1. スイカの基本的な栄養価
「日本食品標準成分表」には「赤肉種(果肉が赤いスイカ)」と「黄肉種(果肉が黄色いスイカ)」の2種類の栄養価が収録されている。ここではより一般的な「スイカ(赤肉種)」の100gあたりの栄養価を確認しておこう。
スイカ(赤肉種)100gあたりの栄養価
- エネルギー:41kcal
- たんぱく質:0.6g
- 脂質:0.1g
- 炭水化物:9.5g
- 脂肪酸
・飽和脂肪酸:0.01g
・一価不飽和脂肪酸:0.02g
・多価不飽和脂肪酸:0.03g - ビタミン
・βカロテン:830μg
・ビタミンD:0μg
・ビタミンE:0.1mg
・ビタミンK:0μg
・ビタミンB1:0.03mg
・ビタミンB2:0.02mg
・ナイアシン:0.2mg
・ビタミンB6:0.07mg
・ビタミンB12:0μg
・葉酸:3μg
・パントテン酸:0.22mg
・ビオチン:0.9μg
・ビタミンC:10mg - ミネラル
・ナトリウム:1mg
・カリウム:120mg
・カルシウム:4mg
・マグネシウム:11mg
・リン:8mg
・鉄:0.2mg
・亜鉛:0.1mg
・銅:0.03mg
・マンガン:0.03mg
・ヨウ素:0μg
・セレン:0μg
・クロム:0μg
・モリブデン:1μg - 食物繊維:0.3g
(・水溶性食物繊維:0.1g)
(・不溶性食物繊維:0.2g)
2. スイカに含まれる特徴的な栄養素
スイカは90%程度が水分であるが、炭水化物・βカロテン・ビタミンB群・ビタミンC・カリウムなどの栄養素も含んでいる。そこでこれらの栄養素の働きについても詳しく確認しておこう。
その1.炭水化物
スイカは、炭水化物を100gあたり9.5g含んでいる。炭水化物は人間にとって重要なエネルギー源の一つであり、特にブドウ糖に変換されて脳・神経組織などを動かすためのエネルギー源になる(※2)。なお、エネルギー源には炭水化物のほかにたんぱく質や脂質もあるが、スイカはこれらの含有量が少ない。そのため、カロリーは100gあたり41kcal程度と比較的低めとなっている。
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その2.βカロテン
スイカは、緑黄色野菜の基準(100gあたり600μgのカロテンを含む)を満たすくらいβカロテンを含んでいる。βカロテンはカロテノイド(カロテン類)の一種であり、体内では目や皮膚の機能を保つための「ビタミンA」に変換される。また、βカロテンは抗酸化作用を有しており、体内の活性酸素の発生を抑えたり、取り除いたりする働きも持つとされている(※3)。
その3.ビタミンB群
スイカは少量ではあるが、ビタミンB1、B2、ナイアシンなどのビタミンB群を含んでいる。ビタミンB群の働きはそれぞれ異なるが、例えば、ビタミンB1やB2はエネルギーの産生などに関与している。また、ナイアシン・葉酸・パントテン酸なども、酵素として身体の機能を正常に保つために働いている(※2、3)。スイカにはこのようなビタミンB群が含まれている。
その4.カリウム
スイカは、ミネラル類の一種であるカリウムを含んでいる。カリウムの主な働きは、細胞の浸透圧を調整するというもの。また、これに伴い体内に不要なナトリウム(塩分)を排出するという役割がある。「健常者が普通の食生活を送っていればカリウムが不足することはまずない」とされているが、ナトリウムの摂取量が多い日本人にとっては重要な栄養素の一つとされている(※2、3)。
3. スイカに含まれる機能性成分
スイカは炭水化物やβカロテンなどの栄養素が豊富であるほか、実は機能性成分である「リコピン」「シトルリン」を含んでいることが明らかになっている(※4)。そこでスイカに含まれるこれらの機能性成分についても確認しておこう。
その1.リコピン
リコピンは、βカロテンと同じくカロテン類の一種である。赤色の天然色素であるリコピンは、トマトに多く含まれることで有名だが、実は赤肉スイカにも多く含まれている(※4)。そんなリコピンは抗酸化作用を有しており、体内の活性酸素の発生を抑えたり、取り除いたりする働きがあるといわれている(※3)。
その2.シトルリン
シトルリンは遊離アミノ酸の一種であり、スイカに多く含まれている機能性成分の一つである。そんなシトルリンには「血管拡張」をはじめとするさまざまな健康効果が期待されているが、現在のところ有効性があるかどうかは明確にはわかっていない(※4)。そのため、今後の研究などに期待が寄せられている。
4. 赤肉種と黄肉種の栄養価の違い
スイカには果肉が赤い「赤肉種」のほかに、果肉が黄色い「黄肉種」というものもある。この2つの栄養価は基本的にほぼ同じであるが、βカロテンの含有は大きく異なる。赤肉種の含有量は100gあたり830μgであるが、黄肉種の含有量は0μgであり全く含まれていない。そのため、赤肉種のほうが抗酸化作用を有するβカロテンを含むため、栄養面では優れているといえる。
5. スイカは1日にどれくらい食べていい?
