1. 豆苗(とうみょう)とは?

まずは豆苗(とうみょう)について簡単におさらいしていこう。
えんどう豆を発芽させた「スプラウト」
豆苗(とうみょう)はえんどう豆を発芽させて、もやしのように育てたものである。発芽したばかりの芽を食べるスプラウト(新芽)の一種だ。ほのかな甘みとシャキシャキした食感が特徴で、サラダはもちろん、炒め物や汁物、鍋などさまざまな料理に使える人気の食材だ。詳しくは後述するが、栄養価が高い食材としても注目されている。
再生栽培も楽しみのひとつ
市販の根付き豆苗(とうみょう)で食べられるのは茎と葉のみである。食べる際はいちばん下の葉を残すように切り、残った豆と根は捨てずに育ててみよう。水を張った容器に豆と根を浸して、窓際など室内の明るい場所に置いておくと新芽が伸びはじめ、1週間から10日ほどで再収穫できる。うまく育てれば2回目の再収穫も可能なので、チャレンジしてみてはいかがだろうか。ただし、いずれも衛生を保つため水は1日2回以上替えることをおすすめする。
豆苗(とうみょう)の歴史
豆苗(とうみょう)として食べられるようになったのは中国でのことだ。土壌で育てていたえんどう豆の若芽を摘み取って食べたのが始まりとされている。中国では豆苗(とうみょう)を畑で栽培しており、採れる時期も量も限られるうえ手間もかかる。そのため希少な高級品として扱われており、特別なときに高貴な人しか食べられないものだったようだ。
日本に伝わったのは1970年代だ。このときも中国料理の高級食材だったため、当初は一般にはほとんど普及しなかった。その後、植物工場で水耕栽培されるようになり、現在のような根が付いた状態でお店に並ぶようになったという。工場生産なので農薬を使わず、季節に関係なく1年中栽培されている。そのおかげで安価で身近な野菜となったのだ。
日本に伝わったのは1970年代だ。このときも中国料理の高級食材だったため、当初は一般にはほとんど普及しなかった。その後、植物工場で水耕栽培されるようになり、現在のような根が付いた状態でお店に並ぶようになったという。工場生産なので農薬を使わず、季節に関係なく1年中栽培されている。そのおかげで安価で身近な野菜となったのだ。
2. 豆苗(とうみょう)の栄養と効能

豆苗(とうみょう)にはどんな栄養素がどれくらい含まれているのだろうか?文部科学省「第2章 日本食品標準成分表」(※1)より、主な栄養素を紹介する。カッコ外の数値は「生」を、カッコ内の数値は左から順に「茹で」「油炒め」を表している。
豆苗(とうみょう)100gあたりの主な栄養素
- エネルギー:24kcal(27kcal / 82kcal)
- 水分:92.2g(91.7g / 84.3g)
- たんぱく質:3.8g(3.6g / 5.0g)
- 脂質:0.4g(0.6g / 5.9g)
- 炭水化物:3.2g(3.8g / 4.3g)
- 灰分:0.4g(0.3g / 0.5g)
- 食物繊維:2.2g(3.5g / 3.0g)
- カロテン当量:3100μg(4800μg / 4400μg)
- ビタミンE:1.6mg(3.3mg / 6.6mg)
- ビタミンK:210μg(300μg / 300μg)
- ビタミンB1:0.17mg(0.10mg / 0.21mg)
- ビタミンB2:0.21mg(0.08mg / 0.26mg)
- ナイアシン:0.8mg(0.3mg / 1.1mg)
- ビタミンB6:0.15mg(0.07mg / 0.18mg)
- 葉酸:120μg(51μg / 180μg)
- パントテン酸:0.39mg(0.27mg / 0.60mg)
- ビタミンC:43mg(14mg / 30mg)
- ナトリウム:1mg(1mg / 2mg)
- カリウム:130mg(73mg / 170mg)
- カルシウム:7mg(8mg / 8mg)
- マグネシウム:13mg(13mg / 17mg)
- リン:47mg(41mg / 62mg)
- 鉄:0.8mg(0.9mg / 1.0mg)
植物は、芽を出す際に栄養素や成分を多く合成することで知られている。豆苗(とうみょう)も同様で、βカロテンやビタミンK、ビタミンCや葉酸、食物繊維などが豊富に含まれている。
βカロテン
強い抗酸化作用を持つ栄養素がβカロテンだ。動脈硬化を予防する効果のほか、老化防止やがんの発生防止といった効果も期待できるとされている(※2)。体内でビタミンAに変わり、視力の維持、髪の健康維持、粘膜および皮膚の健康維持などにも貢献してくれる栄養素である。
ビタミン
ビタミンは、ヒトが持つ人体機能を正常に保つために欠かせない有機化合物であり、ほとんどは体内で合成することができない。そのため食物から摂取する必要があるのだ(※3)。豆苗(とうみょう)には新陳代謝を促すビタミンB群、カルシウムを骨に定着させる作用のあるビタミンKなどさまざまなビタミンが含まれている。
葉酸
葉酸もビタミン(B群)の一種である。細胞増殖に必要なDNAの合成や赤血球の形成にも関わっている大切な栄養素のため、老若男女問わず摂取する必要がある。中でもとくに妊娠中の女性には、意識して摂取することが求められている(※4)。
食物繊維
消化・吸収されずに大腸まで到達する栄養素である。動物性食品にはほとんど含まれておらず、植物性食品から主に摂取する。整腸作用のほか、血糖値が急上昇するのを抑えたり、血液中のコレステロール濃度を低下させたりなどさまざまな効果がある。日本人の多くが不足しているといわれており、積極的な摂取が推奨される栄養素でもある(※5)。
3. 豆苗(とうみょう)の選び方と保存方法

