1. さくらんぼの種に毒があるって本当?

「さくらんぼの種に毒がある」という話を、テレビやネットなどで見聞きしたことがある人もいるだろう。さくらんぼの種には「アミグダリン」(※1)という物質が多く含まれている。人が、アミグダリンを摂取しても少量なら大きな問題は起こらない。また、アミグダリン自体に毒性はないが、消化管内で加水分解されて、青酸(シアン化水素)と呼ばれる有害物質を発生させる。
シアン化水素を高濃度、または多量に摂取すると細胞のエネルギー産生が阻害され、頭痛やめまい、嘔吐といった症状が現れる。これを聞くとさくらんぼの果実を食べることも怖くなってしまいそうだが、アミグダリンは果実が成熟するにつれ消失していくため、熟れた果実を食べても毒の心配はない。
さくらんぼの種と同様、毒がある植物
ビワやあんず、もも、すもも、梅などさくらんぼと同じバラ科サクラ属の植物は、種や未熟な果実にアミグダリンが含まれている。また、バラ科リンゴ属であるリンゴの種にもアミグダリンが含まれる。知っておくと安心だ。
アミグダリンはビタミンの一種ではない(※2)
一部の情報では、アミグダリンを「ビタミンB17」と称しているものがある。しかし、アミグダリンは生体の代謝に必須ではなく、欠乏症も報告されていない。そのためビタミンの定義には該当しないと明確に否定されている。健康によい成分ではないため、摂取は避けよう。
2. さくらんぼの種を食べると毒で死んでしまうの?

さくらんぼの種に毒があることは前項で紹介した。わざわざ種を好んで食べる人はいないとは思うが、うっかり飲み込んでしまうという可能性はあるだろう。とくに小さな子どもをもつ親は、気がかりかもしれない。さくらんぼの種を誤って食べてしまった場合、毒は命に関わるのだろうか。
結論からいうと、さくらんぼの種を誤って1つ食べてしまった程度ならば、命に関わることはない。日本食品分析センターのシアン化合物に関する資料によると、「シアンイオンは空気中濃度25mg/m3から中毒症状が現れ、2500mg/m3 で致死的となる」「青酸カリ(シアン化カリウム)の経口致死量は、ヒトで0.15~0.3g」(※3)とある。さくらんぼの種に含まれる毒が、具体的に何個分で致死量に値するということは記されていないものの、粉状に砕いて大量に摂取しない限りは、命には関わるほどの問題にはならないようだ。
3. さくらんぼの種は有毒!食べ過ぎには要注意

これまで紹介したことと注意点をまとめよう。
1.さくらんぼの種には毒が含まれる
さくらんぼの種に含まれる「アミグダリン」という成分がシアン化水素と呼ばれる有害物質を発生させる。果実自体に毒性はなく安心して食べられる(※1)。
2.毒によって引き起こされる症状
シアン化水素により、頭痛、嘔吐、めまいなどの中毒を引き起こすことがある(※1)。
3.さくらんぼの種をひとつ食べても死なない
さくらんぼの種の毒は、誤って1つ飲み込んでしまった程度ならば、命に関わるほどの影響はない。
さくらんぼを食べるときに注意すること
さくらんぼの種の毒を死亡するほど摂取することは通常考えられないが、種の摂取は避けよう。また、種を砕いたり、粉末状にしたりすれば、大量に摂取してしまう可能性があり危険である。
結論
今回は、さくらんぼの種に含まれる毒について紹介した。毒が含まれているのは、さくらんぼの果実ではなく「種」。果実に毒はなく、美味しく食べられるので安心してほしい。さくらんぼを食べる際は、必ず種は出すように注意していただきたい。
(参考文献)
※1 国立健康・栄養研究所
「健康食品」の安全性・有効性情報
「健康食品」の安全性・有効性情報
※2 農林水産省 知識があればこわくない!天然毒素
※3 日本食品分析センター シアン化合物について
この記事もCheck!