目次
1. クエン酸と重曹の違い

クエン酸と重曹はナチュラルクリーニングに欠かせないアイテムで、汚れを浮かせて落としやすくする働きがある。まずはそれぞれの特徴から解説しよう。
クエン酸は「酸性」のアイテム
クエン酸は柑橘類にも含まれている成分で、水溶液でpH2程度の酸性を示す物質だ。同じ酸性でpH3程度を示す酢とは違い、においが気にならず扱いやすい。掃除の場面では、菌の繁殖を防ぐ効果も期待できる。クエン酸の代わりに酢を使うこともできるが、ツンとしたにおいが気になる方はクエン酸がよいだろう。
重曹は「アルカリ性」のアイテム
一方の重曹は炭酸水素ナトリウムや重炭酸ソーダともいわれ、pH8程度の弱アルカリ性を示す物質である。研磨作用や消臭効果、吸湿効果が期待できるため掃除などに役立つことが知られている。また重曹は食用もあり、膨張・発泡作用を持つことからベーキングパウダーなどにも使用される。もちろん体に無害である。胃薬などにも使われているほどだ。
pH(ペーハー)の基礎知識
pHとはアルカリ性や酸性の度合いを示す0〜14までの数値である。「6〜8」を中性、0〜6未満を酸性、8を超え14までがアルカリ性だ。酸性は0に近づくほど、アルカリ性は14に近づくほど性質が強くなる。重曹は中性からわずかにアルカリ性寄りの「弱アルカリ性」だが、クエン酸は0に近く弱酸性を超えた「酸性」だ。
2. クエン酸と重曹で落とせる汚れ

クエン酸と重曹はそれぞれ落としやすい汚れが異なる。この特徴を知らずに使うと「クエン酸(または重曹)を使っているのにまったく汚れが落ちない」という状況になりかねないためしっかり覚えておこう。
クエン酸で落とせる汚れ
水垢や石鹸カスといった、アルカリ性の汚れを落とすのに向いているのがクエン酸だ。電気ケトルの中やお風呂の鏡のガンコな水垢はもちろん、トイレの便器に付着しアンモニア臭の原因となる尿石にもクエン酸が有効である。
重曹で落とせる汚れ
コゲや軽い油汚れ、茶渋や皮脂など酸性の汚れを落とすのに向いているのが重曹だ。生ゴミや靴箱などに対する消臭効果、冷蔵庫内の消臭効果なども期待できる。吸湿作用があることから、クローゼットや押入れなど湿気が溜まりやすい場所へ置くといった使い方もできる。
上手に汚れを落とすポイントは「中和」
お気づきの方も多いかもしれないが、酸性のクエン酸はアルカリ性の汚れを、アルカリ性の重曹は酸性の汚れを落とすのが得意である。汚れにも酸性やアルカリ性があるわけだが、上手に落とすには汚れを浮かせるための「中和」が重要になる。汚れの性質を見極め、それに適したアイテムを使うことでうまく中和させることができる。
3. クエン酸と重曹の使い方

クエン酸や重曹はどういった使い方をするのか、掃除方法の前に基本を覚えておこう。とくに重曹は汚れのガンコさや使う場所などによっていくつかの使い方がある。
クエン酸の使い方
粉末のまま使うか、水溶液にしてスプレーにするといった使い方が基本だ。たとえば電気ケトルの中の水垢を取りたいときは、粉末のまま投入して水を注ぎ、沸騰させてしばらく放置するといった使い方をする。水垢であれば、水溶液をスプレーしてキッチンペーパーやラップでパックし、しばらく放置したのちスポンジで擦り洗いをして流水でよくすすぐ、といった使い方がある。
クエン酸スプレーの作り方
空のスプレーボトルを用意し、水200mlに対して小さじ1杯の粉末クエン酸を溶かせばよい。ただしパッケージに分量が書かれている場合は、そちらを優先しよう。
重曹の使い方
油汚れに粉末のままふりかけ、しばらく置いて汚れを浮かせてから雑巾などで拭き取るといった方法がある。また換気扇などガンコな油汚れには、水と混ぜてペースト状にした重曹を塗ってしばらく放置し、汚れを浮かせるといった使い方をすることもある。あるいはクエン酸と同じようにスプレーにして拭き掃除などに活用することも可能だ。
重曹ペーストやスプレーの作り方
ペーストを作る場合は重曹2:水1の割合で混ぜればよい。スプレーにする場合は水200mlに対し小さじ2杯程度の粉末の重曹を溶かそう。なお40℃程度のお湯のほうが溶けやすい。
4. クエン酸と重曹がないときの代用品

