1. 水飴とは?

水飴(みずあめ)とは、芋やとうもろこしなどに含まれるデンプンを加工して作る液体状の甘味料である。通常の飴玉と異なり水飴は粘り気のある液体となっているため、小袋の個包装ではなく瓶詰め・ボトル詰めでの販売が一般的。また、主な加工の仕方には酸や熱で分解する「糖酸化」と糖化酵素などで分解する「酵素酸化」などがあるが、より一般的なのは「糖酸化」となっている。
砂糖との違いは何か?
水飴と砂糖はさまざまな点で異なる。わかりやすい点で言うと、水飴は液体であるが、砂糖は固体である。また主成分も異なり、水飴は麦芽糖(マルトース)であるが、砂糖はショ糖(スクロース)となっている。麦芽糖はショ糖よりも甘みが穏やかではあるが、食後血糖値の最高点はショ糖よりも高い。ただし、血糖値が上下するスピード自体は、比較的緩やかとなっている(※1)。
水飴が固まらない理由とは?
水飴が液体状を維持している理由は、最初の段階で酵素を使った「液化」という作業を行っているからだ。液化について簡単に説明すると、水飴の原材料になるデンプン(βデンプン)は水と熱を与えるとαデンプンへと変化する。さらにそのαデンプンにアミラーゼを加えることで、デンプンの液体化が起きるのだ(※2)。その上で「糖化」を行い、水飴へと仕上げていくことになる。
水飴の「糖化」と色味や粘り気の違い
水飴には、無色透明のものや茶色透明のものなどいくつか種類がある。このような違いは、水飴の加工方法である「糖化」によって決まる。主な糖化法とそれぞれの特徴は以下のとおりとなっている。
- 酸糖化法:強い酸を使う方法。無色透明で香りや風味がなく、甘みと粘り気が強い水飴ができる
- 酵素糖化法:純粋な酵素を使う方法。無色透明で香りがなく、比較的優しい甘さの水飴ができる
- 麦芽糖化法:天然の酵素を使う方法。茶色透明で香り・うま味が強いが、大量生産には向かない
このように製法によって水飴の品質は変わってくる。なお補足となるが、水飴の粘り気の正体は、デンプンを分解すると生成される「デキストリン」という多糖類の一種となっている。糖化法によりデキストリンの含有量も異なり、最も多いのは「酸糖化法」による水飴となっている。
2. 水飴の基本的な栄養価

文部科学省の「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」には「酸糖化法による水飴」「酵素糖化法による水飴」「還元水あめ」の3種類の栄養価が収録されている。このうち水飴(酸糖化)の100gあたりの栄養価は以下のようになっている(※3)。
水飴(酸糖化)100gあたりの栄養価
- エネルギー:341kcal
- たんぱく質:0g
- 脂質:0g
- 炭水化物:85g
- ビタミン
・βカロテン:0μg
・ビタミンD:0μg
・ビタミンE:0mg
・ビタミンK:0μg
・ビタミンB1:0mg
・ビタミンB2:0mg
・ナイアシン:0mg
・ビタミンB6:0mg
・ビタミンB12:0μg
・葉酸:0μg
・パントテン酸:0mg
・ビオチン:0μg
・ビタミンC:0mg - ミネラル
・ナトリウム:0mg
・カリウム:0mg
・カルシウム:0mg
・マグネシウム:0mg
・リン:1mg
・鉄:0.1mg
・亜鉛:0mg
・銅:0mg
・マンガン:0.01mg
・ヨウ素:0μg
・セレン:0μg
・クロム:0μg
・モリブデン:0μg - 食物繊維:0g
3. 家でできる「代用水飴」の作り方

自宅に水飴がない場合は、「濃い目の砂糖水」で代用することも可能だ。厳密にいうと水飴と砂糖水は成分・製法ともに異なるものだが、代用として使う分には砂糖水でも問題ない。材料は白砂糖と水だけでよく、作り方の手順も簡単となっている。もし代用水飴が必要なら以下のようにして作ろう。
その1.電子レンジを使った代用水飴の作り方
- 耐熱容器に砂糖2、水1の割合で入れる
- ラップをせずに20秒ほど電子レンジで温める
- 取り出したら軽くかき混ぜる
- 上記の2と3を、合計で3回繰り返す
- 粗熱を取ったら代用水飴の完成
その2.鍋を使った代用水飴の作り方
- 鍋に砂糖3、水2の割合で入れる
- (1)の鍋を加熱し、沸騰したら軽く混ぜる
- 弱火でフツフツした状態を2~3分ほど保つ
※ときどき鍋をゆするようにするのがポイント - 火を止めて冷ませたら代用水飴の完成
4. 水飴を使った料理5選!

