1. お屠蘇とは?

お屠蘇とは、屠蘇散と呼ばれる複数の生薬が配合されている薬草酒で、元旦の朝に、新しい1年の無病息災や健康長寿を祈願して飲むものである。お屠蘇の名は、「蘇」と呼ばれる病気をもたらす鬼を、屠る(ほふる)というところから来ている。屠る(ほふる)は、滅ぼす、打ち負かすという意味。
また、「蘇」には、蘇るという意味もあるため、お屠蘇の名は、邪気を屠り、魂を蘇らせるところから来ているという説もある。
お屠蘇は、平安時代の嵯峨天皇の頃に、中国の唐から伝わり、お正月の宮中行事に用いられていた。その後、江戸時代になると、お正月にお屠蘇を飲むという風習は、庶民の間にも広まっていったようだ。この風習は、現在も、首都圏と西日本を中心に、継承されているが、日本酒をお屠蘇として飲む地域もある。
お屠蘇は、日本酒あるいは本みりんに、屠蘇散を入れ、そのまま5~6時間ほど置けばできあがる。屠蘇散は、薬局などで入手できる。通常は、数種類の生薬がティーパックに入った状態で販売されている。
2. お神酒とは?

お神酒は、おみきと読み、その名が示す通り、神様に供えた後にいただく酒のこと。神様に供えた酒には、霊力が宿るとされている。その酒を後からいただくことで、神の霊力が体内に入るとされている。
お正月に、初詣に訪れた参拝客に、神社からお神酒が振る舞われる場合も多い。お正月以外でも、結婚式や地鎮祭などの祭事や神事に、お神酒が振る舞われている。
お神酒は、基本的に日本酒が使用されているが、正式には、白酒、黒酒、濁酒、清酒の4種類のお酒を供えることになる。もっともいまは、簡略化され、清酒のみを供える場合も多い。
お神酒をいただく前には、一拍すること、三度に分けてゆっくりといただくこと、いただいた後は、口をつけた場所を指でぬぐうことなどが基本的な作法になる。
3. お屠蘇とお神酒の違い

上記の内容から、お屠蘇とお神酒の違いについて、まとめると以下のようになる。
酒の中身が違う
お神酒の中身は、日本酒だが、お屠蘇の中身には、屠蘇散と呼ばれる複数の生薬が含まれている。ただ、地域によっては、中身が同じ日本酒である場合もあり、そのことが、混乱を招く一因ともなっているようだ。
発祥の地が違う
お神酒の発祥の地は、島根、奈良など諸説あるものの、日本であることは確か。すなわちお神酒は、元から日本にあったもので、お屠蘇は、中国で発祥し日本に伝わったという点が違う。
作法や飲み方が違う
お神酒は、年長の者から順に飲んでいくが、お屠蘇は、年少の者から順に飲む。 お屠蘇は、お神酒のような作法に従って飲むことはない。お屠蘇は、東を向いて飲むが、お神酒にはそのような決まりはない。
お年酒か否かが違う
お屠蘇は、お年酒としてお正月だけに飲まれている。お神酒は、お正月だけでなく1年を通して祭事や神事の際に飲まれている。
結論
お屠蘇とお神酒が、それぞれどのようなものであるかや、お屠蘇とお神酒の違いについてお伝えした。ご理解いただけただろうか?お屠蘇もお神酒も、どちらも日本古来から伝わる風習であることに変わりはないが、これを機に、明確な違いを押さえておこう。
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