クエン酸も重曹も100均やドラッグストア、ネット通販などいろいろな場所で手に入るアイテムだが、切らしたり買いそびれたりすることもあるだろう。そんなときは次のアイテムで代用できる。
クエン酸は酢で代用可能
お伝えしたように、クエン酸は酢でも代用可能だ。ただし酸性の度合いはクエン酸のほうがやや強いため、まったく同じという効果は期待できないかもしれない。また酢はにおいが残る可能性もあるので覚えておこう。
重曹はセスキ炭酸ソーダで代用可能
セスキ炭酸ソーダもナチュラルクリーニングには欠かせないアイテムだ。重曹よりもやや強いアルカリ性を持っているため、皮膚や粘膜に触れないように気をつけよう。
5. クエン酸と重曹を混ぜるのは無意味?

ところで、性質の異なる両者を混ぜた場合どうなるのだろうか?一時期、クエン酸と重曹を混ぜると強力に発泡し、その泡が汚れを溶かす・浮かせるといった情報があふれた。しかし実際は逆効果なので覚えておこう。
それぞれの長所を打ち消し合ってしまう
クエン酸にはアルカリ性を、重曹には酸性をそれぞれ中和する働きがある。両者を混ぜれば、互いに長所を打ち消し合ってしまうというわけだ。なおたしかに発泡するが、それは有害なものではなく炭酸ガスである。炭酸ジュースの泡のようなイメージだ。
汚れを浮き上がらせるほどの効果はナシ
クエン酸と重曹を混ぜて発生する泡には、汚れを包み込んで浮かすほどの力はない。ガンコにこびりついた汚れはおろか、ごく軽い排水口の軽いぬめりなども落とせない(落ちたとしても、台所用中性洗剤などを使ってこすったほうが早い)だろう。
6. クエン酸と重曹を使った掃除方法

クエン酸と重曹を使った掃除のやり方を紹介しよう。
シンク・蛇口周り
蛇口にこびりついた水垢にはクエン酸をスプレーし、キッチンペーパーでパックをして1時間ほど置いてからスポンジでこする。一方、シンクに付着した油汚れには重曹をスプレーし、スポンジなどでこすり洗いをする。ガンコな汚れであればペーストや粉末のままでもOKだ。いずれも水拭き・乾拭きをして仕上げよう。
なお水周りではなく、ガスコンロの上に取り付けられた換気扇・レンジフードには油汚れがこびりつく。頑固な汚れの落とし方については、こちらの記事で詳しく解説しているのでご覧いただきたい。
換気扇・レンジフードの油汚れの落とし方はコチラ
電子レンジ
電子レンジの庫内に飛び散った汚れや、頑固な焦げ・こびりつきなどには重曹が効果的。水に溶いてレンジで加熱し、蒸気を行き渡らせたのち拭き掃除をする。一方、魚などのニオイにはクエン酸が効果的だ。こちらもやり方は基本的に同じ。詳しくは以下の記事で手順を説明しているので、ぜひ参考にしてほしい。
クエン酸と重曹で電子レンジを掃除する方法はコチラ
お風呂
鏡や蛇口などに付着した水垢・石鹸カスなどはクエン酸をスプレーし、キッチンペーパーで覆う。さらにその上からクエン酸をスプレーしラップでパックする。1時間ほど置いてからスポンジでこすり、流水でよくすすいでから乾拭きをして仕上げよう。
床や壁などの皮脂汚れには重曹を粉末のまままんべんなくふりかけ、タイルの目地などに生えた黒カビにはペーストにした重曹を塗る。いずれもしばらく置いてからスポンジでこすり洗いをして、お湯で流せばOKだ。乾拭きは忘れないようにしよう。
床や壁などの皮脂汚れには重曹を粉末のまままんべんなくふりかけ、タイルの目地などに生えた黒カビにはペーストにした重曹を塗る。いずれもしばらく置いてからスポンジでこすり洗いをして、お湯で流せばOKだ。乾拭きは忘れないようにしよう。
トイレ
アンモニア臭の原因となる尿石、尿が跳ねたあとなどにクエン酸をスプレーし、しばらく置いてから水拭きと乾拭きで仕上げよう。ドアノブやスイッチ、壁など手が触れる場所には皮脂汚れが付いている。こちらは重曹スプレーを吹きつけ(または雑巾に含ませ)て拭き掃除をしよう。
排水口のぬめり掃除は塩素系漂白剤がおすすめ
上述のように、クエン酸と重曹を混ぜて発生する泡には、排水口のぬめりなどを落とす力はない。ここは素直に、塩素系漂白剤(アルカリ性洗剤)で一層したほうが除菌効果も得られて効率的だ。
7. クエン酸と重曹は洗濯でも活躍する

