1. カマ鉾とは

日本は島国。四方を海で囲われた立地である。そんな日本は古くから、豊富な水産資源の恩恵を受けてきた。いまのように冷蔵技術も運送技術も発達していなかったころ、新鮮な魚を全国各地に運ぶのは至難の技。そこで誕生したのが、魚肉を加工する技術である。ヨーロッパで生ハムなどのシャルキュトリーが発達したのと同じ原理だ。
カマ鉾の種類
ひとくちにカマ鉾といっても、全国各地津々浦々、さまざまなカマ鉾が存在する。蒸しカマ鉾、焼きカマ鉾、蒸し焼きカマ鉾、笹カマ鉾などがその一例だ。ポピュラーな蒸しカマ鉾は、江戸時代末期にはすでに存在していたといわれている。初期のカマ鉾はいまのような板ではなく、竹などにすり身をつけて焼いたものが多かったようだ。
カマ鉾の由来
カマ鉾は、古くはもっと細身の形状であった。その姿が蒲という植物の穂の形に、その蒲の穂は鉾に似ていたことから、蒲鉾(かまぼこ)と呼ばれるようになったという説がある。
2. カバ焼きとは

カバ焼きとは、甘辛いタレをつけながら焼く調理技術を指し、多くは魚介類のメニューにつけられる料理名だ。なかでもうなぎのカバ焼きは、カバ焼き界の中心的な存在。そのほか、さんまやイワシなどを使い、家庭料理として作られることも多い。
カバ焼きの由来
うなぎは、日本で古くから食べられてきた魚のひとつでもある。そもそもはぶつ切りのまま骨に沿って、串刺しにして焼いていたが、その姿が蒲の穂に似ていることから、蒲焼き(カバ焼き)と呼ばれるようになった。背開きや腹開きにして食べられるようになったのは、江戸時代になってからだ。関西風、関東風が生まれたのもこのころだそうだ。
3. カマ鉾とカバ焼きの違い

カマ鉾もカバ焼きも蒲の穂に見た目が似ていることから、この名がついた。ともに同じルーツをもつということになる。しかし実際は似て非にあるもの。カマ鉾は、魚のすり身を加工したものであるし、カバ焼きは甘辛いタレをまとわせながら、仕上げる調理法のことである。見た目が蒲の穂に似ていることから、両者ともにその名がつけられたとされているが、現在流通しているものは、すでに当時のような形状ではない。
4. 蒲の穂とは

ちなみに蒲の穂とはどんなものなのだろうか?蒲の穂の花粉は、古くから生薬としても活用されてきた。漢方薬では蒲黄と呼ばれている。沼地や池など、浅い水辺に自生する植物で、その見た目はちくわやソーセージ、フランクフルトのようでもあり、非常に個性的。
大量の綿毛
じつはこの蒲の穂部分を揉むとぶわっと広がる。これは穂の中に含まれている綿毛によるもの。蒲は、この綿毛を飛ばすことで子孫を残しているのだ。昔は、この穂を潰して子ども達がよく遊んだそう。ちなみにこの蒲の綿毛、古くは布団の中身にも使われていたようで、そのことから蒲団と書くこともあるそうだ。
結論
カマ鉾、カバ焼き、蒲団と蒲の穂が名前のルーツになっているものが多いことから、蒲は日本では非常にポピュラーな植物であったと考えられる。いまではあまり目にすることはないが、古来の日本ではあちらこちらで見受けられたのかもしれない。さまざまな食べ物の由来を調べることで、過去の日本の姿を垣間見ることができそうだ。
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