1. フードポルノとは

美味しそうな料理や食材をSNSにアップする際につけられるハッシュタグとして使われているフードポルノ。画像を見る人が美味しそう!とかお腹が空く!と感じるようなシズル感ある写真が、ある種の欲求を満たすといった意味でフードポルノと名付けられたと推測される。フードポルノが登場したのは、ここ数年ではない。英語圏ではすでに80年代に登場していたといわれている。ただ、時代によってその意味合いには違いがあったようだ。数年前には、食事自体よりも写真を撮ることを楽しんでいるのでは?と料理人たちが苦言を呈するというトラブルになったこともある。
飯テロとフードポルノ
英語圏で頻繁に使われているのとは対照的に、日本ではそれほど広まりを見せていないフードポルノ。これはポルノという言葉のもつ意味合いが、日常生活においては少々、ハードすぎるという点が大きな原因であろう。日本にもフードポルノに似た意味合いをもつ言葉がある。飯テロである。とくに夜中にアップするものに対して使われることが多いが、こちらも空腹感を煽るほど旨そうな写真に対して使われている。
英語圏のフードポルノ
実際にInstagramでタグ検索してみると執筆現在で、その投稿数は2.4億件。まるで関係のなさそうなものもあがっているが、確かにお腹が空きそうな写真も多い。ただ一貫性があるわけではなく、写真のクオリティー、フードの種類、画角などは千差万別。別々の人があげているのだから当然といえば、当然である。
2. フードポルノと新しいエンタメ

デジタル時代を迎え、人々は新しいエンターテイメントを手に入れつつある。フードポルノを観る人は、SNSを開くだけで多くの人がアップする食の写真を楽しむことができる。さらに欲求を満たしたり、快感を感じることもあるだろう。これがいま注目を集めているASMRである。Autonomous Sensory Meridian Responseの頭文字をとったもので、直訳すると自律感覚絶頂反応。視覚や聴覚を通して、不思議な快感が得られるといった意味合いで使われている言葉だ。実際にはフードポルノもASMRのひとつと考えられる。
ASMR動画
ASMRに特化した動画はいま、注目を集めている。その視聴数は若い人を中心に伸びているらしい。よく知られているのが咀嚼音のASMR動画。韓国の人気フードをただ食べまくり、咀嚼音だけが流れる動画に火がつき、いまでは数多くの咀嚼音動画が公開されている。実際にイヤフォンをして聞いてみるとまるで自分が食べているような錯覚に陥る。経験との結びつきが不思議な快感に結びつくのでは?と考える研究者もいるようだ。
韓国発モクパン
モクパンは、人が美味しそうに食べる動画のこと。こちらも新しいエンタメのひとつであろう。数年前から韓国でネット配信されるようになり、人気を集めている。視聴者は一緒に食べている気分になったり、美味しそうに食べているのを見ることで自身の食欲を満たしたりするようだ。喋ることはなく、黙々と食べ続ける動画が多いので、言語が通じなくても楽しむことができる。さらに別の国の食事情を知ることができるという利点もあるようだ。
3. フードポルノと日本

フードポルノは、すでに欧米では一般化している現象だ。日本ではフードポルノという言葉自体はポピュラーとはいえないが、その精神や考え方は広まっているように感じる。その証拠に飯テロという言葉は広く知られているし、SNSに食事の写真をアップしている人も多い。言葉の違いだけで、フードポルノが広がりを見せていると言い換えることもできるかもしれない。
上手な付き合い方
SNSやネット社会とは、上手な付き合い方が求められる。ただ、我々が生きてきた過去とは比較にならないほど、社会は急速にデジタル化している。トレンドがSNSやネットを通じて生まれるのは日常茶飯事だし、スマートフォンはなくてはならない存在になっている。そのなかでいかにネット社会にふり回されずに、有益な情報をキャッチアップし、思考の糧にするかという命題に、各々が向き合う必要があるのかもしれない。また、ネットリテラシーを日々、更新していくことも必要になってくる。
善悪以外の答え
フードポルノはもちろん、新しいエンタメには賛否両論あって当然である。さまざまな意見を交換し合うことができる社会こそ、健全である。フードポルノを観ることや撮ることで料理熱が上がる人もいるだろうし、やりすぎは敬遠してしまうという人もいるだろう。自分にとってちょうどいい距離感を見つけながら楽しむのが正解だ。
結論
フードポルノとは、欧米で親しまれている言葉で、食欲をかき立てるような写真や動画のことである。日本でいうところの飯テロに近いイメージだ。大衆を相手にするのではなく、コアな層へのアプローチを得意としているところは、新しいエンターテイメントのひとつと捉えることもできそうだ。まずはどんなものなのか、ハッシュタグ検索してみるのも面白いかもしれない。
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