目次
1. イシモチとは?

イシモチ(シログチ)とは、体長40cm程度のスズキ目ニベ科シログチ属の海水魚の一種。クセのない淡白な味わいが特徴の白身魚で、練り製品に使われることが多い。また、一般的なスーパーや魚屋でも鮮魚として売られていることが多く、塩焼き・煮付け・ムニエル・唐揚げ・アクアパッツァなどにして美味しく食べられる。なお、劣化が早いため、刺身として食べられるのは釣り人の特権である。
イシモチの名前の由来と別名
イシモチは、頭部に大きな耳石(じせき)を持っているため、「石持ち」が転じて名前が付いたといわれている。また、標準和名は「シログチ」であるが、こちらはイシモチが浮袋を使ってグーグーとなくことから、愚痴を言っているように見えるからとされている。関東ではイシモチ、関西ではシログチ(グチ)と呼ぶことが多いが、他にも「クチ」や「ハダカイシモチ」などの別名がある。
イシモチの主な産地と旬の時期
イシモチ(グチ)は東北以南に広く生息しており、全国的に漁獲されている。東京都中央卸売市場の市場統計情報によれば(※1)、2020年の年間取引量は約141トン。地域別に見ると千葉県(24.7トン)、兵庫県(21.7トン)、鹿児島県(11トン)の順に多い。また、イシモチは通年流通している魚ではあるが、旬は産卵前の春~初夏である。ただし、2020年の取引量のピークは2月であった。
2. イシモチの基本的な栄養価

文部科学省の「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」には(※2)、「ぐち」という項目名でイシモチの栄養価が収録されている。また「生」と「焼き」の2種類の項目がある。ここでは基本となる「イシモチ(生)」の100gあたりの栄養価を確認しておこう。
イシモチ(生)100gあたりの栄養価
- エネルギー:78kcal
- たんぱく質:18g
- 脂質:0.8g
- 炭水化物:Tr
- 脂肪酸
・飽和脂肪酸:0.18g
・一価不飽和脂肪酸:0.17g
・多価不飽和脂肪酸:0.2g - ビタミン
・ビタミンA(レチノール):5μg
・ビタミンD:2.9μg
・ビタミンE:0.5mg
・ビタミンK:0μg
・ビタミンB1:0.04mg
・ビタミンB2:0.28mg
・ナイアシン:2.8mg
・ビタミンB6:0.18mg
・ビタミンB12:2.5μg
・葉酸:6μg
・パントテン酸:0.46mg
・ビオチン:-
・ビタミンC:Tr - ミネラル
・ナトリウム:95mg
・カリウム:260mg
・カルシウム:37mg
・マグネシウム:28mg
・リン:140mg
・鉄:0.4mg
・亜鉛:0.6mg
・銅:0.03mg
・マンガン:0.01mg
・ヨウ素:-
・セレン:-
・クロム:-
・モリブデン:- - 食物繊維:0g
3. 美味しいイシモチの見分け方

イシモチは魚屋では定番の魚であるほか、一般的なスーパーでも見かけることが多い。もしイシモチを選べるなら、以下のポイントを参考に鮮度のいいものを手に入れよう。
イシモチを見分けるポイント
- 目:透明感があり白目が白いもの
- エラ:エラ蓋の中が鮮やかな赤色のもの
- 体:しっかりとハリがあり身が硬いもの
4. イシモチの美味しい食べ方3選

柔らかくて淡白な味わいが特徴のイシモチは、定番である塩焼きをはじめ、ごま油焼き・煮付け・ムニエル・唐揚げ・フライ・南蛮漬け・味噌汁・アクアパッツァなど、さまざまな料理で美味しく食べられる。ここではそんなイシモチの美味しい食べ方を3種類紹介しておこう。
その1.塩焼き
水分が多くて身離れがよいイシモチは、塩焼きにすると絶品といわれている。塩焼きを作るときは、まず塩を振って30分~1時間程度冷蔵庫で寝かせておく。それから水分を拭き取り、魚焼きグリルで両面を焼けば完成だ。イシモチの塩焼きは丸のままでも、三枚おろしでも作ることが可能だが、丸のまま作るときは背開きにしておくと火が通りやすいので試してみよう。
その2.煮付け
身離れがよいイシモチは、煮付けにするのもおすすめだ。イシモチのウロコ・エラ・内臓などを取り除いてから、鍋に入れやすい大きさに切る。それから砂糖・醤油・酒・みりん・生姜と一緒に10分程度じっくりと煮れば、イシモチの煮付けの完成だ。ふっくらとしていて柔らかい身と、こってりとした味わいがご飯とよく合う。また、お酒のおつまみとしても美味しく食べられる。
その3.ムニエル
白身魚のイシモチをムニエルにするのもありだ。ムニエルと作るときは、まずムニエルを三枚におろしておく。それから塩コショウで下味を付けて、イシモチの表面に小麦粉を付ける。その後、バター(オリーブオイルなどでも可能)を溶かしたフライパンで、皮面のほうから焼き始め両面を焼いたら完成だ。また、バター・白ワイン・醤油などを使って手製のソースをかけても美味しい。
5. イシモチの正しい保存方法

