1. インドのバター「ギー」

インドで食べられているGhee(ギー)は、発酵バターを溶かしてタンパク質などの沈殿物を取り除いたものだ。インド、中近東、アフリカなどの広い地域で食べられており、古代からギーのようなバターが存在していたといわれている。
■インドの気候と乳の生産
日本人が一般的に想像する乳牛は、北海道を始めとする涼しい地域で飼育されているイメージがあるかもしれない。インドは、高温多湿の気候が特長だが、現在では農業のシステムが確立されたこともあり、牛の飼育が盛んである。とくに、水牛がたくさん飼育されている。水牛は暑い環境でも乳量が多い特徴があり、インドでは水牛の乳の生産量が多いのだ。
■腐敗しにくい
日本で一般的に使われているバターは冷蔵品だ。このようなバターは、高温多湿なインドでは腐敗が進みやすい。バターが腐ってしまう原因には、脂肪分以外のタンパク質などの乳成分が関係している。そのため、インドでは乳成分を取り除いたギーが利用されるのだ。脂肪だけを取り出したギーは、腐敗しにくい。
■作り方
バターを弱火で溶かしておくと、白い層と黄色の層に分離する。白い層はタンパク質などの成分であり、黄色の層は脂肪分である。
脂肪の層をさらに濾して乳成分を取り除く。
脂肪の層をさらに濾して乳成分を取り除く。
■使い方
インドでは、ギーを飲み物に混ぜて利用することが多く、牛乳に紅茶の葉を煮出したチャイにも加える。飲み物のほかに、ギーをチャパティやカレーに掛けることもある。食用以外でも使うことがあり、皮膚に塗って化粧品や薬の代わりにする。
2. モンゴルのバター「シャル・トス」

モンゴルの遊牧民は、羊、ヤギ、牛、ラクダ、馬などを飼育し、乳を利用して生活している。遊牧民の暮らしに、乳は欠かせないものだ。そのまま飲むだけでなく、乳製品も作られている。
シャル・トスは「黄色い油」を意味する言葉で、乳脂肪を集めたバターオイルだ。料理に使うほかに、火をともして明かりにも使われる。
シャル・トスは「黄色い油」を意味する言葉で、乳脂肪を集めたバターオイルだ。料理に使うほかに、火をともして明かりにも使われる。
■シャル・トスの作り方
モンゴルで乳を加工するときは、まず乳を発酵させ、乳脂肪であるウルムと脱脂乳のボルソンスーに分ける。ウルムからは、シャル・トス、ツツギー、ツオブと呼ばれる乳製品が作られていくのだ。その中のシャル・トスは、ウルムを加熱して水分を蒸発させたバターオイルである。
3. ヤギ乳と羊のバター

世界で生産されている乳はほとんどが牛乳だ。ヤギ、羊の乳も利用されるが、わずかな量である。ヨーロッパでは、ヤギや羊の乳をチーズやヨーグルトに利用するが、日本ではあまり馴染みがない。これには、日本で飼育されている数が少ないことも関係しているのだ。
■ヤギのバター
ヤギのバターは、世界でもあまり作られていない。その理由に、ヤギの乳に含まれる脂肪球のサイズが小さいため、脂肪を集めてバターを作りにくいからといわれている。しかし、全く作られていないわけではなく、日本でヤギ乳からバターを作っている農場もあるのだ。ヤギのバターは、乳1Lから20gしかできないそうだ。
■羊のバター
羊の乳は濃厚で、ヨーグルトにすると美味しいといわれている。ヨーグルトのほかにもバターが作られており、濃厚な風味を味わえるためヨーロッパでは好む人も多いようだ。
結論
世界には日本に馴染みのない珍しいバターがある。インドのギーは、気候に合わせて腐敗しにくくした澄ましバターだ。モンゴルの
シャル・トスは、食用のほかに明かりにも使われる。牛乳から作られるバターの生産量は多いが、ヤギや羊からも作られている。
珍しいバターに出会ったら、是非食べてみたいものだ。
シャル・トスは、食用のほかに明かりにも使われる。牛乳から作られるバターの生産量は多いが、ヤギや羊からも作られている。
珍しいバターに出会ったら、是非食べてみたいものだ。