1. ヤギの乳を使ったチーズがケソ・デ・ムルシア・アル・ビノの起源
ケソ・デ・ムルシア・アル・ビノという長い名前であるが、その意味するところは単純である。「ケソ」はチーズ、「ムルシア」は地名、「アル・ビノ」はワイン風味の、という意になる。「ムルシア産ワイン風チーズ」といったところだ。
ワイン風味と興味深い名を持つこのチーズには、どんな歴史や特徴があるのであろうか。
ワイン風味と興味深い名を持つこのチーズには、どんな歴史や特徴があるのであろうか。
ヤギのチーズの質には定評のあった地ムルシア
スペイン南東部に位置するムルシア州の州都であるムルシアは、古来ヤギの畜産で知られた土地である。20世紀終わりの調査によれば、ヤギの52%は州都ムルシア周辺で飼育されていたという。
ヤギの乳を使ったフレッシュチーズや熟成チーズの製造にも長い伝統をもつ。「ムルシアーナ」と呼ばれるこの地特有のヤギの乳を使ったチーズは、19世紀の終わりに誕生した。1920年代以降に増産が可能となり、名前が知られるようになった。
ヤギの乳を使ったフレッシュチーズや熟成チーズの製造にも長い伝統をもつ。「ムルシアーナ」と呼ばれるこの地特有のヤギの乳を使ったチーズは、19世紀の終わりに誕生した。1920年代以降に増産が可能となり、名前が知られるようになった。
乾燥した土地が第一の条件
ムルシアの気候は乾燥していて降雨量が少なく、1年を通じて比較的気温が高い。この典型的な地中海式気候の中で育つヤギが、甘いチーズと評されるケソ・デ・ムルシア・アル・ビノには必須といわれている。塩類土壌の牧草を食べて育つヤギたちの乳は非常に甘いからだ。
2. ケソ・デ・ムルシア・アル・ビノの外観と味わいは?
ヤギの乳のチーズは、日本人にはなじみが浅いといっても過言ではない。食べなれていないと、独特の香りが鼻につく。しかし、慣れてくるとそのクセがやみつきになるという類のチーズでもある。DOPの認定も受けたケソ・デ・ムルシア・アル・ビノは、どんな特徴を持つのであろうか。
使用されるワイン、ぶどうの品種にもこだわる!
アル・ビノ(ワイン風味の)と呼ばれる所以は、チーズの表面に塗布される赤ワインにある。ケソ・デ・ムルシア・アル・ビノに使用される赤ワインは、ムルシア州産であることが条件となっている。さらにぶどうの品種もムルシア州内で収穫される「Yecla(イェクラ)」と「Jumilla(フミーリャ)」に限定されている。こだわりの赤ワインに浸されたこのチーズは、ぶどう色の美しい外観を持つ。
ケソ・デ・ムルシア・アル・ビノの味わい
ケソ・デ・ムルシア・アル・ビノは、熟成期間によって大きさが異なる。60日熟成のタイプであれば300~500gと小さめだが、120日以上熟成を擁するものになるとkg単位となってくる。高さは6~10cmほど。フレッシュなタイプはクリーミーであるが、熟成期間が長いタイプはチーズがぽろぽろと砕けやすくなる。
概して、同チーズは麦わら色をしていてきめが細かく密集感がある。麦わら色と外側のぶどう色が、美しいコントラストをなす。酸性や塩味はそれほど強くないものの、特有のパンチは効いている。ヤギのチーズの中では甘さが強く、ふんわりと香るアーモンドのにおいが特徴だ。
概して、同チーズは麦わら色をしていてきめが細かく密集感がある。麦わら色と外側のぶどう色が、美しいコントラストをなす。酸性や塩味はそれほど強くないものの、特有のパンチは効いている。ヤギのチーズの中では甘さが強く、ふんわりと香るアーモンドのにおいが特徴だ。
3. ケソ・デ・ムルシア・アル・ビノと食材の相性は?
ケソ・デ・ムルシア・アル・ビノはどのように食べるのが美味しいのであろうか。一般的な味わい方をみていこう。
熟成期間が短いなら調味料と合わせて
熟成期間が短いケソ・デ・ムルシア・アル・ビノは、4℃以下で保温する必要がある。このタイプは、前菜向きで薄く切ってはちみつをかけて食べると美味しい。ワインも、ロゼや軽い赤などが向いている。スライスして少しだけ火を通し、トマトソースと食べるという手もある。トーストに乗せても、独特の風味を楽しめる。
熟成期間が長いならそのままで
一方、熟成期間が長いケソ・デ・ムルシア・アル・ビノに合わせるワインは、濃厚なフルボディのタイプが向いている。熟成が長くなるとチーズの特徴が助長されるため、それだけで味わうのが賢明だろう。
結論
スペインに27種存在するDOPの認定を受けたケソ・デ・ムルシア・アル・ビノ。乾いた空気と土が作り出した、まさに地中海のチーズといってよいだろう。もともとヤギのチーズでは歴史のあったムルシア地方は、1990年代にこのチーズで大躍進を遂げた。地中海の爽快な風に思いを馳せつつ味わってみてはどうだろうか。
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