目次
- 遊離アミノ酸
- 甘味アミノ酸(グリシン、アラニン、トレオニン、セリン)
- グリコーゲン
- セリン
- グリコーゲン
- 細菌数は検体1gにつき、50000以下
- E.coli(大腸菌)の最確数は検体100gにつき、230以下
- 剥き身にした生食用牡蠣の腸炎ビブリオ最確数は検体1gにつき、100以下
- (※1)化学と生物 : 日本農芸化学会会誌 : 生命・食・環境 / 日本農芸化学会 編 39(3) (通号 448) 2001.3 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/39/3/39_3_177/_pdf
- (※2)国立研究開発法人水産研究・教育機構「マガキの美味しさ評価手法の開発」 http://www.fra.affrc.go.jp/cooperation/tecpro_meeting/2020/1st/files/5.pdf
- (※3)文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)魚介類/<貝類>/かき/養殖/生」 https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10292_7
- (※4)環境省「カキ」 https://www.env.go.jp/water/heisa/heisa_net/setouchiNet/seto/setonaikai/clm9.html
- (※5)(※9)厚生労働省「e-ヘルスネット」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
- (※6)(※12)厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/
- (※7)(※8)(※10)公益財団法人長寿科学振興財団 https://www.tyojyu.or.jp/
- (※11)島根県「生カキによる食中毒予防」 https://www.pref.shimane.lg.jp/bousai_info/syoku/anzen/eisei/kisotisiki/namakaki.html
1. 牡蠣のうまみ成分

牡蠣の美味しさを語るうえで見逃せないのが、うまみ成分だ。うまみ成分と一口にいってもその種類は非常に多い。たとえば、グリシンやグルタミン酸などのアミノ酸、イノシン酸やクエン酸などの有機酸、そのほかに糖やペプチドなど多岐にわたる(※1)。ちなみに、ペプチドとは数個のアミノ酸が結合したものを指す(※1)。また、牡蠣の美味しさには甘味や濃厚感も関与している。ここでは、牡蠣の甘味と濃厚感がどのような成分で構成されているかを紹介する。
甘味と成分
甘味の強い牡蠣に含まれる成分を調べた研究(※2)によると、以下の3つの成分が多く含まれる牡蠣ほど甘いという結果が出た。
甘味アミノ酸の中でもアラニンとセリンが多く含まれているものは強い甘味を呈することが分かっている(※2)。
濃厚感と成分
牡蠣の濃厚感も含まれる成分と関係がある(※2)。濃厚感が強い牡蠣は以下の2つの成分が多く含まれている。
セリンとグリコーゲンは甘味にも関係している成分で、含有量が多いと濃厚かつ甘い牡蠣であるといえる。ちなみに、グリコーゲンは含有量が9.0%以上だと濃厚な味わいになるが、逆に4.2%以下だとすっきりとした味わいになることが分かっている(※2)。
2. 牡蠣の栄養成分と効能

