目次
1. カルキとは?

カルキは水道水にも含まれている。そもそもどんな物質なのかといった基本的なところから解説していこう。
カルキとは
カルキとは「消石灰(水酸化カルシウム)」に「塩素」を吸収させてできる白い粉末状の物質で「次亜塩素酸カルシウム」というのが正式名称だ。「さらし粉」「塩化石灰」などと呼ばれることもある。
水道水にカルキが含まれる理由
水道水の元を辿ると河川や湖の水などに行き着くが、これら原水にはさまざまな病気を招くおそれのある微生物が含まれていることがある。高い殺菌効果を持つ塩素を原材料とするカルキは、そうした微生物を殺菌・消毒するために使用されていた。我々が安心して水道水を飲めるのはカルキのおかげでもあるのだ。
2. カルキによる人体への影響は?

「強い殺菌力」や「塩素」などと聞くと、人体に悪影響はないのかと心配になる方もいるだろう。だが基本的には過度に不安視する必要はない。
健康リスクはないと考えてよい
たとえば東京都水道局では、一般市民向けのQ&Aで「塩素による人体への影響はない」としている。また世界保健機関(WHO)の飲料水水質ガイドラインでは、塩素の含有量を5mg/Lとしているが、これは一生飲み続けても健康を害することはない濃度だという。なお東京都では水道法に基づき0.1mg/L以上、1mg/L以下(水質管理目標設定項目の目標値)を確保できるよう管理しているとのことだ(※1)。
このように日本の水質は厳しく管理されているため、日常的に常識の範囲内で水道水を取り入れる分には健康リスクを心配することはないだろう。ただし水道水に含まれるいわゆる「残留塩素」は、原水の水質などによっても異なる。興味がある方はお住まいのエリアの水道局などで調べてみるとよいだろう。
このように日本の水質は厳しく管理されているため、日常的に常識の範囲内で水道水を取り入れる分には健康リスクを心配することはないだろう。ただし水道水に含まれるいわゆる「残留塩素」は、原水の水質などによっても異なる。興味がある方はお住まいのエリアの水道局などで調べてみるとよいだろう。
髪や肌に影響が出ることはある?
実は塩素には「たんぱく質を破壊する」という作用がある。そのため、微量ではあっても長期間、水道水でシャワーを浴びることによって髪が傷んだり肌が乾燥したりする場合がある。アトピーをお持ちの方が注意したほうがよいといわれるのはこのためだ。もちろん、すべての原因がカルキというわけではないが、たんぱく質を破壊する作用があるということは知っておいて損はないだろう。
「カルキ臭」の原因になることも
健康リスクは心配ないが、味やにおいに影響が出ることはある。いわゆるカルキ臭だ。プールの独特のにおいは塩素臭だが、これをカルキ臭と呼ぶ方も多いだろう。住んでいるエリアや季節、原水の水質などによってカルキの量は変化するが、多くなるほどカルキ臭を感じるようになる。
結局、水道水のカルキは除去すべき?
カルキの最大の目的は水道水の殺菌や消毒である。したがって完全に取り除いてしまうのはNGだ。だが上述のように、髪や肌への影響が気になったりカルキ臭が気になったりする方もいるだろう。また金魚などはカルキを除去してあげないと、水槽内のバクテリアが死んで自然ろ過能力が失われ、水質が悪化して寿命が縮まることもある。こうしたことからも、ケースバイケースでカルキを除去または低減すべきという考え方が増えているのである。
3. 水道水のカルキを除去する方法

水道水に含まれるカルキを少しでも減らしたいと思ったとき、どういった方法があるのだろうか?
浄水器を設置する
もっとも手軽なのが浄水器の設置だ。亜硫酸カルシウムやビタミンC、活性炭といった「ろ材」が水道水中の残留塩素を除去または軽減してくれる。ただし手軽ではあるが、カートリッジの交換などでランニングコストがかかる点は覚えておこう。
塩素除去シャワーヘッドに交換する
髪や肌への影響が心配な方は、塩素除去機能が付いたシャワーヘッドに交換するといった方法もある。同じくカートリッジなどのランニングコストは必要だが、NPO法人日本アトピー協会(※2)が推奨する塩素除去シャワーヘッドなども販売されている。
煮沸や汲み置きといった方法もある
水道水を10分ほど煮沸させる方法や、水道水を汲んで6〜24時間置いておく汲み置きといった方法もある。いずれも昔から知られているやり方だが、10分程度の煮沸ではトリハロメタンと呼ばれる有害物質が増加するなどともいわれており、また汲み置きには時間がかかるなど難点も多い。やはり浄水器を設置したり、塩素除去シャワーヘッドに交換したりする方法がよいだろう。
レモンなどのビタミンCと反応させる方法も
レモンなどに含まれるビタミンCと塩素が反応すると、還元作用により中和されるといわれている。レモン水などはまさに、風味づけだけでなく水道水のカルキ臭を消せるという一石二鳥のアイデアなのだ。ビタミンCを粉末状にした塩素除去剤なども販売されているので、気になる方はぜひチェックしてみてはいかがだろうか?
4. 水道水のカルキを取り除いたあとの注意点

