目次
1. 人参とは?

人参とは、セリ科ニンジン属の植物の一種。非常にポピュラー野菜の一つであり、サラダ・炒め物・焼き料理・鍋料理・煮物・煮込み料理など、和食・洋食を問わず幅広く使われている。また、市販されている人参には金時人参やミニキャロットなどいくつかあるが、主流の品種は全長15~20cm程度の「五寸人参」というもの。五寸人参は甘みが強くて、人参臭さも感じにくいという特徴がある。
2. 人参の基本的な栄養価

「日本食品標準成分表」には、「にんじん(根/皮つき/生)」をはじめ、根部分/葉部分、皮なし/皮あり、生/ゆで/冷凍/油いためなど、細かく人参の栄養価が収録されている。そんな中から、まずは基本となる「にんじん(根/皮つき/生)」の100gあたりの栄養価を確認しておこう。
人参(根/皮つき/生)100gあたりの栄養価
- エネルギー:35kcal
- たんぱく質:0.7g
- 脂質:0.2g
- 炭水化物:9.3g
- 脂肪酸
・飽和脂肪酸:0.02g
・一価不飽和脂肪酸:Tr
・多価不飽和脂肪酸:0.06g - ビタミン
・βカロテン:6900μg
・ビタミンD:0μg
・ビタミンE:0.4mg
・ビタミンK:17μg
・ビタミンB1:0.07mg
・ビタミンB2:0.06mg
・ナイアシン:0.8mg
・ビタミンB6:0.1mg
・ビタミンB12:0μg
・葉酸:21μg
・パントテン酸:0.37mg
・ビオチン:-
・ビタミンC:6mg - ミネラル
・ナトリウム:28mg
・カリウム:300mg
・カルシウム:28mg
・マグネシウム:10mg
・リン:26mg
・鉄:0.2mg
・亜鉛:0.2mg
・銅:0.05mg
・マンガン:0.12mg
・ヨウ素:-
・セレン:-
・クロム:-
・モリブデン:- - 食物繊維:2.8g
(・水溶性食物繊維:0.7g)
(・不溶性食物繊維:2.1g)
3. 人参に含まれる特徴的な栄養素

人参は代表的な「緑黄色野菜」として知られており、そのβカロテンの含有量は野菜の中でもトップクラスとなっている(※1)。また、ビタミンB群やカリウム、食物繊維などの含有量も多い。そんな人参の特徴的な栄養素について詳しく確認しておこう。
その1.βカロテン
人参は、100gあたりβカロテンを6900μg含んでいる。これは、ほかの緑黄色野菜であるほうれん草(4200μg)や小松菜(3100μg)よりも圧倒的に多い(※1)。βカロテンはビタミンAの前駆体であり、体内ではビタミンAに変換されて目や皮膚の健康を保つために働く。また、βカロテンには抗酸化作用という働きもあり、活性酸素の発生を抑制したり、取り除いたりするという(※2)。
その2.ビタミンB群
人参は、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、パントテン酸といったビタミンB群も含んでいる。ビタミンB群の体内での働きはそれぞれ異なるが、例えば、ビタミンB1がエネルギー代謝に関与しているように、いずれも身体の健康を保つのに欠かせない。また、体内ではほとんど合成できないため、人参のようなビタミンB群を含む食品から摂取する必要がある(※2)。
その3.カリウム
人参は、100gあたりカリウムを300mg含んでいる。カリウムは、体内のナトリウムを排出して、細胞などの浸透圧を調整する働きがある栄養素である。そのため、ナトリウム(塩分/食塩)の摂取量が多い日本人にとって重要な栄養素とされている(※2)。健康な人が通常の生活を送っている分には不足する可能性は低いとされているが(※3)、人参などからこまめに摂るようにしよう。
その4.食物繊維
人参は、100gあたり食物繊維を2.8g(水溶性食物繊維0.7g、不溶性食物繊維2.8g)含んでいる。食物繊維は体内で消化・吸収されないものの、整腸作用や血糖値の上昇を抑制する作用などがあることから「第6の栄養素」として注目を集めている。一般的に「現代人には不足しがち」といわれているので、成人男性(18~64歳)の1日あたりの目標量である21g以上を目安に食物繊維を摂ろう。
4. 調理方法で変化する人参の栄養価

