目次
1. ヌーハラとは「ヌードルハラスメント」のこと

ここ数年、有名人・著名人をも巻き込んで論争を引き起こしたこともある「ヌーハラ」問題。「ヌーハラ」とは、「ヌードルハラスメント」の略だ。聞いた事がある人も、ない人もいるだろう。ことの発端はとあるSNSから発信された一言だったのだが、これが一部で物議を醸すこととなったのである。
なぜハラスメント?ヌーハラの意味
具体的にどのような行動が該当するのかというと、たとえば、そば・うどん・ラーメンなどの麺類を食べるときに「ズズズーッ」と音を立てる行為だ。外国人には嫌厭されるらしい。日本人でも嫌がる人は一定数存在し、とくに若い女性の中には、麺を食べる時に音を立てるのが恥ずかしいことだと思っている人もいる。
ほかにも、「宗教上豚肉が食べられないイスラム教徒に、豚骨ベースのスープや豚肉のチャーシューが入ったものしか提供できかねない」「麺を上手にすすれないことをからかう」「白い服を着てカレーうどんを注文した客に汁はねが付くのを防ぐためのエプロンを提供しない」という行為も「ヌーハラ」だという声もある。
ほかにも、「宗教上豚肉が食べられないイスラム教徒に、豚骨ベースのスープや豚肉のチャーシューが入ったものしか提供できかねない」「麺を上手にすすれないことをからかう」「白い服を着てカレーうどんを注文した客に汁はねが付くのを防ぐためのエプロンを提供しない」という行為も「ヌーハラ」だという声もある。
2. ヌーハラに対する海外の反応

日本特有の麺をすする食べ方や音がヌーハラとして問題視されたことについて、海外の反応は実際のところどうなのだろうか。デリケートな問題だけに、人によって感じ方は異なるようだ。
音を立てて食べるのはハラスメント!
海外、とくにヨーロッパでは、音を立てて食事することはマナー違反とされている。そもそも麺をすすって食べる文化がないため、ズルズルという音が下品に感じる、すする姿が汚い食べ方に見えるといった理由で不快になってしまうようだ。
日本人でも蕎麦やラーメンはすするが、ヨーロッパから伝わった料理であるパスタは音を立てずに食べる場合が多い。このことから、海外では音を立てて食事する行為はタブーであると認識している日本人も多いことが覗える。
日本人でも蕎麦やラーメンはすするが、ヨーロッパから伝わった料理であるパスタは音を立てずに食べる場合が多い。このことから、海外では音を立てて食事する行為はタブーであると認識している日本人も多いことが覗える。
自分もそばやラーメンをすすれるようになりたい!
ヌーハラに同意する人もいる一方で、別の意見をもつ外国人も少なくない。その土地の文化を知ることや慣れることが望ましいというものだ。日本人が音を立てながら麺料理を食べるのは日本文化のひとつであり、笑ったり嫌がったりしては失礼にあたる、という認識も広まりつつある。中には自分も上手に麺をすすれるようになりたい、という外国人までいるようだ。日本に限らず、さまざまな国の文化に触れ親しみたいという思いや、その国の人や考え方に敬意を示したいという思いから、自分も同じ行動をしたいという考えになるという。
自分はしないが気にならない
また、自分も麺をすすりたいとまでは思わないが、他人がすすっていてもヌーハラとは感じないという意見もある。これは、「麺をすするのは日本人の文化である」と認識し、日本にいる自分がその状況を受け入れるべきという考えからだ。そういうものだから気にならないという人もいれば、気になるけれど黙っているという人もいる。まさに「郷に入っては郷に従え」という思想といえるだろう。
3. 海外だけでなく日本でもヌーハラは意見が分かれる

海外の人々にもさまざまな意見が見られるが、当の日本人の間でもヌーハラに対する意見は分かれるようだ。否定派、肯定派それぞれの意見を見ていこう。
すするのは文化!ヌーハラは理不尽だしおかしい
ヌーハラがメディアなどで取り上げられた際には、麺類をすすり音を出しながら食べるのは日本の文化だ、否定されるべきではないという主張が発信されていた。文化なのにハラスメントといわれ、批判されるのはおかしいという意見だ。そこまで強い意見ではなくとも、日本の文化について外国人が違和感をもつこと自体は理解できるが、ヌーハラと批判されるのは理不尽に感じるという人は少なくないだろう。
日本人だけどヌーハラだと感じる
一方、日本人でありながら他人が麺をすする音が苦手、不快に感じるという意見も存在する。そばやラーメンを普段あまり食べない人にその傾向がある。また、音が大き過ぎる場合や、汁が飛び散るような豪快過ぎる食べ方などに嫌悪感をもつ人もいる。ヌーハラとまではいわなくても、できれば麺をすすって食べる人の近くで食事をしたくないと密かに思っている日本人は、意外といるのである。とくに女性は、他人の食べ方が気になるというよりも、化粧が落ちる、服に汁がはねるといった理由で、自分は麺をすすらないという人も多い。
4. ヌーハラ対策の諸事情