スイカはビタミン類・ミネラル類・リコピン・シトルリンなども含んでおり、栄養面では優れているといえる。しかし、スイカの食べ過ぎはほかの食品と同じでNGとされている。そこでなぜ食べ過ぎがNGなのか、また1日にどれくらい食べていいのかなどを確認しておこう。
スイカの食べ過ぎがNGの理由
夏の時期の水分補給などにも役立つスイカではあるが、ほかの食品と同じで「食べ過ぎはNG」とされている。この理由はいくつかあるが、昔から「天ぷらとスイカの相性は悪い」といわれているとおり、スイカを食べ過ぎると胃腸が冷えて消化機能が落ちてしまうからだ。この他にも「糖質過多になりやすい」「身体が冷えてしまう」などの理由から、スイカの食べ過ぎはNGとされている。
1日あたりの適量は200g程度
スイカの食べ過ぎはNGではあるが、1日にどれくらい食べていいのか明確な上限量は決められていない。しかし、農林水産省などが策定した「食事バランスガイド」によれば(※5)、スイカなどの果物は1日あたり「2SV(200g)」を目標にするよう定めている。だいたいの目安だが、スイカの場合は3cm角のもの6個程度が200g程度に相当する。
6. スイカの栄養面に関するよくある質問
ここまでスイカの栄養価・栄養素を詳しく解説してきた。しかし、まだスイカの栄養面で気になることがある人もいるだろう。そこで最後にスイカの栄養面に関するよくある質問・疑問に回答する。
Q1.スイカの糖質量はどれくらいなの?
「日本食品標準成分表」には、糖質量は記載されていない。しかし、炭水化物量が9.5g、食物繊維量が0.3gであることから、100gあたりの糖質量は9.2gと算出できる。みかんの糖質量が11.0g、りんごの糖質量が14.1gであることを考えると、スイカの糖質量は低めであるといえそうだ。
Q2.スイカの種にはどんな栄養素がある?
日本ではスイカの種は捨ててしまうことが多いが、実はスイカの種には炭水化物・たんぱく質・脂質といった三大栄養素をはじめ、ビタミン類・ミネラル類・食物繊維も多く含まれている栄養の宝庫となっている。特にオメガ6脂肪酸の一種である「リノール酸」は100gあたり25000mg含んでいる(※1)。カロリーが高いことには注意すべきだが、煎ったりして食べるのもいいかもしれない。
結論
みずみずしくて美味しいスイカは、実は炭水化物やβカロテンなどの栄養素も多く含んでいる。ただし、水分量が多いため食べ過ぎると身体が冷えたり、身体を壊したりしてしまうかもしれない。「食事バランスガイド」によれば、1日あたりの果物の目安量は200gとなっているので、この範囲内で美味しく食べるようにしよう。
【参考文献】
- ※1:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/ - ※2:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf - ※3:e-ヘルスネット「トップページ」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/ - ※4:青森県産業技術センター「スイカ|機能性素材情報」
http://www.21aomori.or.jp/kinou/sozai/post-46.html - ※5:農林水産省「「何を」「どれだけ」材料と料理区分」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/division.html
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