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麹(糀)ってどんなもの?期待される健康効果を専門家に聞いてみた

麹(糀)ってどんなもの?期待される健康効果を専門家に聞いてみた

投稿者:オリーブオイルをひとまわし編集部

監修者:東京農業大学 醸造科学科 教授 前橋健二(まえはしけんじ)

鉛筆アイコン 2021年8月22日

2010年代の「塩麹」ブームを覚えているだろうか?肉や魚を柔らかく、より美味しくするうえに、健康効果も期待されることからブームとなり、いまでは定番調味料のひとつといっても過言ではないかもしれない。そんな「麹」とは一体なんなのか、東京農業大学醸造科学科の教授、前橋健二先生に詳しく聞いてみた。

  

1. 糀(麹)とは?


ー「麹」と「糀」、2つの表記がありますが、何か違いはあるんでしょうか?

穀物にコウジカビを生やしたものを「コウジ」といいますが、これはもともと中国から日本に伝わったものです。
中国では小麦や麦の粉を原料に餅状に固めて作ったコウジが使われます。麦が原料なのでコウジの字は麦扁なのです。
この日本独特のコウジには「糀」という米扁の字が用いられました。この「糀」という字は中国にはありません。日本で作られた文字です。このことからも、日本の米糀は日本独自のものであることがわかります。
ところが日本に入ってきて日本の文化の中で米を原料としてつくるコウジが発達しました。米にコウジカビを十分に生育させると、まるで花が咲いたようにモサモサの米コウジができます。

ーカビと聞くと、毒がありそうなイメージを持ちますが、コウジカビには毒は無いのですか?

お酒や米味噌に使われるコウジカビの学名はアスペルギルス・オリゼーといいます。
コウジカビは古来から麹づくりに利用されているカビのことで、麹菌といいます。麹づくりでは、麹菌の胞子を集めた種麹というのを蒸した原料に植え付けて、麹菌を育てます。
麹菌はアスペルギルス属のカビの一種ですが、実はアスペルギルス属カビには恐ろしい毒を持った種が多くあります。しかし古来から麹づくりに使われてきている麹菌は、毒を持たない安全なカビであることが科学的に証明されています。
麹菌の種類は、清酒や米味噌に使われるアスペルギルス・オリゼーだけでなく、醤油に使われるアスペルギルス・ソーヤ、焼酎のアスペルギルス・カワチ、泡盛のアスペルギルス・ルチュエンシスの4種があります。鰹節に使われるカビはユーロチウム・レペンス、紅麹に使われるカビはモナスカス・アンカといい、これらは麹菌には含まれていません。

糀菌のはたらきとは?

醸造で麹を利用する目的は、原料成分を分解するための酵素源とするためです。麹菌というのは非常に強力な酵素を豊富につくるカビなので、出来上がった麹には麹菌がつくった酵素をたっぷり含まれています。
例えば、清酒造りで酵母がアルコール発酵することはよくわかりますが、酵母は米の成分を栄養にできないので、麹菌の酵素で米でんぷんを分解してブドウ糖に変える必要があります。米麹には、麹菌がつくったでんぷん分解酵素が豊富に含まれています。
また、大豆はたんぱく質豊富な健康食品ですが、麹菌の酵素を作用させると大豆たんぱく質は分解してペプチドやアミノ酸ができ、うま味が強くなるとともに健康効果も高まります。麹菌はたんぱく質分解酵素を豊富につくって麹に蓄えてくれます。

2. 糀(麹)って何に使うの?


ー麹菌には食品へ与えるさまざまな効果があるんですね。教えていただいた以外にも身の回りの食品に多く使われているものなのですか?

麹は日本の伝統醸造技術の中で最も重要なものです。清酒造りでは「一麹、二酛、三造り」といわれ、醤油造りでは「一麹、二櫂、三火入れ」、味噌造りでは「一麹、二炊き、三仕込み」といわれます。つまり、どの醸造においても麹が要というわけです。

目的は原料を「分解」すること

麹を使う目的は、酵母や乳酸菌の発酵に先立ってまず原料成分を分解することにあります。また、原料成分の分解によって味が生まれるので、おいしくするためにも必須です。

ー麹は古来から日本の食生活を支えていたんですね。麹にはどのような種類があるんでしょうか?

