目次
- たんぱく質:6.9g
- 脂質:2.2g
- 炭水化物:4.9g
- 亜鉛:14.0mg、筋肉や骨中、臓器に存在しさまざまな酵素の構成成分となる(※2)
- 鉄:2.1mg、ヘモグロビンの構成成分となり、酸素を運搬する役割をもつ(※3)
- ビタミンB2:0.14mg、代謝やエネルギー産生に関わる酵素を助ける(※4)
- ビタミンB12:23.1μg、葉酸とともに赤血球をとくる働きをし、たんぱく質などの生合成や代謝にも関わる(※5)
- 赤ピーマン、ブロッコリーなど:ビタミンCが鉄の吸収を助ける(※12、13)
- 牛乳:カゼイン(たんぱく質)が変化したccpが亜鉛の吸収を助ける(※14)
- 豚肉、大豆、ほうれん草など:ビタミンB1がグリコーゲンの代謝を助ける(※15)
- にんにく、ニラ、ねぎなど:アリシンがビタミンB1の吸収を助ける(※15)
- ※1出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」魚介類/<貝類>/かき/養殖/生 https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10292_7
- ※2〜※5※9※12公益財団法人長寿科学振興財団健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/
- ※6※7※10:e-ヘルスネット不飽和脂肪酸|厚生労働省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
- ※8出典:環境省カキ https://www.env.go.jp/water/heisa/heisa_net/setouchiNet/seto/setonaikai/clm9.html
- ※11出典:農林水産省タウリンとはどのような栄養素ですか。また、体によいとのことですが、働きを教えてください。 https://www.maff.go.jp/
- ※13※14一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所 https://www.orthomolecular.jp/
- ※15出典:国立療養所栗生楽泉園楽食だより第2号 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/hansen/kuriu/pdf/rakusyoku_002.pdf
1. 牡蠣の栄養素

牡蠣に含まれる栄養素には、どのようなものがあるのだろうか。「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(※1)のデータをもとに、詳しく見ていこう。
主な栄養成分
牡蠣(養殖、生)の可食部100gあたりのカロリーは58kcalである。主な栄養成分、また各栄養素の特徴は下記の通りだ。
エネルギー産生栄養素
ミネラル類
ビタミン類
そのほか、牡蠣には不飽和脂肪酸であるIPA(イコサペンタエン酸)が230mg、DHA(ドコサヘキサエン酸)が180mg含まれる(※1)。これらは、体内で合成できないため食品から摂取する必要がある必須脂肪酸だ(※6)。
また、貝類に多く含まれるタウリンも、牡蠣の特徴的な栄養成分の一つである。たんぱく質が分解される際にできる物質で、アミノ酸に似た特徴をもつ。さまざまな臓器や組織に含まれ、生命の維持に必要とされる成分だ。(※7、8)
旨み成分としての役割をもつ多糖類のグリコーゲンも、牡蠣の代表的な栄養成分である(※8、9)。
2. 牡蠣の栄養から得られる効能

牡蠣にはミネラル類やビタミン類をはじめ、さまざまな栄養素が含まれている。では、それらの栄養を摂取することにより、どのような健康効果が得られるのだろうか。牡蠣の栄養による主な効能について見ていこう。
効能について
亜鉛
亜鉛はたんぱく質やDNAの合成に欠かせない栄養素で、胎児や乳児の発育に関わる。成人の場合も、とくに新しい細胞を作る器官の正常な作用を保つために役立つ。また、味覚障害の予防や貧血の予防などにも効果的だ。(※2)
ただし、亜鉛は過剰摂取すると銅欠乏や貧血などが起こることがある。そのため「日本人の食事摂取基準」では、一日あたりの摂取量に上限が設けられている。2020年版では、30~64歳の場合で、男性45mg、女性35mgが耐容上限量とされている(※10)。男性は325g、女性は250gの牡蠣を食べると上限量に達する。亜鉛はほかの食品にも含まれるため、食べ過ぎには気を付けよう。
鉄
鉄は血液の構成要素となるため、適量を継続して摂取することは貧血予防に効果的だ。たんぱく質や葉酸、ビタミンB12とともに摂取するとよい(※3)。
鉄にも一日あたりの耐容上限量が設定されており、成人男性が50mg、成人女性が40mgとなっている(※10)。しかし牡蠣2kgほどに該当する量のため、通常の食事で過剰摂取に至ることはないだろう。
ビタミンB2
ビタミンB2は、皮膚や粘膜の健康を守る栄養素である。摂取により、口内炎や口角炎、角膜炎、脂漏性皮膚炎などを防ぎ、健やかな状態に保つ効果が期待できる。さらに、成長期の子どもにおいては、成長障害を予防し発育を促す効果もある。(※4)
ビタミンB12
ビタミンB12は造血に関与する栄養素のため、葉酸や鉄とともに摂取することで、貧血予防効果が得られる。とくに、ビタミンB12の不足により起こる巨赤芽球性貧血を防ぐためにも、積極的に摂取したい。白質障害や末梢神経障害によるしびれ、知覚異常などの予防にも役立つ。(※5)
IPA、DHA
不飽和脂肪酸のIPAとDHAには、動脈硬化や血栓を防ぐ効果や血圧を下げる効果がある。そのため、心筋梗塞などの疾患を予防できる。また、LDLコレステロールを減らす働きもする。しかし、これらは酸化すると健康に悪影響をおよぼすことのある過酸化脂質となってしまう。酸化しやすい高温での調理は避けた方が無難だ。(※6、8)
タウリン
タウリンは牡蠣の粘液に含まれ、主にコレステロールを低下させる効果が期待できる。さらに、視力回復や高血圧予防、心臓や肝臓の機能向上などにも役立つといわれる。さまざまな効能を得られるタウリンは、健康ドリンク剤や母乳に含まれる成分でもある。(※7、8)
グリコーゲン
多糖類のグリコーゲンは、牡蠣の旨み成分となるほかエネルギー源としても働く。エネルギー不足による疲労を防ぐ効果や、肝臓の働きを活発にする効果が期待できる。(※8、9)
3. 牡蠣の栄養を損なわない調理法

牡蠣の栄養を効率よく摂取するには、調理の仕方も重要である。栄養をできるだけ損なわないようにするために、下記のポイントをおさえておこう。
煮汁も一緒に食べる
牡蠣に含まれる、ビタミンB2、B12をはじめとするビタミンB群、またタウリンなどは水溶性の栄養素である(※4、5、11)。そのため、茹でる、煮るなどの調理を行うと流出してしまう。そこで、牡蠣を鍋やスープに使用する場合は、汁ごと食べるようにするとよい。
相性の良い食材
牡蠣に不足する栄養素をほかの食材から補うことで、吸収率がよくなったり相互作用が得られたりする。とくに、下記のような食材と組み合わせると効果的だ。
結論
牡蠣には、亜鉛や鉄をはじめとするミネラル類、ビタミンB群、必須脂肪酸、タウリン、グリコーゲンなどさまざまな栄養成分が含まれている。これらの成分は、身体の機能維持、成長促進、造血、疾病予防など多岐にわたり役立つため、牡蠣を食べることにはさまざまな健康効果が期待できる。調理や食べ合わせを工夫し、牡蠣の栄養を生かそう。
(参考文献)