1. 「早熟」が語源となったテンプラニーリョ

スペインを代表するぶどうの品種、テンプラニーリョ。その特徴であるぶどうの成熟の早さが、名前の由来となっている。スペインの北部リオハで栽培が盛んなテンプラニーリョは、スペインワインの最高峰といわれている。
■イベリア半島のワイン醸造は、紀元前1100年から!
スペインは、ほぼ全土でぶどう栽培が行われているワイン大国である。紀元前1100年頃から始まったといわれるぶどう栽培は、その後アラブの文化の影響も受けて、独自の発展を遂げてきた。スペインが位置するイベリア半島は、温暖な気候とぶどう栽培に適した土壌に恵まれている。スペイン全域で栽培されるぶどうは、150種にも及ぶといわれている。その中でも、最高のワインを生み出すぶどうの品種のひとつがテンプラニーリョなのである。
■ガルナッチャよりも2週間早い収穫
テンプラニーリョは、「早熟な」という意味合いの「テンプラノ」という言葉に由来している。通常、テンプラニーリョの収穫期は9月半ばとされており、同じくスペインを代表するガルナッチャ種よりもおよそ2週間成熟が早い。テンプラニーリョは、冷涼な気候の中でとくに良質なものが生まれる。スペイン全域で栽培されているテンプラニーリョではあるが、標高の高いリオハやリベラ・デル・ドゥエロが重要な栽培地となっている。原産はリオハであるというのが通説である。「ウリュ・デ・リェブレ」「センシベル」「ティント・フィーノ」「ティンタ・デル・バイス」といった別名もある。スペインの各地方によって呼び名が変わる。
2. テンプラニーリョの味わいは?

長期熟成に向くといわれるテンプラニーリョは、しっかりとしたタンニンを持つ品種である。スペインやポルトガルのイベリア半島からあまり外に出ない品種であり、甘みが少ないぶどうであるため単一での醸造も少ないという特有性もある。
■美しい色は厚い果皮から
味わいも色も、赤ワインのよい特徴を有しているテンプラニーリョ。美しい色合いは、厚い果皮から生み出される。また、言い伝えによればスペインの高名な巡礼地サンティアゴ・デ・コンポステーラに向かう修道士たちによって植えられたぶどうがテンプラニーリョの先祖とも。1970年代半ばからは、テキサス大学がテンプラニーリョのクローンをアメリカに移植し、成功したというエピソードも持つ。
■しっかりとしたタンニンが特徴
タンニンと酸味がくっきりとしているテンプラニーリョは、バランスのよい長期熟成タイプの赤ワインである。若いワインはルビーのような華やかな色合いが特徴であり、熟成とともに栗色に近い色を呈してくる。イチゴやスパイス、コーヒーのような芳香があり、熟成とともにバニラのような甘さも香りに加わる。テンプラニーリョの主要栽培地であるリオハは、19世紀後半にボルドーの醸造者が移住してその技術を伝えたために、とくにエレガントな味わいとなるともいわれてきた。
3. 元スペイン代表のサッカー選手も栽培するテンプラニーリョ

サッカーの元スペイン代表であり、現在は日本のJリーグに籍を置くアンドレス・イニエスタ選手は、ワイナリーを運営することでもよく知られている。彼のワイナリーで生み出されるワインのひとつに、テンプラニーリョがある。近年は、近代的なワイン醸造が積極的に導入されて、テンプラニーリョの単一品種によるワインも増えてきた。イニエスタ選手も、テンプラニーリョ100%のワインを製造している。広大なスペイン全域で栽培されるだけに、テンプラニーリョのワインは初心者にも手が出しやすい価格のものから存在する。イベリア半島独特の味わいを気軽に楽しめる、ありがたい品種である。赤としては軽めであり、鶏肉などの白身の肉とよく合う。チーズをベースにした野菜のグラタンとも美味しく食べることができる。
結論
世界でも、ワイン製造においては外せない重要度を持つスペイン。そのスペインの高級ワイン代表が、テンプラニーリョである。9月半ばに収穫されるという早熟性がその名の起源となった。イベリア半島からあまり外に出ることがない品種のテンプラニーリョ、中世の修道士やアラブの文化の影響も受けた深い歴史を持つ。赤ワインとしては比較的カジュアルに味わえるので、ワイン初心者の人もぜひ!
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