麹の種類は、使用目的で分けると醸造食品の種類だけありますが、原料で分けると米麹、麦麹、豆麹、醤油麹となります。
最もなじみが深いのが味噌用の米麹でしょう。昔は味噌は家庭で手作りするのが普通だったため、そのための米麹は全国の食料品店に置いてあります。麦味噌用の麦麹も、まれにおいてある店があります。
醤油麹は、大豆と小麦でつくられた醤油用の麹です。醤油麹はほとんど市販されていませんが、大豆と小麦または大麦等でつくられた麹は「醤油の実」を作るために売られています。醤油の実とは、麹に塩水または醤油を加えてしばらく放置し、どろどろの状態になったらご飯のお供として食べるものです。
豆麹は大豆でつくった麹で、豆味噌やたまり醤油をつくるときに使われます。
ほかに焼酎麹と泡盛麹がありますが、これらは米麹の一種ですが使われる麹菌に特徴があります。クエン酸という酸をつくる麹菌なので、これらの麹で発酵させると強烈に酸っぱくなります。温暖な地域で安全に焼酎造りをするのに適しています。

糀(麹)を使って作られる食品

麹を利用してつくられる発酵食品には、味噌、醤油、本みりん、米酢、清酒、焼酎、麹漬け、甘酒、塩麹があります。
いずれも麹の酵素を利用して米や大豆の成分を分解してうま味や甘味を増やすことでつくられます。

ー味噌に醤油にみりんと、日本食に欠かせない調味料にも糀が深く関わっていたんですね。自宅でも麹を使って作れるものはありますか?

家庭で手軽に作れる麹発酵食品といえば、甘酒と塩麹でしょう。

甘酒の作り方

甘酒の最も簡単な作り方は、米麹100ccに対して150ccくらいの湯(60℃くらい)を加えて、ヨーグルトメーカーなどを使って6時間から一晩60℃をキープしておけば、米がどろどろに溶けて甘酒ができます。炊いたご飯を米麹と等量くらい混ぜてからお湯を加えるやり方もあります。

甘酒の保管方法

甘酒はあまり日持ちがしませんが、最後に鍋に移して沸騰寸前まで温めて、冷ましてから冷蔵保存すればよいでしょう。

塩麹の作り方

塩麹の場合は、米麹に食塩と水を加えて甘酒と同様に60℃で発酵させます。塩の量は全体の10%になるようにし、水の量は全体の60%くらいになるようにします。米麹100gに対して食塩22gと水100 mlを基本として、水を少し増やしたら塩も少し増やすなどして調整するとよいでしょう。

味噌の作り方

味噌も家庭でつくることができます。米麹1kgに対して蒸した大豆2kg、食塩445g、水600mlを混ぜて、容器に仕込み、1kgほどの重石を載せて常温に3~4カ月置いておくと、麹歩合10割の米味噌ができあがります。

3. 糀(麹)を食事に取り入れるメリットとは?


ー家庭でも手軽に麹を使って調味料を作ることができるんですね。麹を食生活に取り入れるメリットはなんなんでしょうか?

麹食品に含まれる健康成分としては、即効性のエネルギー源であるブドウ糖が豊富に含まれること、代謝を助け美容に効果のあるビタミンB群を含むこと、腸内環境を整える麹菌菌体や米成分由来の食物繊維を含むことが挙げられます。
そのほか、加熱殺菌されていない麹食品には麹の酵素が含まれています。食材と和えたり料理にかけたりして調理すると麹の酵素の作用で柔らかくなったりうま味が増えたりします。

ー麹の健康効果を得るために、普段の食生活に取り入れる方法を教えてください。

麹を使った食品を調味料として使えば、どんな料理にも麹の成分が入るので、無理なく麹の効果を食生活に取り入れられます。
そもそも味噌や醤油は麹調味料です。日本人ならこれらを全く口にしない日はないでしょう。本みりんや米酢も麹調味料です。

糀(麹)を使って誰でも料理上手に?

数年前から定着している塩麹は、麹の力で料理をおいしくすることで注目を集めました。塩味をつける際には塩の代わりに塩麹を使うと、うま味豊かな塩味を程よくつけられるので、誰でも料理上手になれると話題になりました。

甘酒も調味料使いできる

甘酒のうち米麹で作る麹甘酒(糀甘酒と表記されることが多い)は、米由来のやさしい甘みを持つ麹調味料です。料理に甘味をつけたいときは、砂糖の代わりに麹甘酒を使えば、甘味付けだけでなく麹の健康成分も同時にとることができます。

酸味付けにも糀(麹)食品が活躍!

酸味付けのときは、米酢や黒酢を使うと麹成分をとることができます。レモン果汁や梅肉のクエン酸で酸味付けをするのもよいのですが、米酢や黒酢の酸味は酢酸なので、血圧低下作用や内臓脂肪減少効果など酢酸の機能性を得ることができるのと、酸味成分とともに麹成分も得ることができます。

結論

「糀」と「麹」の違いから始まり、食生活に麹を取り入れる方法まで、詳しく先生に教えていただいた。麹が意外と身近な存在であることに驚いた方もいるのではないだろうか。日本食が健康によい、と言われているのも、縁の下の力持ちである「麹」の力があってこそなのかもしれない。
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  • 更新日:

    2021年8月22日

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