1. カシューナッツとは

リンゴのような甘い香りを放つカシューアップル。その先端にある勾玉(まがたま)のような見た目をしたカシューナッツは、今ではお酒のおつまみや中華料理をなどさまざまなところで目にすることだろう。原産国は南米ブラジルだが、16世紀にポルトガル人が当時の植民地であるインドのゴアに植えたことをきっかけに、世界中で食べられるようになったといわれている(※1)。
輸出量はベトナムが世界一
現在の主な原産国はインド・ベトナム・ブラジル・アフリカなどである。しかし、カシューナッツを加工する技術はインドやベトナムが持っているため、世界中で作られたカシューは殻のついた状態でこれらの国に運ばれてそこで加工される。日本ではカシューナッツの約99%の輸入をインドとベトナムに頼っており、とくに近年は地理的要因も関係してベトナムからの輸入が多くなっている(※2)。
2. カシューナッツに含まれる主な栄養素とそれぞれの働き

アーモンドやマカダミアナッツ、クルミといったほかのナッツ類に比べるとビタミンB1、鉄分、タンパク質などが豊富である。また、ほかのナッツ類と同様、脂質は多いものの炭水化物が多いのも特徴である。以下は、文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」によるカシューナッツ(フライ・味付け)の100gあたりの栄養素だ(※3)。代表的な栄養素についてはそのあとに詳しく解説する。
カシューナッツの成分一覧
- エネルギー:576kcal
- タンパク質:19.8g
- 脂質:47.6g
- 飽和脂肪酸:9.97g
- 一価不飽和脂肪酸:27.74g
- 多価不飽和脂肪酸:8.08g
- ビタミンK:28μg
- ビタミンB1:0.54mg
- ビタミンB2:0.18mg
- ナイアシン:0.9mg
- 葉酸:63μg
- パントテン酸:1.32mg
- ナトリウム:220mg
- カリウム:590mg
- カルシウム:38mg
- マグネシウム:240mg
- リン:490mg
- 鉄:4.8mg
- 亜鉛:5.4mg
- 銅:1.89mg
- 水溶性食物繊維:0.8g
- 不溶性食物繊維:5.9g
ビタミンB1(※4)
カシューナッツにはビタミンB1が100gあたり0.54mg含まれており、アーモンドの0.05mgよりもかなり多いことが分かる。ビタミンB1は水溶性ビタミンの一種で、グルコース代謝と分枝アミノ酸代謝に関与しており、糖質(炭水化物)をエネルギーに変える働きをする。要するに、身体をしっかりと動かすためには、炭水化物に加えてビタミンB1を十分摂っておく必要があるのだ。
鉄(※5)
鉄分が100gあたり5.4mg含まれており、アーモンドの3.5mgやマカダミアナッツの1.3mgよりも多いことが特徴だ。鉄分は人体に必要なミネラルの一種で、赤血球のヘモグロビンに多く存在している。不足すると酸素を全身へ十分に供給できなくなり、集中力の低下や頭痛、食欲不振などを伴う「鉄欠乏性貧血」を発症する可能性がある。
ビタミンK(※4)
ビタミンKが100gあたり0.028mg含まれている。マカダミアナッツは0.005mg、クルミは0.007mg程度のため、カシューナッツに含まれるビタミンKの量は多いといえる。ビタミンKにはケガをしたときの止血作用や、骨を作るのに必要な「オステオカルシン」というタンパク質の活性化をサポートする働きがある。なお、通常の食事をしていればビタミンKが不足することはない。
糖質(※5)
100gあたり26.7g含と、アーモンド(17.9g)、マカダミアナッツ(12.2g)、くるみ(11.7g)といったほかのナッツ類よりも炭水化物(糖質)が多く含まれていることがわかる。炭水化物は人間が活動するためのエネルギー源の一つであり、欠かすことができない重要な栄養素だ。しかし、摂りすぎると肥満に繋がる可能性もあるため注意が必要である。
オレイン酸(※5)
オレイン酸は一価不飽和脂肪酸の一種であり、血液中のLDL(悪玉)コレステロールを減らす働きがある栄養素だ。一方、HDL(善玉)コレステロールは減らさないため、体内のコレステロール値をよい状態にしてくれる。カシューナッツには100gあたり27.74gの一価不飽和脂肪酸が含まれており、アーモンドやマカダミアナッツよりは少ないものの、くるみの10.26gよりは多く含まれている。
タンパク質(※5)
アーモンドよりは少ないものの、カシューナッツには100gあたり19.8gのタンパク質が含まれており、マカダミアナッツの8.3gやくるみの14.6gよりは多い。タンパク質は筋肉や臓器、皮膚、毛髪などの材料になるほか、体内のホルモンや酵素などの原料にもなる重要な栄養素の一つだ。また、炭水化物と同じく、タンパク質も身体を動かすためのエネルギー源となる。
葉酸(※4)
クルミよりは少ないが、カシューナッツには100gあたり63μgの葉酸が含まれている。これはアーモンドの49μgやマカダミアナッツの16μgよりも多い数値だ。葉酸はDNA や RNAの合成に関わっていて、細胞の増殖と強い関係がある。また、ビタミンB12と一緒に新しい赤血球を作りただす役割も担っている。このことから「造血のビタミン」と呼ばれることもある。
亜鉛(※4)
カシューナッツには100gあたり5.4mgの亜鉛が含まれており、アーモンドの3.1mg、マカダミアナッツの0.7mg、クルミの2.6mgよりも多い。 亜鉛は骨格筋や骨、皮膚など体内のさまざまな場所に分布していて、主な機能には免疫システムのサポートや細胞内の遺伝物質の合成などがある。生理機能を発揮するためには、タンパク質と結合する必要がある。
銅(※4)
銅は100gあたり1.89mg含まれている。アーモンドは0.87m、クルミは1.21mg含まれているため、カシューナッツのほうが銅の量は多い。人の体内で銅は約10種類の酵素の活性化に関わっており、赤血球の合成などサポートしている。ほかにも、エネルギーの生成や鉄の代謝、活性酵素の除去、神経伝達物質の産生などの役割も担っている。
リン・マグネシウム(※4)
カシューナッツには、多量ミネラルであるリン(490mg)やマグネシウム(240mg)も多く含まれている。リンやマグネシウムには、カルシウムと一緒に骨や歯を形成する重要な役割がある。そのほかにも、リンには生命維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)を形成する働きなどがあり、マグネシウムには体内の酵素の働きをサポートする役割などがある。いずれも身体には重要なミネラルだ。
3. カシューナッツの選び方と食べ方

