1. かつおとは
●かつおの形
かつおは暗青色、紡錘形で丸みのある形をしている。これは毎秒6~7mという高速で海の中を回遊するのに適した形なのである。鱗は背びれから胸びれにかけてところどころうろこがあるがほとんど退化してなくなっている。生後一年では体長16cmほど、4年経つと50cm以上になり、成魚の場合1m前後になる大型の魚である。
●かつおの回遊ルート
かつおは温帯から熱帯の海域を回遊する魚である。幼魚のうちはイカ類や甲殻類を食べるが、成長するとイワシを食べる。そのイワシの群れを追って日本近海に泳ぎ着く。回遊するルートは2つある。1つ目は黒潮にのってフィリピン、南西諸島を経て日本近海を北上するルート。2月中旬に九州南部に現れ、3月には四国沖、その後紀伊半島、伊豆、房総と移動を続け9月には北海道に到達する。その後、水温が下がるとUターンを始めるのだ。2つ目のルートは、小笠原系と呼ばれるルートを通り、ミクロネシアから小笠原諸島、関東を経て北海道にたどりつく。その後、黒潮系と同じく、水温が下がると南下するのである。
●旬
かつおの旬は春と秋である。餌を求めて北上するかつおは春に獲れ、初ガツオと呼ばれる。南下するかつおは秋に獲れ、戻りガツオと呼ばれる。初ガツオは脂肪が少なくあっさりとした風味。かつお節にも使われる。戻りガツオは脂がのって濃厚な味わいである。
2. 栄養
●かつおの栄養
かつおは鉄分が豊富で、100gあたり1.9mg含んでいる。春に穫れる初ガツオと秋に穫れる戻りガツオでは、戻りガツオのほうが脂肪分が多いが、鉄分の量にほとんど変わりはない。ビタミンA、Dなどの脂溶性ビタミンとビタミンB群も多い。良質なタンパク質とEPA、DHAなどの多価不飽和脂肪酸もたっぷり含んでいる。回遊魚に特有の血合い肉が多いのも特徴である。
●栄養たっぷりの血合い肉とは
血合い肉は、魚の背身と腹身の間にある赤黒い部分で、臭みが強いため通常、マグロやサバなどを刺し身にする場合は取り除かれている。しかし、旬のかつおの場合、あえてこの部分を残して刺し身にして楽しむこともある。血合い肉には鉄分やタウリン、EPA、DHAなど健康を増進する栄養が豊富なので、から揚げや煮物などにする場合はあえて残して調理する。
●かつおに含まれる鉄分はヘム鉄
鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄の2種類がある。かつおに含まれる鉄分は、肉や魚に多く含まれるヘム鉄である。一方、非ヘム鉄は海藻や野菜の鉄分のことである。ヘム鉄は溶けやすいため吸収率は15~20%と高い。一方、非ヘム鉄は逆に溶けにくいため吸収しにくい鉄分で、吸収率は2~5%である。
3. かつおを美味しく食べるには
●血合い肉におすすめの食べ方
かつおの血合い肉は栄養豊富だが、生臭さが気になる方は多い。そんな方におすすめの食べ方がある。オリーブオイルや味噌、梅干しなど香りや酸味が強い食品と合わせると臭みが和らぎ食べやすくなるのである。また、梅干しや柑橘系のフルーツに含まれる酸味成分のクエン酸は、鉄分の吸収を促す働きもある。カルパッチョにして、梅やすだちなどで作ったソースをかけてもよい。また、加熱してかつおフレークにするのもおすすめだ。フレークの味付けに味噌やしょうゆなどを使うと、一層臭みを感じにくくなる。冷蔵庫に入れると1週間ほど日持ちするので非常に便利である。
●美味しいかつおを選ぶには
鮮度が命の魚、かつおは身の色が鮮明な赤色をしているものが新鮮である。時間が経って鮮度が落ちると黒っぽい赤色になる。
●かつおの保存方法
かつおは買ったその日のうちに食べるのが一番、購入した日に食べきりたい。しかし、余ってしまった場合は加熱調理して冷蔵庫で保存する。もしくは漬けにすると冷蔵庫で4日ほど保存できる。漬けにする場合は、湯引きをしてからしょうゆなどで作った漬け汁に漬け込む。湯引きは、さっと10秒ほどかつおを沸騰した湯にくぐらせ、水を切ってから氷水に浸すことである。この湯引きをすることでかつお独特の臭みを和らげることができる。
結論
たたきや刺し身にして手軽に食べられるかつお。鉄分をはじめ良質なタンパク質など栄養も豊富である。ぜひ春と秋、旬の季節にたっぷり楽しみたい。
「鉄分摂取シリーズ」を読む!