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伝統のチーズ【ペルシエ・ド・ティーニュ】とは?生産農家はたった一軒!

伝統のチーズ【ペルシエ・ド・ティーニュ】とは?生産農家はたった一軒!

投稿者:オリーブオイルをひとまわし編集部

監修者:管理栄養士 藤江美輪子(ふじえみわこ)

鉛筆アイコン 2019年10月12日

昨今はチーズも工場化が進み、手作業でつくる農家製のチーズは一部の有名なチーズを除き、さまざまな理由で減少傾向にある。ペルシエ・ド・ティーニュは、いまは世界で一軒だけの農家によって伝統的な手法で生産しているチーズである。ペルシエ・ド・ティーニュも、一度その伝統は潰えた。しかし奇跡的に細々ながらその伝統は続いている。希少なチーズペルシエ・ド・ティーニュを紹介したい。

  

1. ティーニュ村の畜産方法

ペルシエ・ド・ティーニュは、フランスのローヌアルプ地方サヴォワ県で生産される山のチーズである。サヴォアは、アルプス山脈に連なる山々の懐に抱かれたスキーリゾート地でもある。北はスイスとの国境近く、東はイタリアとの国境にあり、独特の地域文化を創り出している。フランスではアルプスのことを「アルプ」と呼ぶ。この地域では、5月の雪解けのシーズンから9月半ばまで山に登り、その後段階的に山を下るという「アルパージュ」と呼ばれる移動式の放牧がおこなわれている。ペルシエ・ド・ティーニュ作りに使われる牛たちは、6月に移動式搾乳機とともに山へ登り、夏の高原地帯へ放牧され遊びまわる。冬以外はおおよそ放牧で、ストレスなくのびのびと過ごすのだ。標高2,500mまで登っていき、秋が深まるころまで続けられるという。

ペルシエ・ド・ティーニュのペルシエはフランス語でパセリ、ティーニュは村の名前を表していた。しかし、現在ティーニュ村は存在しない。1952年に建設されたダムの底に沈んでしまったのだ。フランスは、昔は村の数だけチーズの種類があるといわれていた。チーズというものは、各家庭で手作業によって作られるものだったからだ。日本でいえば、昔の漬物に近いイメージかもしれない。ティーニュ村がダムの底に沈んだことによって、伝統的なチーズが失われてしまうと思われた。しかしダムの下流に移り済んだ村人の1人が、チーズ作りを再開したのだ。消滅の危機から救われた伝統的なチーズだが、受け継いだ農家はわずか一軒だけというのが現状である。

2. 山羊乳と牛乳のチーズ

ペルシエ・ド・ティーニュは、山羊と牛のミルクの混合チーズである。家族経営の農家製チーズを生産するアトリエで、1週間ほどかけて仕込まれる。混合ミルクを大きな銅鍋で凝固させ、そのカードを粉々にし、さらにカードをまた直に塩と合わせていくという独特の製法で作られる。そのため、一度につくる量にも限界があり、時間もかかる。

見た目はカビが生じており、白からベージュの外皮の表面の水分が適度に飛んで、ざらついている。繊細な、というよりは武骨な印象をいだくかもしれない。しかしセミ・ハードタイプなので、カットしてみると内側はしっとりとキメ細かい。中心部にいくほどしっとりとして口溶けよく、熟成次第ではふんわりとも感じられる優しさだ。山羊ミルクを使うと脂肪分の関係で脆くなりがちだが、ペルシエ・ド・ティーニュはしっかりと崩れにくい。しかし口に入れた途端にほどけるように崩れるのも特徴的だ。長期保存ができるよう、しっかりと塩がきいており、濃厚な味わいである。外皮には柑橘系に似た苦味がある。苦手な人は皮を厚めに落とし、内側のキメの細かい部分を食べるようにしよう。また香りも濃厚で、山羊ミルク特有のヘーゼルナッツのような香りと称されるものだ。好きな人にはたまらないが初心者には敬遠されがちで、好き嫌いがはっきりと分かれる特徴的な香りである。

3. ペルシエ・ド・ティーニュを料理に使う

ペルシエ・ド・ティーニュの生産地サヴォワは、チーズ料理で有名である。ラクレットやチーズフォンデュは、この地方から広まった料理だ。ペルシエ・ド・ティーニュはしっかりと塩味のついたチーズなので、そのまま食べても美味しいが、料理に使っても旨みがいきる。

・サヴォワ風サラダに使う

サヴォワはオリーブが栽培できない土地なので、クルミ油をつかうことが多い。トマトやクレソンなどの野菜に、ベーコンとクルトン、そしてチーズが入っているのが特徴だ。コントチーズなど、牛乳から作られた癖の少ないチーズを使うことが多いが、塩味のしっかりと効いきペルシエ・ド・ティーニュもサラダに加えると美味しい。

・タルティフレットに加える

サヴォワの郷土料理といえば、一番にでてくるのがタルティフレッドである。
山岳地帯であるサヴォワは土地が痩せていて、農作物はジャガイモくらいである。そのジャガイモを厚めにスライス、玉ねぎは薄めにスライスするか、くし形切りにし、ざく切りにしたベーコンをそれぞれ加熱(電子レンジでも可)し、生クリームも加えて馴染ませるように少し煮る。それをグラタン皿に流し、上にチーズをかけて焼くだけの簡単ポテトグラタン風だ。ベーコンとチーズの塩気だけで味付けし塩コショウをしないが、好みで調味料を使っても構わない。

「ルプロション」や「ラクレット」といったチーズを使うのが本場風だが、日本で手に入れやすいカマンベールチーズでも美味しくできる。さらにそこへ、ペルシエ・ド・ティーニュを足して一緒に焼いてみよう。シンプルながらコクのある、寒い地方ならではの料理である。ちなみに、ペルシエ・ド・ティーニュは山羊ミルクも使用しているため、加熱しても柔らかくはなるが、トロトロにとろけることはない。とろけるタイプのチーズと形を保つチーズ、贅沢に両方使ってみよう。

・ペルシエ・ド・ティーニュのトースト

ペルシエ・ド・ティーニュを、パンにのせて焼くだけ。ペルシエ・ド・ティーニュの山羊ミルク独特の香りを抑えたい場合は、はちみつをかけてみよう。その甘しょっぱい味わいは、癖になるだろう。また、パンにガーリックバターやスライスガーリックを散らし、ペルシエ・ド・ティーニュをのせてハーブやオリーブオイルなどとともに焼く。加熱によってとろけることはないが、柔らかくなり香りも抑えられる。ワインのつまみにも最適である。好みのワインとともに試してみよう。

結論

ペルシエ・ド・ティーニュは、ただ1軒の農家のみが生産しているチーズである。生産量は決して多くないが、日本にも少ないながら輸入されているようなので、見かけたらぜひ買って味を見てみることをおすすめしたい。同郷サヴォワのワインと合わせると相性がいいが、さっぱりとした白ワインならおおよそ喧嘩しない。夏のアルプスに想いを馳せながら、じっくり味わってみてもらいたいチーズである。
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  • 更新日:

    2019年10月12日

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