牡蠣にはさまざまな栄養成分も含まれている。牡蠣には鉄や亜鉛などのミネラル類、ビタミンB12などのビタミン類も多く含まれており(※3)、健康効果が期待できることから「海のミルク」とも呼ばれる。ここでは、牡蠣を食べることで期待できる健康効果と関係する栄養成分について解説する。
肝機能を高める
牡蠣に多く含まれるグリコーゲンとタウリンは肝機能を高める効果があるとされている(※4,5)。うまみ成分としての一面もあるグリコーゲンだが、実は糖質の1種でエネルギー源にもなる(※6)。タウリンは肝機能を高めるほか、コレステロール消費を促してコレステロールを低下させたり、インスリンの分泌を促進させたりといった働きもある(※5)。ちなみに、タウリンは人間の体内でも作れるが必要量には満たないため、積極的に摂りたい成分だ。
貧血の予防
牡蠣には貧血予防に適したビタミンB2、ビタミンB12、鉄といった成分も多く含まれている(※3)。とくにビタミンB12と鉄の含有量は多く、牡蠣100gあたりにビタミンB12は23.0μg、鉄は2.1mgも含まれている。ビタミンB2とビタミンB12には造血作用があるといわれている(※4)。とくにビタミンB12は赤血球の成熟に関与しており、正常な赤血球を作るのに欠かせない(※7)。ちなみに、ビタミンB12にはコバルトという成分が含まれているが、これも貧血予防に効果があるといわれている(※4)。
鉄は不足すると貧血になりやすい栄養成分として有名だ(※8)。体内に入った鉄はヘモグロビンとなり、酸素を体中に届ける役割を持つ(※8)。鉄が不足すると鉄欠乏性貧血になってしまうため、貧血予防のためには積極的に摂りたい。
血管性疾患の予防
牡蠣にはDHAとEPAが多く含まれている。どちらも青魚に多く含まれる栄養成分として有名だが、牡蠣100gあたりにDHAは180mg、EPAは230mgも含まれている(※3)。DHAもEPAも血栓ができるのを防ぐほか、血圧を下げる効果があるとされており、血管性疾患の予防に期待できる(※9)。ただし、DHAもEPAも熱に弱いため加熱調理すると摂取量が減ってしまうというデメリットもある(※9)。
身体を作り維持する
身体を作るためには多くの栄養成分を摂らなくてはならないが、なかでも亜鉛は重要だ。亜鉛は子どもの成長に欠かせない栄養成分だが、大人になっても骨の成長や新しい細胞を作る臓器(肝臓や腎臓など)では必要な栄養成分(※10)なので積極的に摂る必要がある。牡蠣100gあたりに亜鉛は14.0mgも含まれているため(※3)、亜鉛を摂るには最適な食材だといえる。
3. 牡蠣の成分規格

うまみ成分も栄養成分も多く含まれる牡蠣だが、食中毒には注意しなくてはならない。牡蠣はノロウイルスの原因食材になりやすいからだ(※11)。とくに生牡蠣は食中毒を起こしやすい食材でもあるため、生食用牡蠣として販売するためには成分規格を満たす必要がある。ここでは、生食用牡蠣の成分規格、および加工基準について解説する。
生食用牡蠣の成分規格
生食用牡蠣として食べられるのは以下の3つの基準を満たしたものだけになる(※12)。
ちなみに、この3つの基準を満たすための検査方法まで詳しく決められている。この成分規格を満たせなかった牡蠣は加熱加工用の牡蠣として流通する(※11)。そのため、加熱加工用の牡蠣を生で食べることは絶対してはいけない。
生食用牡蠣の加工基準
生食用牡蠣として流通するには加工基準と保存基準の2つも満たさなければならない。加工基準では、まずは牡蠣が獲れた海域に含まれる大腸菌群の最確数が基準以下であるかどうかをチェックする(※12)。こちらも検査方法は細かく指定されており、海水100mlあたりに含まれる大腸菌群の最確数が70以下でないと基準を満たしたことにはならない。この基準をクリアしても、加工過程で指定された方法以外の手順で加工を行うと生食用としては認められなくなる。
また、牡蠣と加工過程に問題がなくても、保存に問題があれば食中毒の要因となってしまう。そのため、保存基準も定められている(※12)。生食用牡蠣は10℃以下で保存することとされている(※12)。また、保存容器などにも言及されており、これらすべての規格を満たしたものが生食用牡蠣として流通する。
結論
牡蠣にはグリコーゲンやアミノ酸といったうまみ成分が多く含まれている。これらの成分のおかげで牡蠣の甘味や濃厚感を堪能できる。また、牡蠣には栄養素が多く含まれており、肝機能を高めたり、貧血を予防したりといった効果が期待できる。食中毒の原因になりやすい牡蠣だが、生食用牡蠣は厳格な基準を満たしているので安心して食べられる。
(参考文献)