとおりである。
青ピーマン(生)100gあたりの栄養価
- エネルギー:20kcal
- たんぱく質:0.9g
- 脂質:0.2g
- 炭水化物:5.1g
- 脂肪酸
・飽和脂肪酸:0.02g
・一価不飽和脂肪酸:Tr
・多価不飽和脂肪酸:0.05g - ビタミン
・βカロテン:400μg
・ビタミンD:0μg
・ビタミンE:0.8mg
・ビタミンK:20μg
・ビタミンB1:0.03mg
・ビタミンB2:0.03mg
・ナイアシン:0.6mg
・ビタミンB6:0.19mg
・ビタミンB12:0μg
・葉酸:26μg
・パントテン酸:0.3mg
・ビオチン:1.6μg
・ビタミンC:76mg - ミネラル
・ナトリウム:1mg
・カリウム:190mg
・カルシウム:11mg
・マグネシウム:11mg
・リン:22mg
・鉄:0.4mg
・亜鉛:0.2mg
・銅:0.06mg
・マンガン:0.10mg
・ヨウ素:Tr
・セレン:0μg
・クロム:1μg
・モリブデン:3μg - 食物繊維:2.3g
(・水溶性食物繊維:0.6g)
(・不溶性食物繊維:1.7g)
2. ピーマンの特徴的な栄養素
前述の一覧からもわかるとおり、ピーマンはβカロテンやビタミンCといったビタミン類を多く含んでいる。また、カリウムや食物繊維の含有量なども多い。ここではそんなピーマンの特徴的な栄養素を、ほかの食品・食材と比較しながら詳しく解説する。
その1.βカロテン
ピーマンは、100gあたり400μgのβカロテンを含んでいる。βカロテンは、体内でビタミンAに変換されて、目や皮膚などを健康な状態に保つ働きを担う。また、βカロテンは「抗酸化作用」を有しているため、活性酸素の発生を抑えたり、活性酸素を取り除いたりする働きもあるという(※1、3)。
【βカロテンが多い主な食品】
- ニンジン:6900μg
- ほうれん草:4200μg
- トマト:540μg
その2.ビタミンC
ピーマンは、100gあたり76mgのビタミンCを含んでいる。ビタミンCは、体内では皮膚や細胞などのコラーゲンを合成するのに役立つ。また、βカロテンと同じで「抗酸化作用」があり、活性酸素の発生を抑える働きがある。成人男性(18~64歳)の1日あたりの推定必要量は85mgであるため、ピーマンを120g程度食べれば1日分を補うことが可能だ(※1、3)。
【ビタミンCが多い主な食品】
- レモン:100mg
- ネーブルオレンジ:60mg
- キャベツ:41mg
その3.食物繊維
ピーマンは、100gあたり2.3gの食物繊維(水溶性食物繊維:0.6g、不溶性食物繊維:1.7g)を含んでいる。食物繊維は「第6の栄養素」と呼ばれており、消化・吸収はされないものの整腸作用や血中コレステロール濃度の低下作用などがある。成人男性(18~64歳)の1日あたりの目標量は21g以上であるが、実際は不足している人が多いといわれている(※1、3)。
【食物繊維が多い主な野菜類】
- ごぼう(生/根):5.7g
- さつまいも(皮付き):2.8g
- 板こんにゃく(精粉):2.2g
その4.カリウム
ピーマンは、100gあたり190mgのカリウムを含んでいる。カリウムは必須ミネラルの一種であり、体内ではナトリウムの排出などに関与している。そのため、ナトリウム(食塩)の摂取量が多い日本人にとっては重要な栄養素の一つとされている。成人男性(18~64歳)の1日あたりの目安量は2500mg以上、目標量は3000mg以上となっている(※1、3)。
【カリウムが多い主な野菜類】
- 西洋かぼちゃ:450mg
- バナナ:360mg
- ナス:220mg
3. ピーマンは色味で栄養価が変わる
ピーマンといえば青ピーマンが有名だが、スーパーや八百屋などには赤ピーマンや黄ピーマンなども売られている。これらは色味や味わいが異なるだけでなく、栄養価にも違いが見られる。そこでピーマンの特徴的な栄養素である、βカロテンとビタミンCの栄養価の違いを確認しておこう。
色味別のピーマンの栄養価
- 青ピーマン:βカロテン400μg、ビタミンC76mg
- 赤ピーマン:βカロテン940μg、ビタミンC170mg
- 黄ピーマン:βカロテン160μg、ビタミンC150mg
- オレンジピーマン:βカロテン420μg、ビタミンC150mg
4. ピーマンの栄養素を上手に摂るコツ
ピーマンをビタミン類や食物繊維といった栄養素を上手に摂りたいなら、「βカロテンなら炒め物」「ビタミンCならサラダ」といったように摂りたい栄養素に合わせて調理法を変えるとよい。それぞれの理由などについて確認しておこう。
コツ1.βカロテンを重視するなら炒め物など
βカロテンなどの脂溶性成分は、油と一緒に摂ると吸収率がアップする(※1)。そのため、青椒肉絲やピーマンの肉詰めといった油を使う料理にするのがよい。また、炒め物だけでなく、ピーマンの素揚げや天ぷら、揚げ浸しのような揚げ物にするのもおすすめだ。なお、油を使うとカロリーが高くなるので注意しよう。
コツ2.ビタミンCを重視するならサラダなど
ビタミンCは熱に弱い栄養素なので、できれば生食で食べるのがおすすめだ。定番はピーマンを使ったサラダであるが、そのほかにもピーマンのナムルやマリネなどにして食べるのもよい。また、千切りピーマンのゴマ油和えも、ご飯やお酒に合うのでおすすめとなっている。
5. ピーマンの栄養素に関するよくある質問
ここまでピーマンの栄養面について詳しく解説してきた。しかし「ピーマンの苦味成分にはどんな働きがあるのか」「ピーマンは1日にどれくらい食べていいのか」などが気になる人もいるだろう。そこで最後に、これらのよくある質問・疑問に回答する。
Q1.ピーマンのクエルシトリンとは?
クエルシトリンとは、ポリフェノールの一種であり、ドクダミやピーマンなどに多く含まれる苦味・渋味成分のこと。クエルシトリンには「脂肪蓄積を抑制する」などの健康効果が期待されており、注目を集めている。ちなみにクエルシトリンが少ないピーマンは、「こどもピーマン(タキイ種苗)」として販売されている(※4)。
Q2.ピーマンはどれくらい食べていい?
ピーマンの1日あたりの上限量は定められていない。しかし、100gあたりのビタミンCの含有量が76mgであり、1日あたりの推定必要量が85mgであることを考慮すると(※3)、1日に120g程度(普通サイズで3~4個程度)食べれば十分といえる。また、農林水産省の「食事バランスガイド」を参考にするなら(※5)、副菜の目安である「1SV=70g程度」を参考にするとよいだろう。
結論
シャキシャキとした食感が特徴のピーマンは、βカロテン・ビタミンB群・ビタミンE・ビタミンCといったビタミン類を多く含んでいる。また、食物繊維やカリウムといった重要な栄養素の含有量も多い。調理方法によって効率よく摂れる栄養素が変わるため、目的に合わせて、炒め物・揚げ物・サラダ・ナムル・マリネなどを作るようにしよう。
【参考文献】
- ※1:e-ヘルスネット「トップページ」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/ - ※2:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/ - ※3:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf - ※4:タキイ種苗「[インフォメーション] 2012年」
https://www.takii.co.jp/info/news_120319.html - ※5:農林水産省「「何を」「どれだけ」材料と料理区分」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/division.html
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