1. ジビエとは?

まずは、ジビエとはどういう意味なのか基本的なところから解説していこう。
ジビエとは「野生鳥獣の食肉」である
ジビエという名前の生き物がいるわけではない。天然の野生鳥獣の食肉のことを総じて「ジビエ(gibier=フランス語)」と呼んでいるのだ。現代の日本人が通常食べる肉のほとんどは、食用として育てられた家畜である。ジビエを知らなかった方にとって野生鳥獣を食すとは少し衝撃的かもしれない。だがヨーロッパではむしろ、貴族の伝統料理として発展してきたものだ。
日本におけるジビエの歴史
とはいえ日本でも、古くから狩猟肉を食す文化は存在した。たとえば肉食が禁じられていた江戸時代であっても、諏訪大社から「鹿食免(かじきめん)」と呼ばれる神符を授かった者は狩猟肉を食すことができた。時を経て、日本に本格的なジビエが広まり始めたのは1990年代だ。フランスから、ヨーロッパのさまざまな国で獲られたジビエが輸入されるようになったのである。
野生鳥獣被害の歯止め・地域振興などが期待されている
近年、野生鳥獣による農作物被害や農林業・自然環境への悪影響などが深刻化しているが、ジビエはその有効的な歯止め方法のひとつとして期待されている。また地域振興のため、特産物として広める動きも出ている。
一般的なスーパーでは取り扱いがないため、専門の業者などから入手する必要があるのだが、通販に対応する業者もいる。こうしたところからも、日本におけるジビエの認知度の向上や流行などを感じることができる。
一般的なスーパーでは取り扱いがないため、専門の業者などから入手する必要があるのだが、通販に対応する業者もいる。こうしたところからも、日本におけるジビエの認知度の向上や流行などを感じることができる。
2. ジビエが人気の秘密とは?

ジビエには魅力がたくさん詰まっている。人気の秘密とは何なのだろうか?
家畜と違い筋肉量が多く脂肪が少ない
お伝えしているように、ジビエは野生鳥獣の食肉だ。家畜とは運動量や食べ物が大きく異なる。大自然の中を自由に走り(飛び)回る野生鳥獣は自ずと筋肉量が多くなる。また、自然環境にある草や木の実を食べて育つため脂肪が少ない。ただし臭いが強いのが特徴だ。
一方の家畜は運動量が少なく、かつ肉が柔らかくなるように品種改良された餌を食べて育つ。この餌と、去勢手術の影響で臭いが少ないのが特徴である。
一方の家畜は運動量が少なく、かつ肉が柔らかくなるように品種改良された餌を食べて育つ。この餌と、去勢手術の影響で臭いが少ないのが特徴である。
高たんぱくで低カロリー!栄養価も豊富
自然環境で育った野生動物の体は、天然の栄養豊富な食事と運動によって作られている。そのため食用の肉と比べて高たんぱく(※1)で栄養価が高く、脂肪(※2)が少ないためカロリーが低い。とくにビタミン類(※3)や、鉄分・亜鉛といったミネラル類(※4)が多く含まれているとされる。つまり、ジビエとは貴重な天然の食材なのである。
秋にもっとも肉質がよくなる
ジビエにも旬の時期があるのでぜひ知っておこう。冬を目前に体に栄養を蓄える、秋に肉質がよくなるとされているのだ。美味しさだけでなく栄養価も増すため、秋のジビエはもっともヘルシーで美味しいといわれている。
骨の「旨み」まで注目され始めている
ここまでの話を聞く限り、ジビエ=食肉というイメージが強いかもしれないが、骨の旨みも注目されている。ラーメンのスープにシカの骨で出汁を加えたところ好評だった、といった話もあるほどだ。とくに日本で好まれるイノシシやシカなどのジビエは、まさに残すところがない食材といえるだろう。
3. ジビエの生食が絶対にNGとされる理由とは?