水飴はお菓子・スイーツに使われるイメージが強いが、普通の料理に使うことも可能だ。難易度が高そうに思えるが、砂糖やみりんの代わりとして使えばよい。麦芽糖化法による水あめを使えば、砂糖などを使うよりも料理にうま味・コクを出すことができる。以下ではおすすめ料理を5つ紹介する。
料理1.大学いも
おやつとしても愛されている大学いもは、老若男女問わず幅広い世代で人気の食べ物だ。適当なサイズに切り、素揚げしたサツマイモを、水飴・醤油・水を熱して作ったタレの中に投入する。しっかりとサツマイモにタレを絡めたら、最後にゴマをふりかけて完成となる。
料理2.小松菜と油揚げの煮浸し
水飴は、おかずにピッタリの小松菜と油揚げの煮浸しに使うこともできる。油を引いたフライパンで油揚げ・小松菜を炒めていき、まずは食材にしっかりと火を通す。そこに出汁・薄口醤油・酒・水飴を加熱して作ったただし汁を加えて、5分ほど煮詰めれば完成となる。
料理3.ゴマ昆布
おにぎりの具材などになるゴマ昆布にも水飴は使える。作り方は鍋に細切りにした昆布・出汁・醤油・みりん・砂糖・水飴を入れ、汁気がなくなるまで弱火で5~15分ほど煮詰めるというもの。汁気が無くなったら火を止めゴマを入れて、昆布にまんべんなく絡める。混ぜ終わったら完成である。
料理4.照り焼きチキン
水飴は、照り焼き料理のツヤ出しも役立つ。作り方は、鶏もも肉を焼き目が付くまで両面を焼く。それから水飴・酒・醤油で作った調味料を入れてから、フタをして中まで火を通す。火が通ったら最後にフタを取り、中火で煮詰めたら完成。ツヤがキレイで美味しそうな照り焼きチキンができる。
料理5.フレンチドレッシング
水飴は、料理の隠し味にも使うことが可能だ。たとえば、ドレッシングに少しだけ(小さじ1/4程度)入れれば、甘みと香りを与えることができる。自家製ドレッシングを作ったり、市販のドレッシングをアレンジしたりする際には、水飴を使ってみるというのもおすすめだ。
5. 市販の人気の水飴を紹介!

市販の水飴はスーパーやECサイトなどで購入することができる。一般的に「無色透明のもの」と「茶色透明のもの」があるので好みや目的で選ぶとよいだろう。また、「たくさんあって困ってしまう」という人に向けて、数ある市販の水飴の中から特に人気のものを三つ紹介しておこう。
その1.ミトク「米水飴 300g」
「米水飴」は、オーガニック食品などを製造・販売しているミトクの水飴である。伝統製法である麦芽糖化法にこだわった茶色透明の水飴であり、どこか懐かしい甘み・香りを感じることができる。その一方でクセが少ないため、砂糖やみりんの代わりとしてさまざまな料理に使うことが可能だ。
その2.明治屋「水あめ 310g」
「水あめ」は、食料品の輸入・製造・販売などを行っている明治屋の水飴である。高麦芽糖を使った無色透明の水飴であり、甘みを抑えたマイルドな味が特徴となっている。また、料理に色がつかないため、料理のツヤだしやスイーツなどにも使うことができる。
その3.清浄園「水飴 700g」
「水飴」は、韓国の食品メーカーである清浄園(チョンジョンウォン)が販売している水飴である。ほかの水飴に比べると粘り気が少ないことが特徴であり、さまざまな料理に使うことができる。また、ほかの水飴よりも大容量のものが多く、リーズナブルな価格であることも嬉しいポイントだ。
結論
水飴が固まらない理由は、液化・糖化などの加工をしているためであった。また、糖化の方法によって味・香り・粘り気が異なる。基本的には「無色透明の水飴」と「茶色透明の水飴」に分けられるため、料理・目的・好みなどに合わせて使ってみるといいだろう。
【参考文献】
- ※1:静岡県総合教育センター「糖の種類によるマウスの血糖量変化の違い」
https://gakusyu.shizuoka-c.ed.jp/science/sonota/ronnbunshu/063091.pdf - ※2:長瀬産業株式会社「酵素糖化法によるぶ どう糖製造」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/6/9/6_9_523/_pdf/-char/ja - ※3:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/
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