1. えんどうとは?

絹さやについて理解するには、まずえんどうについて正しく理解しておく必要がある。えんどうの特徴は、成長過程によって食べる部分が異なり、それに伴い呼び名も変わること。簡単に各過程の名称と特徴をまとめておく。
- 豆苗:えんどうの「若菜」のこと
- さやえんどう:熟していないえんどうの「さや」のこと
- 実えんどう:熟していないえんどうの「豆(果実)」。グリーンピースのこと
- えんどう豆:マメ科の植物。完熟したえんどうの「豆(果実)」のこと
また、えんどうには大きく「軟莢種(なんきょうしゅ)」と「硬莢種(こうきょうしゅ)」の二種類がある。これらの違いは「さやの硬さ」である。一般的にさやえんどうや実えんどうなどを作る場合はさやが柔らかい「軟莢種」を使い、乾燥したえんどう豆を作る場合は「硬莢種」が使われている。
2. 絹さやとは?

絹さやはさやえんどうの一種であり、さやえんどうの主要品種の総称である。ほかの品種と比べると、長さは5~6cmと小さく、実が小さいため非常に薄いことが特徴。そのため、食べたときにシャキシャキとした歯ごたえがする。また、ほのかな甘みがあり、色鮮やかな黄緑色をしているため、料理では彩りや付け合わせとして使われることが多い。とくに関東地方での流通量が多くなっている。
絹さやの名前の由来
絹さやの由来は二つあり、一つは見た目がツヤツヤとしており絹のように見えるから。もう一つはさや同士がこすれると、絹の着物がすれ合うような「絹(衣)ずれ」の音がするからだという。えんどうは奈良時代に遣唐使によって伝えられたが、さや部分が食べられるようになったのは江戸時代に入ってからだとされている。
絹さやの旬と産地
絹さや(さやえんどう)はハウス栽培が行われているため一年中手に入る。しかし、畑で栽培された露地物は3月~6月頃のみ出回る。初夏のものが最も美味しく、旬ならではのみずみずしさが味わえる。農林水産省「作物統計調査(2018年)」によれば全国の出荷量は12,500トンで、鹿児島県が総出荷量の約30%を占めている。また、愛知県や福島県、和歌山県などでも生産が盛んだ(※1)。
絹さやの主な品種
絹さやは「絹さやいんげん」の総称であり、大別すると白色の花をつけるものと赤紫色の花をつけるものに分けられる。白い花をつけるものには「美笹」や「電光30日」があり、赤紫色の花をつけるものには「姫みどり」や「ゆうさや」、「鈴成砂糖」などがある。また地域別に見ると、鹿児島県の「さつま白花」、愛知県の「渥美白花」、静岡県の「伊豆赤花」などが有名である(※2)。
3. おいしい絹さやの選び方

絹さや(さやえんどう)は、ツヤとみずみずしさを感じさせる緑色をしたもの、さやが薄いものがよい。豆の形が浮き出て厚くなっていると、さやが硬くなっているため気を付けよう。さやにハリがなくなり色が薄くなっていると味も落ちてくる。また、新鮮さは、ヘタ(ガク)や先端のヒゲでも見分けられる。ヘタの色が鮮やかで、ヒゲにもハリがあってイキイキとしているものを選ぶとよい。
4. 絹さやの下ごしらえの方法

絹さやを料理に使う際は筋を取り除くほうがよい。筋が残っていると噛み切れずに口の中に残ってしまうことがあるからだ。また、下茹でしてから料理に使うほうがおいしく食べることができる。絹さやの筋の取り方と下茹でのやり方についてそれぞれ確認しておこう。
絹さやの筋の取り方
- ヘタが上に来るように絹さやをつまむ
- ヘタを直線側に折り、そのまま筋を下まで引っ張る
※途中で切れてしまったら先端側を折って筋を取る - 180度横に回転して、背中側の筋を下まで引っ張る
絹さやの筋の下茹で方法
- 鍋にたっぷりのお湯を沸かし、塩を小さじ1杯分入れる
- 絹さやを入れて、菜箸でまぜながら30秒~1分程度茹でる
- 茹でたらすぐにザルに上げて、冷水につけて冷やす
- 熱が取れたら冷水から上げて、キッチンペーパーで水気を取る
5. 絹さやの保存方法

絹さやは、冷蔵保存と冷凍保存の両方ができる食品だ。しかし、間違った保存方法をするとすぐに傷んでしまうため注意が必要だ。以下では絹さやを長期保存するためのポイントを確認しておこう。
絹さやを冷蔵保存する方法
絹さやは乾燥に弱い食品であり、冷蔵庫に直接入れると数日で傷んでしまう。そのため、生の絹さやはビニール袋やポリ袋などに入れてから野菜室で保存しよう。生の状態なら通常1週間程度は保存がきく。また、茹でた絹さやはタッパーなどに入れておけば2~3日程度は保存ができる。
絹さやを冷凍保存する方法
下茹でした絹さやであれば冷凍保存することも可能だ。生のまま冷凍保存すると風味や食感が悪くなるので、できれば下茹でするとよいだろう。また、あらかじめトレイなどで凍らせてから少量に分けて保存すると使いやすくて便利だ。解凍するときは流水にさらすか、電子レンジを使うとよい。
6. 絹さやのおいしい食べ方3選

絹さやは和食・洋食・中華料理と、さまざまな料理に使うことができる。使い道はたくさんあるのだが、ここでは人気の高い「卵とじ」、「豚肉炒め」、「サラダ」の三種類を紹介する。
絹さやの卵とじ
絹さやのシャキシャキ感と卵のフワフワ感が絶妙にマッチする一品だ。沸騰させただし汁に下茹でした絹さやを入れて蒸らし、さらに溶き卵を入れて蒸らすというお手軽料理である。ご飯がすすむ味をしているため、時間がないときのおかずにピッタリである。
絹さやの豚肉炒め
絹さやと豚肉だけで作るシンプルな炒め物だ。フライパンにサラダ油をひき、豚肉の色が変わるまで炒める。そこに絹さやを加えて炒め、最後に醤油や酒などを加えるだけである。醤油ベースのシンプルな味付けだが、非常においしく食べることができる。絹さやの緑色もきれいで見た目もよい。
絹さやのサラダ
サニーレタスなどの葉野菜と一緒に茹でた絹さやを混ぜるだけの簡単なサラダである。歯ごたえがよくなるだけでなく、豆の風味も加わっておいしさが増す。茹で卵と混ぜたり、ツナ(シーチキン)と和えたりしてサラダにしてもおいしい。栄養バランスも見た目もよくなるのでおすすめだ。
結論
絹さやは、さやえんどうの中でも小型の品種の総称である。その食感はシャキシャキしており、味はほのかな甘みが特徴である。和食・洋食・中華などさまざまな料理に使うことができるので、彩りが足りないときにはぜひ一緒に使うといいだろう。
【参考文献】
- ※:農畜産業振興機構「さやえんどう 栄養 野菜情報-今月の野菜-2009年4月」https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/yasai/0904/yasai1.html
- ※1:農林水産省「作物統計調査(2018年)」https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500215&tstat=000001013427&cycle=7&year=20180&month=0&tclass1=000001032286&tclass2=000001032933&tclass3=000001135323
- ※2:農畜産業振興機構「野菜情報 絹さや」https://www.alic.go.jp/content/001174575.pdf