とくに飲用水にする目的で水道水のカルキを除去した場合、注意したいポイントがある。
カルキを除去した水道水は雑菌が繁殖するおそれがある
上述のように、カルキには水道水に含まれる雑菌を殺菌・消毒する作用がある。そのカルキを除去した場合、雑菌が繁殖するおそれがあるので覚えておこう。すぐに飲む場合はそれほど問題視する必要はないかもしれないが、そうでないときは密閉容器に入れて冷蔵庫で保管し、できるだけ早く、遅くとも2〜3日のうちに使い切るようにしよう。
5. 水まわりの白い汚れはカルキ?水垢?

ところで、蛇口など水まわりにできる白く粉っぽい汚れはカルキなのか、それとも水垢なのだろうか?
白い汚れの正体は?
正式名称からも分かるように、カルキには「カルシウム」が含まれている。かつて、このカルシウム成分が乾いて固まり、白い汚れとなって残ったものをカルキと呼んでいた。だが現在の水道水には、粉末の次亜塩素酸カルシウム(つまりカルキ)ではなく、液状の次亜塩素酸ナトリウムが用いられるのが主流だ。このことから、白い汚れは厳密にはカルキとは異なると考えられている。
なお水道水には、主に4種類のミネラル成分(カルシウム・ナトリウム・マグネシウム・カリウム)とケイ酸が含まれている。これらは水が蒸発すると白い物質となって残り、放置すると蓄積され石のように固まってこびりつく。こうなるとスポンジでこするくらいでは落ちない。
本来この白い物質は「水垢」と呼ぶべきだが、水垢は「カルキ」としても広く認知されているという現実があるため、本稿に限り便宜上、これ以降カルキには水垢も含むものとして解説を進めていく。
なお水道水には、主に4種類のミネラル成分(カルシウム・ナトリウム・マグネシウム・カリウム)とケイ酸が含まれている。これらは水が蒸発すると白い物質となって残り、放置すると蓄積され石のように固まってこびりつく。こうなるとスポンジでこするくらいでは落ちない。
本来この白い物質は「水垢」と呼ぶべきだが、水垢は「カルキ」としても広く認知されているという現実があるため、本稿に限り便宜上、これ以降カルキには水垢も含むものとして解説を進めていく。
6. 水まわりのカルキ汚れを落とすにはクエン酸?重曹?

水まわりにできてしまったカルキ汚れを落とすにはどういった方法があるのだろうか?
できて間もないカルキ汚れには研磨効果のある「重曹」
付着して間もないカルキ汚れには、研磨効果の高い重曹と少量の水を混ぜてスポンジにつけ、磨くようにこすってみよう。重曹には研磨作用があるが、粒子が丸く細かいのでこすっても傷がつきにくい。ただし鍋の焦げ落としなどに使うスチールタワシで磨くと、ステンレス製のキッチンシンクやFRPの浴槽などは細かい傷がついてしまうおそれがあるため控えたほうが無難だ。
蛇口や浴室の鏡など頑固なカルキ汚れには「クエン酸」
- 空のスプレーボトルと粉末のクエン酸を用意する
- スプレーボトルに、水200mlに対し小さじ1杯の割合でクエン酸を混ぜる
- 蛇口や浴室の鏡などについたカルキ汚れに吹きつける
- 1時間ほど放置してからスポンジでこする
クエン酸とはレモンや梅干しなどにも含まれる「酸っぱい成分」で、粉末タイプが市販されている。酸性のクエン酸にはアルカリ性のミネラル成分を中和して柔らかくする働きがある。石のように硬いカルキ汚れを落とすのに有効だ。
頑固なカルキ汚れには「パック」が有効
上記の手順で落ちないカルキ汚れは、クエン酸を吹きつけてからキッチンペーパーで覆い、さらにその上からクエン酸を吹きつける。次に、クエン酸を汚れに留まらせ染み込ませるため、食品用ラップでパックをし、1時間ほど放置したのちスポンジでこすってみよう。
電気ケトルややかんの内側のカルキ汚れには「クエン酸水」が効く
- 電気ケトルややかん、電気ポットの満水位置まで水を入れる
- 大さじ3杯のクエン酸を溶かす
- 水を沸騰させたのち、2時間ほど時間をおいてから水を捨てる
- スポンジなどで軽くこすり洗いをし、水ですすぐ
電気ケトルややかん、電気ポットなどの底または側面などにはカルキ汚れがつきやすい。よほどひどい汚れでない限り、上記のやり方で落とせるはずなので試してみてほしい。なおご家庭にクエン酸がない場合は酢でもよいが、においが残るため気にならなくなるまで入念にすすごう。
7. 効率よくカルキ汚れを落とすためのコツ

