1. マーガリンとバターの原料油脂の違い

見た目や食感が似ているバターとマーガリンには、原料や製法に決定的な違いがある。原料油脂の種類や成分などを含めて、詳細を確認してみよう。
マーガリン
マーガリンはコーンや大豆を原料植物とした、植物性油脂ベースの加工食品である。まず、植物の果実や種を圧縮・精製して植物油を作る。植物油を水・食塩・粉乳などの乳成分・ビタミン類と合わせて乳化して練り合わせ、冷却しながら固めるとマーガリンの完成だ。マーガリンは植物油が原料であるため、リノール酸、α-リノレン酸といった必須脂肪酸を含んでいることが特徴である。
バター
食用としての起源は、紀元前60年頃まで遡るバター。原料油脂は牛乳の脂肪分だ。一般的な製造方法ではまず、牛乳を遠心分離してできた乳脂肪分35~40%のクリームを加熱殺菌後に冷却する。次に、冷却されて結晶化したクリームをかき混ぜて粒状にして、塩分を加えて練るという手順だ。含有成分は、ビタミンAなど牛乳由来となっている。
2. マーガリンの原料は石油やプラスチック入り?

マーガリンは植物由来の油脂が原料だが、プラスチック食品といわれたり石油が使われているから危険だとされたりすることがある。理由を3つ挙げてみよう。
マーガリンが腐らないという誤解
ひとつは、マーガリンはバターと違って腐ったりカビが生えたりしないから、プラスチックと同じだという誤解である。食品が腐るには、菌が食品から栄養を蓄えて繁殖するという、一定の条件が必要だ。バターは牛乳由来の食品であるため、菌の栄養となる不純物が多く含まれ腐りやすい。一方でマーガリンは、純粋な状態では腐らない植物油脂がベースであるため、バターよりも保存しやすいのである。しかし、マーガリンにも植物油脂以外の不純物が入っており、腐らないというのは誤りだ。
言葉の誤訳
マーガリンは外から圧力を加えると変形し、力を弱めても元の形には戻らない。この性質を可塑性(かそせい)といい、英語では「plasticity」と表記する。発音やつづりがプラスチックとほぼ同じであるため、マーガリンについての学術文章の翻訳を誤り、マーガリン=プラスチックという噂が広まったともいわれている。
原料の精製に必要な物質
マーガリンには石油が使われているという誤解は、原料の植物油を精製するときに石油化学物質が使われていることから生じたようだ。使用された石油は別の製造過程で除去され、植物油を商品とするには基準をクリアする必要があるため、販売されている植物油やマーガリンは安全だといえるだろう。
さまざまな噂があるが、マーガリンを摂取するうえで本当に気をつけたいことは、常温でも液体である植物油や魚油を原料とする加工油に含有するトランス脂肪酸だ。トランス脂肪酸を多く摂取すると心臓病のリスクが高まるとされ、世界的にも摂取を抑える風潮がある(※1)。トランス脂肪酸を含む油はマーガリン以外にも存在し、スナック菓子などから摂取する可能性もあるため、1日の摂取量には注意が必要だ。
3. マーガリンと石鹸の原料は同じ?

石鹸とマーガリンは同じ原料の加工製品である。油脂という化合物は、化学反応を起こすことでさまざまな物体に変化させられることが特徴だ。石鹸の製造は主に、やし油やパーム油という原料油脂を分解し、脂肪酸という油脂化成品を作ることから始まる。かたやマーガリンは、原料油脂に水素を添加させて硬化油としたうえで作られているのだ。
両者とも植物性の油を原料としているが、製法が異なったり原料油脂以外の材料が違ったりして、全く違う製品となっている。植物油は食品にしか使われていないと思う人も多いかもしれないが、石鹸のほかにも、油性塗料やインク、バイオディーゼルなど、日常にはマーガリンと原料が同じ工業製品が多く存在している。
結論
マーガリンは植物油を原料としているが、石油が原料であるなど事実と異なる噂が多いようだ。一般的に商品としてのマーガリンは、食べても問題がないとされているため安心して購入したい。ただし、健康リスクのあるトランス脂肪酸には注意が必要だ。マーガリンを購入するときにはトランス脂肪酸が少ない商品を選ぶなど工夫が必要である。
(参考文献)
※ 農林水産省 すぐにわかるトランス脂肪酸:農林水産省
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