1. 魚卵のような形状と食感の「とんぶり」

そもそも、耳慣れないとんぶりとはどんな食材なのであろうか。2017年に農林水産省により「GI(地理的表示)」に登録されたとんぶりは、秋田が全国各地にまた世界に向けて発信している食材でもある。詳細を見てみよう。
ほうきを作る植物から生る実
とんぶりは、ほうきとなる「ホウキギ」と呼ばれる植物の実である。ホウキギの種を乾燥させ、茹でて果皮を除去したものがとんぶりとして販売されている。平安時代に日本に到来したといわれるホウキギは、秋田県の大館市周辺では江戸時代からその実を食する習慣があった。とくに、その昔の秋田県では、飢饉の時代には大切な栄養源であったようだ。「とんぶり」という摩訶不思議な名の由来は、「唐伝来のぶりこ(ハタハタの卵)」にあるという説が有力である。食材としてだけではなく、民間療法にも用いられていた大変有益な植物の実なのである。
別名は「畑のキャビア」、その食感とは
とんぶりは、「畑のキャビア」とか「山の数の子」などの別称を持つ。その名の通り、1~2mmほどの実はプチプチとした食味と優しい味わいが特徴で、ことのほか秋田の人には愛されているのである。くせがないため、ごはんや豆腐と食べたりキュウリやツナなどと合わせたり、さまざまな食べ方がある。2017年にGI登録されてからは知名度も全国区となり、イタリアンなどの料理にも飾りのようにのせられることが増えてきた。
2. とんぶりの小さな実に詰まるさまざまな栄養素

とんぶりの小さな実は、昨今話題のスーパーフード「キヌア」と比較されることも多い。実際、とんぶりにもその形状からは想像もつかない栄養が詰まっているといわれている。とんぶりの栄養について見てみよう。
キヌア同様アカザ科に属すとんぶり
なにかと比べられることが多いキヌアととんぶりであるが、実際に同じアカザ科に属す植物である。しかし、キヌアにはとんぶりが持つプチプチとした食感はない。キヌアが、いかにも南米原産といった穀物風の味わいなのに対し、とんぶりは日本食材らしい繊細さが特徴といえるだろう。
とんぶりの栄養とは
そのとんぶりは、優しい姿に似合わずさまざまな栄養を有している。まず、食物繊維はわかめやゴボウなどのほかの食材を凌駕するほどの量(100g中7,1g)が含まれている。また、抗酸化作用があるβカロテンやαトコフェノールも豊富である。カリウム、マグネシウム、リン、カルシウムといったミネラルも豊富であるうえ、脂質の代謝を促進するサポニンの存在も認められている。ビタミンA、ビタミンB、骨の形成に必須のビタミンK、美容に有益なビタミンEなども有しており、まさにサプリ顔負けのスーパーフードといえるのである。日々の食卓に少しずつ加えれば、不足しがちな栄養を補ってくれる心強い食材となることまちがいない。とんぶりの特徴である淡白さは、継続的に摂取するにもメリットとなるのである。
とんぶりのカロリーは?
とんぶりのカロリーは、100gあたり90kcalとされている。しかし、粒状のとんぶりはそればかりを100gも食すことは稀なので、せいぜいがスプーンに1~2杯といったところだろう。それならば、カロリーも10~20kcalといったところである。カロリーオーバーを気にする人も、とんぶりに含まれる栄養を考慮すれば摂取するほうが理に適っていることはいうまでもない。
3. とんぶりはどうやって食べるのか

秋田県ではスーパーでも購入可能なとんぶり、その他の地域でも現在ではオンラインなどで買うことができる。とんぶりは無味といってもよい淡白さが特徴であり、あらゆる食材と相性がよいのがありがたいところである。同じくスーパー食材のキヌアはスープなどに入れて食べることが多いが、とんぶりもみそ汁などの汁物に入れることができる。また、納豆やしらすとともに食してもよし、丼物にのせてもよし、しょうゆやポン酢と合わせて美味しく食べることができる。
結論
とんぶりは、栄養面においてもカロリー面においても、現代の食生活には非常に適している食材といえるだろう。小粒の実ながらバランスがとれた強力な栄養があるとんぶりは、今後ますます注目されることだろう。また、その食べやすさから毎日の食卓にも加えやすいというメリットもある。秋田が誇るスーパーフードとんぶりを、ぜひ日常的に摂取してほしい。
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