- (※1)(※2)(※10)日本食品標準成分表2020年版(八訂) https://fooddb.mext.go.jp/
- (※3)(※9)(※11)公益財団法人長寿科学振興財団 https://www.tyojyu.or.jp/
- (※4)(※7)(※8)農林水産省 https://www.maff.go.jp/
- (※5)静岡県「みかんと健康」 http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-360/kankitu/mi01/mi01-05.html
- (※6)公益社団法人京都保健会「大腸がんと食物繊維」 https://kyoto-min-iren-c-hp.jp/koho/2005-07/6.html
1. 甘夏の主な栄養素と効果効能
甘夏は夏みかんの1種で、酸味が強いのが特徴だ。まずは、甘夏にどんな栄養素が含まれていて、どのような効果があるのかをチェックしよう。
ビタミンC
柑橘類にはビタミンCが多く含まれているのは有名だ。甘夏にはどれくらい含まれているかというと、甘夏100gあたりに38mgも含まれている(※1)。ちなみに、みかん(温州みかん)100gあたりに含まれるビタミンCの量は32mg(※2)なので、ほかの柑橘類と比べても遜色ないことが分かる。ビタミンCにはさまざまな効果があるが、ストレスや風邪などに対する抵抗力を高める働きがあることが知られており(※3)、季節の変わり目には摂っておきたい栄養素だ。甘夏は3~5月に旬を迎えるため、季節の変わり目にビタミンCを摂るには最適の果物だといえる。また、ビタミンCの持つ抗酸化作用も近年注目を集めている(※3)。
クエン酸
クエン酸も柑橘類に含まれる栄養素として有名だ。クエン酸は柑橘類の酸味の素となる栄養素で(※4)、酸味の強い甘夏にも含まれている。クエン酸にもさまざまな効果があるが、もっとも有名なのは疲労回復作用だ(※4)。そのほかにも、新陳代謝の促進や、女性に嬉しい美肌作用といった効果もある(※4)。
シネフィリン
シネフィリンはビタミンCやクエン酸と比べると知名度が低い栄養素だ。しかし、甘夏に含まれる栄養素として、ぜひ知っておいてほしい。シネフィリンは甘夏以外の柑橘類にも含まれており、気管支を拡張させる効果がある栄養素として知られている(※5)。そのため、のどの風邪に効果があるといわれている(※5)。また、ビタミンCと一緒に摂ることで風邪予防に効果があるとされている(※5)。
ペクチン
ペクチンは野菜や果物に含まれており、当然ながら甘夏にも含まれている。ペクチンは食物繊維の1種で、水溶性食物繊維に位置づけられる。ペクチンを含む水溶性食物繊維は体内に入ると粘度の高い状態になるため、消化にかかる時間が長くなり少量でも満腹感を得やすくなる(※6)。また、吸収速度を遅らせるため血糖の上昇を緩やかにする効果が期待できる(※6)。そのほかに善玉菌のエサにもなるため、メリットの多い栄養素だといえる(※6)。
2. 甘夏のカロリーや糖質・栄養成分表
ここでは、甘夏(100gあたり)に含まれるカロリーと主だった栄養素の含有量を紹介していく(※1)。
エネルギー:42kcal
たんぱく質:0.9g
脂質:0.1g
炭水化物:10.0g
食物繊維:1.2g(うち水溶性食物繊維0.4g、不溶性食物繊維0.8g)
糖質:8.8g
カリウム:190mg
カルシウム:16mg
マグネシウム:10mg
鉄:0.2mg
ビタミンB1:0.08mg
ビタミンB2:0.03mg
ビタミンB6:0.05mg
ビタミンC:38mg
甘夏は低カロリーかつ低脂質であることが分かる。一方で、糖質は少し高めなので注意が必要だ。また、カリウムやカルシウムといったミネラル類やビタミンB1などのビタミン類がバランスよく含まれていることも分かる。
3. 甘夏の実以外の栄養成分
甘夏は実を食べるのが一般的だが、じつは皮や薄皮にも栄養素が含まれている。ここでは、それぞれにどのような栄養素が含まれているのかを紹介する。
甘夏の皮の栄養
甘夏を含む柑橘類にはオーラプテンという栄養素が含まれている。まだ動物実験の段階だが、オーラプテンにはがん抑制効果があるといわれており(※7)、注目を集めている栄養素だ。オーラプテンは実よりも皮に多く含まれているため(※7)、皮ごと食べなくては摂取できない。また、皮の白い部分にはヘスペリジンという栄養素が含まれている(※8)。
