1. 関東と関西で違う表情

コンビニでも東西異なる素材で売られているようで、お互いの地域の物しか見たことがない人は違う桜餅を見るとビックリすることがあるようだ。
隅田川うまれの「長命寺」
関東は小麦粉の生地をピンク色に染め、クレープ状にして餡を巻いた「長命寺餅」が主流だ。これは享保2年、隅田川沿いの長命寺で桜の葉が落ちて来るのに悩んだ門番が葉を塩漬けにして餅を包んで売り出したのが始まりだ。隅田川沿いの花見のお供として大評判となり、門番の山本新六氏は長命寺桜餅の老舗「山本や」を興す。約300年の歴史が育んだ和菓子なのだ。
武士の携帯食からうまれた「道明寺」
大阪にある道明寺という寺は、戦国時代から武士の携帯食になる「糒(ほしいい)」を作ることで有名だった。これは寺の名を取って「道明寺粉」と呼ばれ、水ですぐ戻り、粒々した食感が特徴である。関西の桜餅はこの道明寺粉を使っている。昔はクレープ状の長命寺餅は「こし餡」、まんじゅう状の道明寺餅は「つぶ餡」と決まっていたようである。
2. 葉っぱの秘密

桜フレーバーといえば桜餅のあの香り。実は桜の香りはそのままでは引き出されない為、大変な手間が掛かっている。
桜の種類はオオシマザクラ
今でこそ桜と言えばソメイヨシノだが、明治以降に広まった比較的新しい品種だ。桜餅発祥当時は桜と言えばオオシマザクラだった。現在でも桜餅の葉っぱはオオシマザクラである。オオシマザクラの葉は薄くて柔らかく、毛が少ないので食べても口当たりが気になりにくい。
独特の香りは塩漬けだから
桜はそのままではあの香りはしない。塩漬けされた葉だからこその風味である。9割以上が静岡県の伊豆地方で生産されており、特に松崎町が全国消費の7割を出荷している。作業は簡単とは言え、食べられるようになるまで半年から1年は熟成されるのだ。手作業でサイズ選別された葉は、破れないように丁寧に塩漬けされる。
実は毒がある?
塩漬けされた葉はクマリンという芳香成分を発生させ、独特の風味を醸し出す。この葉で包むと桜餅に適度な塩気と風味が移って美味しくなるというわけだ。このクマリンは、実は肝毒性があることで知られている。食品添加物として危険な程ではないが、極端に食べ過ぎるのはよくない。気になる人は葉を食べなくても良いだろう。
3. 自宅でも作れる?

桜餅は二つ折りにした皮で餡を包む長命寺餅なら比較的簡単に手作りすることが可能だ。春の季節に作ってみるのも良いだろう。
手軽なクレープ状がおすすめ
桜の葉は市販品を買い求め、10分ほど水に浸けて塩抜きしてからキッチンペーパーで水気を取る。こし餡も市販品なら手軽だ。6個分として、150gのこし餡を丸めておこう。白玉粉10gに砂糖10gを混ぜ、水90mlを入れてよく混ぜ合わせる。ここに薄力粉40gも入れて混ぜたらザルで濾し、1時間ほど休ませよう。ホットプレートやテフロン加工のフライパンに薄く油をひいたら大さじ2~3ずつ生地を入れて焼いていく。焼き色が付かないように、表面が乾いたらサッと返して中弱火で焼くのがコツだ。
道明寺粉は蒸す必要があり
少し手間はかかるが、大型スーパーや製菓店で道明寺粉が手に入ったら袋の表示通りに蒸すことで関西風の道明寺餅も作れる。しかし、九州地方等で盛んな、もち米を固く炊いて道明寺粉の代わりに皮にする方法の方が手軽に再現出来るだろう。
結論
昔からの作り方では、長命寺餅は桜葉3枚、道明寺餅は桜葉1枚が主流だったそうだ。桜餅は春の季語にもなっている。その旬は2月下旬~4月上旬と比較的短い。成り立ちそのものが日本文化と密接な風流な和菓子を、季節になったらぜひ楽しみたいものだ。
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