ビタミンB1や鉄分などの栄養素がたくさん詰まったカシューナッツだが、市販されているものにはいくつか種類がある。料理に合わせたものを選んで使うことが大切だ。選ぶ際のポイントと、豊富な栄養素を生かした食べ方を解説するのでぜひ参考にしてほしい。
料理に使うなら「無塩・素焼き」がおすすめ
市販されているものには「無塩」「有塩」および「素焼き」「揚げ焼き」などがある。料理に使うなら、基本的に塩分やカロリーが控えめな「無塩・素焼き」のカシューナッツがおすすめだ。市販のものはもともと「無塩・素焼き」が多いが、一部、有塩のものや揚げ焼きタイプもあるので購入時は確かめよう。
豊富な栄養素を生かすなら炒め物がおすすめ
カシューナッツはおやつとしてそのまま食べても美味しいが、さまざまな食材と合わせても抜群に美味しい。とくにおすすめしたいのが、ニンニクや玉ねぎも使った豚肉とカシューナッツの炒め物。ニンニクや玉ねぎにはB1の吸収をサポートしてくれる「アリシン」が多く含まれており、疲労回復をサポートしてくれる(※6)。白米にも合うため、疲れている日にこそぜひ食べたい料理である。
4. カシューナッツは食べすぎに注意

美味しくて栄養満点であることから、ついつい食べ過ぎてしまうこともあるだろう。しかし、すべての食べ物に共通するが食べ過ぎは禁物である。また、カシューナッツはアレルギー物質の「特定原材料に準ぶるもの21品目」に含まれている。最後に注意点を確認していこう。
カシューナッツの食べ過ぎは肥満の原因に?
脂質が多くカロリーも高いため、食べ過ぎると肥満の原因になる可能性がある。一般的に「おやつは1日200kcalまで(※7)がよい」といわれている。カシューナッツの100g あたりのエネルギー量は576kcalであるため、多くても30g(20~30粒)程度に留めたほうがよいだろう。ゆっくり噛むことで満腹中枢が刺激され、少ない量でもお腹いっぱいになるので食べ過ぎ防止につなげよう。
カシューナッツのアレルギーの心配は?
お伝えしたように「特定原材料に準ずるもの21品目」に含まれており、アレルギーの心配がある食品の一つだ(※8)。しかし、この特定原材料に準ずるものとは、小麦や卵、牛乳のような「特定原材料」よりも症例数や重篤患者数が少ない食品のことである。アレルギーの症例数は少ないといわれているが、一応、頭の片隅に入れておくほうがよいだろう。
結論
おつまみや料理のアクセントとしておなじみのカシューナッツではあるが、実はビタミンB1や鉄分などの栄養素も多く含まれている。またほかのナッツ類より糖質が多いことも関係して、柔らかくて中華料理をはじめさまざまな料理に適している。風味も優しく野菜類と同じように使うことができるので、料理のレパートリーを増やしたいならぜひ使ってみるといい食材だ。
(参考文献)
- ※1:日本ナッツ協会「カシューナッツ」http://www.jna-nut.org/?p=173
- ※2:東京税関「ナッツ類の輸入」https://www.customs.go.jp/tokyo/content/toku0111.pdf
- ※3:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=5_05005_7
- ※4:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
- ※5:厚生労働省「e-ヘルスネット」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
- ※6:公益財団法人長寿科学振興財団「ビタミンB1の働きと1日の摂取量」https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-b1.html
- ※7:農林水産省「おやつの意味を知りましょう」https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/oneday/idea2.html
- ※8:消費者庁「アレルギー表示について」https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/pdf/food_labeling_cms101_200401_02.pdf
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