結局のところ、ヌーハラの是非に関しては海外でも日本でも意見が分かれる。そのため、あまり目くじらを立てるのではなく、次のように柔軟な対応を心がけるのがスマートだろう。
海外では相手の文化を受け入れるのが無難
一部の人を除き、日本では許容されている「麺を音を立ててすする」行為だが、やはり多くの外国ではタブー視されている。日本食ブームもあり、とくにラーメンなどのカジュアルな麺類を食べられる外国の店ではOKだともしているが、外国人全員が日本食に興味があるわけでもなく知っているわけでもない。故に海外で麺料理を食べる際は、音を立てずに食べたほうが無難だろう。
日本でも思いやりの心を持とう
ヌーハラといわれると文化を否定されたような気分になるかもしれないが、すすることにより人を不快にさせる可能性があることは頭に置いておきたい。外国人に限らず日本人でもすする食べ方や音を嫌がる人はいるのだ。そのため、周りへの配慮を忘れないことが大切である。すすって食べること自体はもちろん自由だが、店など周りに人がいる場で麺類を食べる際には、大き過ぎる音にならないよう気を付けたい。
ヌーハラの被害を受けているとき
もし、一緒に食事をしている相手や周りの人が、麺類を豪快にすすっていて不快に感じてしまったらどうしたらよいのだろうか。食べ方について他人に意見することはあまり好ましく思われないが、我慢しすぎても食事を楽しめないだろう。家族や友人など親しい関係であれば、否定するのではなく「豪快だね」などとサラッと指摘してみるのも一つの手だ。相手は自覚がないことがほとんどのため、少し音を弱めてくれるかもしれない。見知らぬ他人の音が気になって仕方ない場合は、相手に直接指摘することはおすすめできない。イヤホンをして音をかき消すなど、ストレスのたまらない方法で回避しよう。
ヌーハラ対策の商品も登場?
昨年の10月、日清食品から麺をすする音を打ち消すフォークがクラウドファンディング上でリリースされた。フォークの集音マイクが麺をすする音を感知するとスマートフォンに信号が送られ、専用アプリから野山を吹き抜ける風や打ち寄せる波の音にも似たような、「ザザザー」というカムフラージュ音が流れるようになっている。価格は1万4,000円。予約数が5,000個に達したら発売する、という商品だったが悔しくもその数には至らず、お蔵入りとなってしまったようだ。
5. 麺類はすするほうが美味しい!ヌーハラが生まれた3つの背景

ヌーハラ論争の元となってしまった麺をすする文化だが、そもそもなぜ日本人は麺類を食べる際にすするのだろうか。最後に、すすって食べるメリットについてもおさえておこう。
その1:香りをより楽しめる
麺をすすって食べると、すすらずにモグモグと食べる時よりも、空気を口の中に取り込みつつも閉じ込めておくことができる。ワインや紅茶のテイスティングにも共通することだが、空気というのはにおいを鼻に抜けやすくしたり、より口いっぱいに広げたりしてくれ、食べ物や飲み物の香りを楽しみやすくしてくれるのだ。香りを楽しむ日本の麺類といえば蕎麦があるが、とくに冷たい蕎麦はにおいが立ちにくいため、すすって食べるのはより効率よく香りを楽しむために有効な方法だと考えられる。
その2:スープをより味わえる
麺をすすることにより、スープが麺に絡みやすくなるというメリットもある。音を立ててすする食べ方と無音の食べ方で、同量のラーメンを食べ比べたところ、鉢に残ったスープの量に差があったという実験結果も出ている。すする食べ方のほうが、麺を箸ですくい口に運ぶまでの時間が短く、スープが落ちにくいからだろう。麺とスープを同時に味わうことができる食べ方でもあるのだ。
その3:アツアツを食べられる
できたてのラーメンやかけそば、かけうどんを勢いよく食べると火傷しそうだ。しかし、音を立てて麺をすすると空気を同時に口に入れることができるため、火傷を防ぐことができるのである。麺類をすすって外気を含むことで、口のなかでほどよい温度となりアツアツの状態でも美味しく食べられるというメリットもあるのだ。
結論
ヌーハラという言葉があまり流行らなかったように、食文化の違いをハラスメントに結び付けることに違和感をもつ人は少なくない。しかし、たとえ文化であっても人を不快にさせる可能性があることは覚えておきたい。日本でも海外でも誰と一緒でも、思いやりの気持ちを忘れず、美味しく食事を楽しみたいものだ。
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