クエン酸と重曹は洗濯にも使える。それぞれ使い方やどういった効果が期待できるのかを解説しよう。
クエン酸を洗濯に使う方法
クエン酸は、洗剤としても柔軟剤としても使うことができる。洗剤として使う場合は、いつもの洗濯洗剤と同じように入れればよい。アルカリ性の汚れに対して効果を発揮してくれるはずだ。柔軟剤として使う場合は、すすぎの終わりくらいに、水30Lに対し小さじ1〜2杯程度のクエン酸を混ぜればよい。洗濯物がいつもよりもふんわり柔らかく仕上がるだろう。
重曹を洗濯に使う方法
重曹と液体石鹸(合成洗剤ではないもの)を用意する。液体石鹸の使用量を通常の半分にし、残り半分を重曹にすると洗浄力がアップするうえ洗濯槽もキレイになる。重曹は油汚れを落とすのが得意なので、皮脂が原因の黄ばみや汗ジミ、食べ物が付着した際の油汚れの洗浄、シミ抜きなどに向いているほか、衣類の消臭効果も期待できる。環境に優しい天然素材であり、経済的でもあるアイテムだ。
8. クエン酸と重曹を使う際の注意点

クエン酸も重曹も天然由来の成分だ。したがって基本的には人体に無害であり、環境にも優しい。だが正しく使うためには注意点もあるので、最後にお伝えしておこう。
クエン酸を使う際の注意点
- 塩素系とは絶対に混ぜない
- 大理石やコンクリート、鉄などには使用しない
- 放置時間を長くしすぎない
- 濃度を濃くしすぎない
- 拭き残しのないようにしっかり水拭きする
クエン酸は絶対に塩素系のアイテムと混ぜてはいけない。有害なガスが発生して危険だからだ。塩素系とはカビキラーなど漂白剤が多く、パッケージに「混ぜるな」と分かりやすく書いてある。これは酢を使う際も同様なので覚えておこう。また濃度を上げれば作用は強まるが、酸性がきつくなれば皮膚への刺激も強くなる。ほどほどにしておこう。
重曹を使う際の注意点
- アルミや銅、真鍮には使用しない
- 木や畳、コーティング済みのフローリングなどには使用しない
- 研磨作用があるため傷つきやすい素材には粉のまま使用しない
- 炊事用ゴム手袋などを着用する
- 拭き残しのないようにしっかり水拭きをする
重曹を使う際はこうしたポイントに注意しよう。アルミや銅などは黒ずんでしまうためNGだ。また拭き残しがあると白い粉のように残ってしまうため、しっかり水拭きして仕上げよう。ちなみにクエン酸スプレーを吹き付ければ、重曹が中和されてキレイになるので覚えておこう。
結論
クエン酸も重曹も100均などで手軽に手に入るうえ、汚れを落とす効果が高い。備えておいて損はないアイテムだ。それぞれの特徴を生かせば家中のさまざまな汚れをキレイに落とせるだろう。直接皮膚や粘膜に触れると刺激があるため、ゴム手袋を着用することをおすすめする。
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