1. 水菜とは?
水菜とは、日本原産のアブラナ科アブラナ属の植物の一種であり、深い切り込みが入った葉っぱと細長い葉柄が特徴的な野菜のこと。古くから京都府を中心に近畿地方で食べられており、大阪の名物料理である「はりはり鍋」などに使われていることでも有名だ。また、現在の最大生産地は茨城県であり、2019年の年間収穫量は22,800トン。全国の収穫量の約50%を茨城県が占めている(※2)。
2. 水菜の基本的な栄養価
「日本食品標準成分表」には、「水菜(生)」のほかに「水菜(ゆで)」や「水菜(塩漬)」などの栄養価も収録されている。まずは基本となる「水菜(生)」の100gあたりの栄養価を確認しよう。
水菜(生)100gあたりの栄養価
- エネルギー:23kcal
- たんぱく質:2.2g
- 脂質:0.1g
- 炭水化物:4.8g
- ビタミン
・βカロテン:1300μg
・ビタミンD:0μg
・ビタミンE:1.8mg
・ビタミンK:120μg
・ビタミンB1:0.08mg
・ビタミンB2:0.15mg
・ナイアシン:0.7mg
・ビタミンB6:0.18mg
・ビタミンB12:0μg
・葉酸:140μg
・パントテン酸:0.5mg
・ビオチン:3.1μg
・ビタミンC:55mg - ミネラル
・ナトリウム:36mg
・カリウム:480mg
・カルシウム:210mg
・マグネシウム:31mg
・リン:64mg
・鉄:2.1mg
・亜鉛:0.5mg
・銅:0.07mg
・マンガン:0.41mg
・ヨウ素:7μg
・セレン:2μg
・クロム:3μg
・モリブデン:20μg - 食物繊維:3.0g
(・水溶性食物繊維:0.6g)
(・不溶性食物繊維:2.4g)
3. 水菜に多く含まれる栄養素
水菜は一般的に栄養価が低いと思われがちだが、実はビタミン類、ミネラル類、食物繊維などを多く含んでいる。そこで水菜に含まれる特徴的な栄養素について確認してみよう。
その1.ビタミン類
水菜は、ビタミンDとビタミンB12以外のビタミン類を含んでいる「ビタミンの宝庫」である。特に多いのが、以下に紹介しているβカロテン、葉酸、ビタミンCなどである。
【βカロテン】
水菜は、βカロテンを100gあたり1300μg含んでいる。βカロテンは、体内ではビタミンAに変換され、目や皮膚などの健康を保つのに役立つ。また、βカロテンは「抗酸化物質」の一種でもあり、体内の活性酸素の発生を抑えたり、取り除いたりする働きも担う(※3、4)。
【葉酸】
水菜は、水溶性ビタミンの一種である葉酸を100gあたり140μg含んでいる。葉酸は体内では赤血球の産生や、DNAやRNAなどの核酸の合成をサポートする働きを担っている。成人男性(18~64歳)の1日あたりの推奨量は240μgであり、水菜を60g程度食べれば1食分の葉酸を補える(※3)。
【ビタミンC】
水菜は、ビタミンCを100gあたり55mg含んでいる。ビタミンCは、コラーゲンの生成に必要な栄養素として知られている。また、「抗酸化作用」を有しており、活性酸素の働きや、過酸化脂質の生成を抑える働きがある。成人男性(18~64歳)の1日あたりの推奨量は100mgとなっている(※3)。
その2.ミネラル類
水菜は、カリウムやカルシウム、リンといったミネラル類も多く含んでいる。例えば、100gあたりの含有量はカリウムが480mg、カルシウムが210mgである。「カルシウムが多い」といわれている牛乳でも100gあたり110mgであるため、水菜にはカルシウム量が非常に多いことが伺える(※1)。
その3.食物繊維
水菜は、食物繊維を100gあたり3.0g含んでいる。食物繊維には、腸内で膨らみ蠕動運動を活発にする働きや、糖の吸収を緩やかにして食後血糖値の上昇を抑える働きなどがある(※4)。成人男性(18~64歳)の1日あたりの目標量は21g以上であるため、水菜などを食べて補うようにしよう。
4. 水菜の栄養素を効率よく摂るコツ
水菜はビタミン類やミネラル類を多く含んでいるが、食べ方を工夫することで、よりこれらの栄養素を効率よく摂れるようになる。そこで水菜の栄養素を効率よく摂るコツについて確認しておこう。
コツ1.スープや鍋料理では汁ごと食べる
水菜に多く含まれるビタミンB群やビタミンCは「水溶性ビタミン」と呼ばれており、水に溶け出す性質を持っている。そのため、水菜を茹でたり煮込んだりすると、栄養素が溶け出してしまう。しかし、汁ごと飲むことで、汁やスープに溶け出した栄養素もしっかりと摂れるようになる。
コツ2.食用油と一緒に食べるようにする
水菜に含まれるβカロテンやビタミンKなどは「脂溶性ビタミン」と呼ばれており、食用油と一緒に食べることで吸収率がアップする。そのため、炒め物や天ぷらにしたり、サラダで食べるときもドレッシングと一緒に食べたりするのがおすすめだ。
5. 水菜の栄養面に関するよくある質問
ここまで水菜の栄養価・栄養素について詳しく解説してきたが、まだ水菜の栄養面について気になることや知りたいことがあるだろう。そこで最後に、水菜の栄養面に関するよくある質問に回答する。
Q1.水菜は1日のどれくらい食べればいい?
水菜の1日あたりの上限量は定められていない。しかし、厚生労働省が定める「健康日本21」によれば(※5)、水菜などの緑黄色野菜は「1日に120g以上食べるのが望ましい」とされている。人参やほうれん草といった緑黄色野菜と合わせて1日の120g以上食べるようにしよう。なお、水菜にはカリウムが多いため、慢性腎臓病などを患っている場合には注意が必要になる(※3)。
Q2.水菜の100gあたりの糖質量はどれくらい?
「日本食品標準成分表」には糖質量は収録されていない。しかし、炭水化物量は4.8gであり、食物繊維量は3.0gであることから、100gあたりの糖質量は1.8g(炭水化物量-食物繊維量)と算出することが可能だ。糖質量が少ないため、糖質制限を行っている人にもおすすめの野菜となっている。
Q3.生の水菜とゆでた水菜の栄養価の違いとは?
「日本食品標準成分表」には、「水菜(生)」のほかにも「水菜(ゆで)」などの栄養価が収録されている。この2つは、たんぱく質、脂質、炭水化物といった三大栄養素に差は見られないが、カリウム、ビタミンB群、ビタミンCなどに大きな差が見られる。特にビタミンCはゆでる前が100gあたり55mgであるのに対し、ゆでると19mgまで減ってしまっている(※1)。
結論
水菜はシャキシャキとした食感が美味しいだけでなく、ビタミン類・ミネラル類・食物繊維が豊富で栄養面で優れている。しかも1年中流通しており、いつでもスーパーや八百屋などで購入できる。サラダや鍋料理をはじめさまざまな料理に使えるので、栄養バランスを整えるためにも積極的に料理に使ってみよう。
【参考文献】
- ※:JAグループ「ミズナ(水菜)」
https://life.ja-group.jp/food/shun/detail?id=48 - ※1:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/ - ※2:農林水産省「作況調査(野菜)」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/index.html - ※3:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf - ※4:e-ヘルスネット「トップページ」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/ - ※5:厚生労働省「健康日本21」
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b1.html#A13
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