イシモチは足が早い魚であるため、できる限り早く食べるのが重要になる。また、丸のまま保存する場合は、まず下処理して頭と内臓を取り除いておく。それからキッチンペーパーで包み、保存袋に入れてから冷蔵庫で保管しよう。なお、冷蔵保存の保存期間は1~2日程度が目安となっている。もしより3週間~1か月程度の長期保存がしたいなら、三枚におろしてから冷凍保存するとよい。
6. イシモチ釣りのポイント

イシモチは東北以南の広い地域で釣ることができる。よく釣れるのは20〜40cm程度のものだが、50〜60cm程度の大物が釣れることもある。また、基本的に水深20〜100mほどの沿岸部の砂泥地に生息しており、主なエサは砂泥地にすむ環形動物や多毛類・甲殻類などである。それではこのイシモチの生態を押さえたうえで、イシモチ釣りのポイントを確認しておこう。
イシモチが釣れる時期と場所
イシモチは通年釣れる魚ではあるが、一般的に投げ釣りのハイシーズンは6月~11月頃、沖釣りのハイシーズンは12月~翌年3月頃とされている。また、産卵期(5月~8月頃)のイシモチは、沿岸の水深が浅い場所や内湾などの波が静かな場所に集まる。イシモチ釣りに挑戦する場合は、このような場所を選ぼう。
イシモチの釣り方
イシモチ釣りでは、エサにアオイソメ(青虫)を使うのが一般的である。また、沖釣りでも投げ釣りでも、一般的にはテンビン(金属製のアームとオモリでできた釣り道具)を使った胴突き仕掛けが基本となる。胴突き仕掛けとは、底にオモリをつけることで着底させて誘いかける仕掛けのこと。仕掛けを着底させたら、ゆっくりと竿先を上下に揺らしてイシモチを誘い出すようにしよう。
7. イシモチに関するよくある質問

ここまでイシモチに関する情報を詳しく解説してきたが、まだイシモチについての疑問・質問があるだろう。そこでここではイシモチに関するよくある質問について回答する。
Q1.イシモチとニベの違いは?
イシモチはシログチとニベの総称として使われることもあるが、厳密にはイシモチ(シログチ)とニベは別々の魚だ。例えば、色味に関していうと、銀白色をしているのがイシモチであり、鱗に黒色の斑点があるニベ。また、体長に関していうと、イシモチは20〜40cmほどのものが多いが、ニベは40cm〜1mほどの大きさになる。ちなみにニベも食用魚なので、美味しく食べることができる。
Q2.イシモチは生食できる?
イシモチは生食可能であり、刺身や昆布締めでも美味しく食べられる。しかし、鮮度が落ちるのが早いため、一般的なスーパーなどは生食用のイシモチを見かけることが少ない。イシモチの刺身などを楽しみたいのであれば、市場に釣れたてを探しに行くか、自分で釣ってその場で活締め・血抜きをするとよいだろう。
結論
耳石が大きいことから名付けられた「イシモチ」は、淡白な味わいと身離れのよさが特徴で焼き物・煮物・揚げ物・汁物などさまざまな料理で美味しく食べられる。中でも塩焼きは絶品とされているため、スーパーや魚屋などで手に入れたらぜひ試してみよう。また、塩焼き以外も試したくなったら、煮付け・フライ・ムニエルなどを試してみるのがよさそうだ。
【参考文献】
- ※:【公式】コイチ - 佐賀県有明海漁業協同組合
http://www.jf-sariake.or.jp/page/maeumimon_koichi.html - ※1:東京都中央卸売市場「市場統計情報(月報・年報)」
https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/torihiki/geppo/ - ※2:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/
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