次に、豆苗(とうみょう)を選ぶポイントや保存方法を解説する。
豆苗(とうみょう)の選び方
葉は鮮やかで濃い緑色をしていて、みずみずしいものが新鮮だ。また葉がしっかりと開いているものは元気がよくおすすめである。葉物の野菜は鮮度が落ちやすいが、豆苗(とうみょう)は根が付いた状態でお店に並んでいることが多いので、葉物の割には鮮度をキープしやすい。根が切り落とされた状態で売られている場合は、切り口をチェックしよう。色が変わらず、みずみずしい状態なら新鮮だ。切り口が変色していたり干からびていたりすれば、時間が経っている証拠なので気をつけよう。
豆苗(とうみょう)の保存方法
スーパーなどで販売されている根付きの豆苗(とうみょう)は、そのままでも植物が呼吸できるよう、特殊なフィルムが使われているのが一般的だ。未開封であれば、そのまま立てた状態で冷蔵庫で保存しよう。開封したもの、あるいは露地栽培されたものなどはポリ袋などに入れて冷蔵庫で保存しよう。いずれも、なるべく早く食べきることをおすすめする。
4. 豆苗(とうみょう)の美味しい食べ方

最後に、豆苗(とうみょう)の美味しい食べ方を紹介する。
下茹でやアク抜きは不要
豆苗(とうみょう)はアクがない。そのため下茹でやアク抜きをする手間がかからないのが便利だ。そのうえ水耕栽培の豆苗(とうみょう)は無農薬なので、根元を切り落としたら軽く水洗いしてすぐに使える。
生のままサラダで
シャキシャキ感を活かすなら、生のままサラダがおすすめだ。ほかの野菜や海老などのシーフード、肉や卵と合わせるなど好みのアレンジで試してみよう。葉の鮮やかな緑色で、見た目もキレイな1品に仕上がるはずだ。
お浸しや和え物で
サッと茹でてお浸しや和え物にすると、フレッシュな風味を満喫できる。ここでは茹ですぎないことが重要だ。熱湯をくぐらせる、湯通し程度と思っておこう。
炒め物や汁物、鍋もおすすめ
中華料理では定番の炒め物にするのも美味である。手軽に済ませたければ味噌汁の具にしたり、中華スープや鍋料理に入れたりしても美味しい。加熱する場合は独特の歯応えと豆苗(とうみょう)の香りを損なわないように、火を入れ過ぎないことが大切だ。
薬味代わりにも
ちょっと目先を変えて、薬味代わりに豆苗(とうみょう)を細かく刻み、そばやうどん、豆腐などのトッピングにしてもよい。香味野菜の薬味とはまた違った味わいが新鮮だ。
結論
季節に関係なく安価で手に入る豆苗(とうみょう)は、栄養価も高く手軽に使える便利な野菜のため、重宝しているご家庭も多いのではないだろうか?料理に加えればキレイな緑色が彩りを添えてくれるのも嬉しい。生はもちろん、すぐに火が通るので時間がないときのスピード調理にも活躍してくれるだろう。ぜひ積極的に使ってみてはいかがだろうか?
(参考文献)
- 1:文部科学省「第2章 日本食品標準成分表」
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365419.htm - 2:厚生労働省「カロテノイド _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-007.html - 3:厚生労働省「ビタミン _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html - 4:厚生労働省「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果 _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-002.html - 5:厚生労働省「食物繊維の必要性と健康 _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html