高たんぱくで低カロリー、栄養豊富なジビエだが生食は絶対にNGとされている。その理由とは何なのかを解説しよう。
E型肝炎ウイルス・寄生虫・腸管出血性大腸菌などのリスクがある
豚肉や鶏肉にしっかりと火を通すことが重要であることはよく知られているが、ジビエにも同じことがいえる。加熱が不十分だと「E型肝炎ウイルス」に感染したり「寄生虫」「腸管出血性大腸菌」などにより食中毒を招いたりする危険性がある(※5)。ジビエの生食が絶対にNGとされている理由とは、こうしたリスクがあるためだ。
ジビエを食べる際は加熱と器具の取り扱いに注意
以上のことから、ジビエを食べる際は中心部までしっかりと火が通るように加熱しよう。またジビエだけではなく、触れた調理器具や菜箸・トングなどを消毒すること、使い回しは避けることなども心がけよう。
4. ジビエの種類とおすすめ料理とは?

最後にジビエの種類やおすすめの料理とは何かを紹介する。ただしジビエとひと口にいっても、世界中にはさまざまな野生鳥獣が暮らしているため限定はできない。そこで本稿では代表的なジビエと、そのおすすめ料理を紹介する。
家畜の肉とは異なり、野生鳥獣の肉には動物本来の臭いや肉の硬さがあるため、スーパーで売っている食用肉と同じ方法で調理すると失敗する可能性がある。高たんぱく低カロリーで栄養豊富なジビエを美味しく食べるため、ぜひ参考にしてほしい。
家畜の肉とは異なり、野生鳥獣の肉には動物本来の臭いや肉の硬さがあるため、スーパーで売っている食用肉と同じ方法で調理すると失敗する可能性がある。高たんぱく低カロリーで栄養豊富なジビエを美味しく食べるため、ぜひ参考にしてほしい。
シカ
鹿肉は低カロリーで高たんぱくな、理想的な肉だ。牛・豚・鶏と比較してもカロリーや脂質は少なく、ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・鉄分などの量は勝る。おすすめ料理はローストだ。オーブンでじっくり焼くと肉の中心までしっかりと火が通りやすい。
イノシシ
イノシシとは見た目が豚に似ているが、肉は違う。イノシシ肉の特徴は濃厚さだ。肉の味がしっかりしていて濃いが、脂身がコラーゲンであるためしつこさは全くない。おすすめ料理は、やはり牡丹鍋だろう。味噌と濃厚なイノシシ肉が融合して美味である。
野ウサギ
ウサギはかわいいイメージが強いため、肉を食べるというイメージが湧きにくいかもしれない。だがジビエが流行する前から、伝統的に野ウサギを冬のタンパク源として食してきた地域もある。肉の味はあっさりめで鶏に近いという声も聞かれる。「うさぎまんま」と呼ばれる、伝統的な五目御飯がおすすめだ。
結論
野生鳥獣を食べると聞くと、なんとなく残酷なイメージがあるかもしれない。だが自然環境を整えるため、または農作物などを保護するためにも有効な手段である。狩って動物を殺すだけでなく、その肉や骨まで余すことなく食用にして生命への感謝をしっかりと示すことが、ジビエにとって重要だ。機会があればぜひジビエを食べ、環境や生命について考えてみよう。
(参考文献)
※1:たんぱく質 _ e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-044.html
※2:脂肪 _ 脂質 _ e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-014.html
※3:ビタミン _ e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html
※4:ミネラル _ e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-035.html
※5:ジビエ(野生鳥獣の肉)はよく加熱して食べましょう(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000032628.html
※1:たんぱく質 _ e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-044.html
※2:脂肪 _ 脂質 _ e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-014.html
※3:ビタミン _ e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html
※4:ミネラル _ e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-035.html
※5:ジビエ(野生鳥獣の肉)はよく加熱して食べましょう(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000032628.html
この記事もCheck!