1. ヤツガシラは里芋の一種

まずは、ヤツガシラとはどのような野菜か紹介する。
ヤツガシラは里芋の一種
里芋といえば、縞模様の丸みのあるとろける食感の芋だ。ヤツガシラは里芋の一種の植物で、栄養成分や保存方法などはほぼ同じである。里芋との一番の違いは見た目。ヤツガシラはごつごつしていて大きい。里芋は親芋の周りに子芋や孫芋が分球して付いていくが、ヤツガシラは親芋と子芋が分かれずくっついていて、その形は頭が8つ付いているように見えるのでヤツガシラと名付けられ、漢字では「八頭」と書く。里芋よりぬめりが少なく、ほくほくとした食感で、ほんのり甘みを感じることができる。大きさは500gから1kg近いものまであり、価格も1つ500円以上と里芋としては大きくて高価だ。また後ほど紹介するが、ヤツガシラは食べるだけでなく、観葉植物として楽しむこともできる。
ヤツガシラはおせち料理に使われる
主に埼玉県や茨城県などの関東地方で栽培され、11月頃から販売を開始し正月前の12月中旬頃に旬の時期を迎える。里芋は一つの種芋で親から子、さらに孫と増えていくため、子孫繁栄の象徴とされている。ヤツガシラは名前に縁起のよい数字である八が入ること、人の頭に立てるようにという願いも込め、縁起物として正月のおせち料理によく使われる野菜だ。
埼玉県オリジナルのヤツガシラ
ヤツガシラの生産地の一つである埼玉県では、系統選抜を行いオリジナルのヤツガシラ「丸系八つ頭」を開発している。丸くなる系統を選抜していき、大きく滑らかな丸い形のヤツガシラを誕生させた。食感や味わいはヤツガシラと変わらないが、丸いので皮がむきやすく廃棄部分も少ないメリットがある。丸系八つ頭は埼玉県内の販売店かネットショップで販売されているようだ。
2. ヤツガシラの美味しい調理法

ここではヤツガシラの美味しい食べ方を紹介する。
ヤツガシラは煮物に最適
前述した通り、ヤツガシラはぬめりの少ないほくほくとした食感である。この特徴を活かした料理は煮物だ。縁起物のヤツガシラの煮物はおせち料理にもよく使われる。ヤツガシラはごつごつしているので、こぶごとに切り分け厚めに皮をむくようにするとよい。乾燥しているほうがむきやすいので、土を洗い流したあとは乾燥するまで待つか、軽く電子レンジにかけると乾きがよくなる。また、煮るときは水から煮るのもポイントだ。大量に煮て冷凍保存することもできる。煮物以外にアレンジしたいのであれば、ヤツガシラのほくほくした食感を活かしたコロッケや、片栗粉を付けて素揚げにするのもおすすめだ。ヤツガシラとくるみを合わせた和え物のもいいだろう。
ヤツガシラは葉柄も美味しい
ヤツガシラや里芋などの葉っぱと茎を繋ぐ葉柄はずいきと呼ばれている。ヤツガシラのずいきは赤ずいきと呼ばれ、流通量が比較的多い。ずいきを乾燥させたものを芋がらと呼ぶ。戦国時代の兵士は腰に巻き付けて持ち、非常食のようにして食べていたと伝えられる芋がら。芋がらは煮物や汁物、漬物など、吸水しやすい特徴を活かした料理に向いている。ヤツガシラのずいきも機会があれば食べてみてはどうだろうか。
3. ヤツガシラの栽培方法

ヤツガシラは家庭で栽培することもできる。
ヤツガシラの植え方と特徴
里芋は気軽に家庭菜園で楽しめる野菜の一つだ。ヤツガシラも同様で、病気もあまりせず大量に収穫できる。種芋はヤツガシラの子芋の八つ子で、肥料などをまいてよく耕した土で畝を作り植えていく。プランターでも栽培可能だ。4~5月頃に植え付けをし、10月頃に収穫できる。寒さが苦手で日光と高温多湿を好むため、乾燥をさせないように注意するとよい。ちなみに、ヤツガシラも里芋も特徴的な細長いハート型の大きな葉っぱを持つが、葉柄の色が違う。前述した通りヤツガシラの葉柄は赤く、里芋は緑だ。ヤツガシラを育てるときに注意して見てみてはどうだろう。
ヤツガシラは水栽培もできる
ヤツガシラは食用の品種で本来は土に植えるが、観賞用に水栽培を楽しむ人も多い。観賞用に種芋から少し目が出た状態で販売しており、深めの鉢に種芋が半分くらい浸かるように水を入れておくだけで、どんどん根を張り、葉をつけていく。乾燥を嫌うため水切れしないよう気を付け、また根腐れしないように週に一度くらいは種芋や根、鉢を洗うようにする。インテリアの一つとして、ヤツガシラの水栽培をしてみるのもいいかもしれない。
結論
あまりなじみのない、見た目もインパクトのあるヤツガシラ。実は縁起のよい食材で、里芋にしては高価である。ぬめりが少なく、ほくほくとした食感の芋の部分が美味しいだけでなく、葉柄の部分まで食すことができる優秀な植物だ。気軽に家庭菜園でき、観葉植物としても楽しめる。なかなか店頭で見ることはないが、見つけた際にはぜひヤツガシラを楽しんでいただきたいと思う。
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