「日本食品標準成分表」には、生の人参の栄養価だけでなく、調理した人参料理の栄養価も収録されている。そこで人参料理の主な栄養価を以下にまとめておく。なお、以下の数値はあくまで料理ごとの100gあたりのものであり、「重量変化率」は考慮していない。
人参料理のカロリー・三大栄養素・糖質量
- ゆで(皮なし):カロリー28kcal、たんぱく質0.7g、脂質0.1g、炭水化物8.5g(糖質5.7g)
- ジュース(缶詰):カロリー29kcal、たんぱく質0.6g、脂質0.1g、炭水化物6.7g(糖質6.5g)
- 油炒め(皮なし):カロリー103kcal、たんぱく質1.1g、脂質6.4g、炭水化物12.4g(糖質9.3g)
- 素揚げ(皮なし):カロリー87kcal、たんぱく1.0質g、脂質3.5g、炭水化物13.9g(糖質12.8g)
- グラッセ:カロリー53kcal、たんぱく質0.7g、脂質1.4g、炭水化物12.7g(糖質11.7g)
人参料理の主なビタミン・ミネラル・食物繊維
- ゆで(皮なし):βカロテン7200μg、カリウム240mg、食物繊維2.8g
- ジュース(缶詰):βカロテン3800μg、カリウム280mg、食物繊維0.2g
- 油炒め(皮なし):βカロテン9900μg、カリウム400mg、食物繊維3.1g
- 素揚げ(皮なし):βカロテン3200μg、カリウム380mg、食物繊維1.1g
- グラッセ:βカロテン860μg、カリウム240mg、食物繊維1.0g
5. 人参の種類による栄養価の違い

「日本食品標準成分表」には、一般的な五寸人参のほかに、「金時人参(きんとき)」や「ミニキャロット」の栄養価も収録されている。そこでこれらの主な栄養価も以下にまとめておく。なお、いずれも「根/生」の100gあたりの数値となっている。
種類別のカロリー・三大栄養素・糖質量
- きんとき:カロリー39kcal、たんぱく質1.8g、脂質0.2g、炭水化物9.6g(糖質5.7g)
- ミニキャロット:カロリー26kcal、たんぱく質0.7g、脂質0.2g、炭水化物7.5g(糖質4.8g)
種類別の主なビタミン・ミネラル・食物繊維
- きんとき:βカロテン4800μg、カリウム540mg、食物繊維3.9g
- ミニキャロット:βカロテン4900μg、カリウム340mg、食物繊維2.7g
6. 人参の栄養素を上手に摂るコツ

人参にはβカロテンが多いが、これを効率よく摂るなら食用油と一緒に摂るのがおすすめだ。また、普段は捨ててしまうことが多い「人参の葉っぱ」にも栄養素が多く詰まっているので食べるほうがよい。そんな、人参の栄養素を上手に摂るコツについても確認しておこう。
コツ1.油炒めなどで吸収率アップ
βカロテンなどの脂溶性成分は、食用油と一緒に摂ると吸収率がアップすることが知られている。そのため、人参を食べるときは炒め物や揚げ物などにするのがおすすめだ。また、サラダなどで食べたいときには、オイル入りのドレッシングやマヨネーズなどと一緒に食べるようにしよう(※4)。
コツ2.人参の葉っぱも食べる
スーパーや八百屋などでは、葉っぱ付きの状態で人参が売られていることもある。そんな人参は葉っぱまでしっかりと食べるようにしよう。実は人参の葉っぱも緑黄色野菜の一種であり、βカロテンなどを多く含む(※1)。そのため、葉物野菜として和え物・汁物・炒め物などに使ってみよう。
7. 人参の栄養に関するよくある質問

ここまで、人参の栄養価や栄養素などについて詳しく解説してきた。しかし中には「皮付き人参と皮なし人参で栄養価はどれくらい変わるのか」「1日にどれくらい食べていいのか」などが気になる人もいるだろう。そこで最後に人参の栄養面に関するよくある質問・疑問に回答する。
Q1.人参の皮にはどんな栄養素があるの?
「日本食品標準成分表」には、人参の「皮(生)」の栄養価も収録されている(※1)。これによれば、βカロテンこそ丸のままよりも少ないが、100gあたりのカリウム量は630mgと約2.1倍、食物繊維は3.8gと約1.3倍も多く含んでいる。そのため、普段捨ててしまうことが多い人参の皮にも栄養素がギュッと詰まっている。人参の皮は、キンピラや炒め物などにして食べるとよいだろう。
Q2.人参は1日にどれくらい食べていいの?
人参の1日あたりの上限量は決められていない。しかし、厚生労働省が始めた「健康日本21」によれば(※5)、1日に野菜は350g以上(緑黄色野菜120g、その他の野菜230g)食べるよう目標が定められている。人参は「緑黄色野菜」に含まれるため、1日あたり他の緑黄色野菜と合わせて120g以上を目安に食べるとよい。
結論
入手しやすくさまざまな料理に使える便利食材の人参は、実はβカロテンをはじめビタミン類・ミネラル類・食物繊維をバランスよく含んでいる野菜でもあった。特にβカロテンの含有量は全野菜の中でもトップクラスに多い。そんなβカロテンを上手に摂るなら、炒め物や揚げ物などにして食用油と一緒に食べるのがおすすめとなっている。
【参考文献】
- ※:農畜産業振興機構「野菜ブック にんじん」
https://www.alic.go.jp/content/001162850.pdf - ※1:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/ - ※2:e-ヘルスネット「トップページ」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/ - ※3:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf - ※4:キユーピー「ニュースリリース 2004年 No.17」
https://www.kewpie.com/newsrelease/archive/2004/2004_017.html - ※5:厚生労働省「健康日本21」
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b1.html#A13
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