甘夏の薄皮の栄養
甘夏の薄皮にはヘスペリジンという栄養素が含まれている(※8)。甘夏以外の柑橘類にも含まれている栄養素だが、いずれも実より薄皮や皮に多く含まれているのが特徴だ(※8)。ヘスペリジンはフラボノイドと呼ばれる栄養素の1種で(※9)、抗アレルギー作用があるといわれている。そのため、免疫力を整える効果が期待できる(※9)。
甘夏の種の栄養
甘夏には種がたくさん入っているが、大きく硬いため食べるのに向いていない。そのため、種に栄養が含まれているか否かにかかわらず、無理して食べないほうがよい。
4. 甘夏の栄養の効果的な摂取方法
甘夏にはさまざまな栄養素が含まれていることが分かった。しかし、気をつけないとせっかくの栄養素が損なわれてしまう。ここでは、栄養素を損なわずに食べる方法を紹介する。実だけでなく、皮の食べ方も紹介するためぜひ参考にしてほしい。
甘夏の実の食べ方
甘夏の実の食べ方はいろいろある。そのままはもちろん、ジャムにしたりケーキに混ぜ込んだりと幅広い。しかし、栄養素を損なわずに食べたいなら生食がおすすめだ。なぜなら、甘夏に含まれているビタミンCは熱に弱く(※3)、加熱調理によって壊れてしまうからだ。新鮮な甘夏はジューシーで食べごたえがあるため、そのままの美味しさを堪能しよう。
甘夏の皮の食べ方
甘夏に含まれる栄養素をまるごと摂取したいなら、皮もぜひ食べよう。とはいっても、そのままでは硬く、苦みもあるため食べにくい。皮は調理して食べるようにしよう。たとえば、皮を千切りにして作る甘夏ピールは砂糖の甘みと皮のほろ苦さのバランス感が絶妙だ。チョコレートをつけたり、ヨーグルトにトッピングしたりとさまざまな食べ方もできるため、作っておいて損はない。また、実と皮を両方使ってジャムにするのもおすすめだ。実に含まれるビタミンCが壊れてしまうというデメリットはあるが、皮に含まれる栄養素を摂ることができるというメリットもある。実の甘酸っぱさと皮のほろ苦さの両方を贅沢に味わえる。
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5. 甘夏と八朔の栄養価の違い
見た目が似ているため、見分けがつきにくい甘夏と八朔。少し旬はずれるが2~3月は両方とも出回るため、この時期はとくに間違えやすい。しかし、よく見比べてみると甘夏のほうが鮮やかなオレンジ色をしているのが分かる。そもそも甘夏は夏みかんから誕生した品種であるため、夏みかんに近い特徴を持っている。一方、八朔は江戸時代に見つかった品種で夏みかんとは関係がない。また、食べてみるとより違いが分かる。どちらもほろ苦さが特徴だが、食べ比べると八朔のほうが甘みが強い。
同じ柑橘類ということで、当然ながら八朔にもビタミンCが多く含まれている。八朔100gあたりに40mg含まれており(※10)、カロリーも47kcal(※10)と甘夏とあまり変わらない。一方で、含まれる食物繊維の割合は大きく異なる。八朔(100gあたり)の場合は不溶性食物繊維が1.3g含まれているのに対し、水溶性食物繊維はわずか0.2gしか含まれていない(※10)。つまり、甘夏よりも多く不溶性食物繊維が含まれていることが分かる。
甘夏の栄養は食べ過ぎると危険?
甘夏にはさまざまな栄養素が含まれているため、食べ過ぎると過剰摂取になってしまうのではないかと不安になってしまうかもしれない。結論からいうと、甘夏を食べ過ぎても健康を害することはないといえるだろう。しかし、当然ながら甘夏を食べ過ぎるとカロリーオーバーや糖質の摂りすぎに繋がる恐れがある。厚生労働省が出している食事バランスガイドでは1日に200gの果物を摂取することが推奨されている(※11)。大きさにもよるが甘夏1個あたりの重さは400~500g(廃棄率は45%)なので、1日1個が適量だといえる。
結論
甘夏にはビタミンCやクエン酸など疲労回復効果が期待できる栄養素が多く含まれている。また、甘夏の皮や薄皮にも多く栄養素が含まれているのも見逃せない。オーラプテンやヘスペリジンといった栄養素は実よりも皮や薄皮に多く含まれているため、なるべくまるごと食べたい。皮でピールを作ったり、実と皮をまるごと使ってジャムを作ったりすれば余すところなく栄養素を摂ることができる。
(参考文献)