単にクエン酸水を吹きつけただけでは落ちにくい頑固なカルキ汚れもある。少しでも効率よく落とすには、次のようなポイントを押さえて作業に当たろう。
食用品ラップでパックをする
先ほども紹介したが、蛇口や鏡などの汚れにクエン酸水を吹きつけたあと、キッチンペーパーなどで覆ってさらにスプレーし、最後にラップでパックしてみよう。ラップがクエン酸を汚れに留まらせると同時に蒸発するのを防止してくれる。キッチンペーパーでこするだけよりも汚れが落ちやすくなるはずだ。それでも効果がない場合はクエン酸の濃度を高くしたり、放置時間を長くしたりといった工夫を取り入れてみよう。
水垢用の洗浄剤を使う
水垢除去のほか除菌や防カビ、消臭効果などを兼ね備えた酸性洗剤も市販されている。また電気ケトルやポットの洗浄剤の中には1回分ごとに個包装されている錠剤タイプのものもある。計量する手間が省けるので、こうした商品を使うのもおすすめだ。
8. カルキ汚れを落とす際の注意点

水まわりのカルキを落とす際に覚えておきたい注意点をお伝えする。
電気ケトルやポットの内側は重曹を使わない
電気ケトルやポットの内部にはサビ防止のコーティングがしてある。研磨作用のある重曹で磨くと剥がれてしまうおそれがあるためNGだ。内側はクエン酸水、外側の手垢といった汚れを落とす際は重曹と、使い分けるようにしよう。
メラミンスポンジを使う場合は素材に注意する
メラミンスポンジは洗剤不要で汚れを落とす便利なアイテムだが研磨作用がある。鏡やタイル、ホーローやプラスチックなどには使えるが、樹脂素材の浴槽やステンレス製のシンクなどは傷がつきやすい。目立たない場所で確認してから使うか、使用を避けたほうがよいだろう。
塩素系の洗剤と酸性のアイテムは絶対に混ぜない
漂白剤など塩素系の洗剤と酸性のアイテムを混ぜると有害なガスが発生するため危険だ。この場合の酸性のアイテムとは洗剤のみならず、クエン酸や酢も含まれる。決して混ぜないように気をつけることと、念のため換気をしながら作業することを徹底してほしい。
9. カルキ汚れを防ぐには?

水があるところにはどうしても水垢、つまり本稿でいうところのカルキ汚れはできてしまう。完全に防ぐことは難しいが、蛇口やシンク、浴槽の鏡などはこまめに水分を拭き取ることでカルキ汚れを大幅に減らすことができるだろう。また電気ケトルややかん、ポットなどは定期的にクエン酸を使って洗浄することでカルキ汚れを防ごう。
結論
カルキ(水垢)汚れとは水道水に含まれるミネラル成分が白く固まったもので、蛇口や鏡、電気ケトルなどにできる。よほど頑固でない限りクエン酸や重曹を使って落とせるが、水分を拭き取ることである程度は予防できる。キッチンや浴室などには雑巾を常備し、こまめに拭き取る習慣をつけよう。
(参考文献)
- 1:東京都水道局「水質 _ よくある質問」
https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/faq/qa-13.html - 2:特定非営利活動法人日本アトピー協会
http://www.nihonatopy.join-us.jp/index.html