1. ハタハタとはどんな魚?
ハタハタは主に日本海、オホーツク海、千島列島などに生息している深海魚だ。旬は地域によって異なり、東北地方の秋田県産は11月~翌年1月頃で、山陰地方の鳥取県産・兵庫県産は3月~5月頃となっている。産卵期を迎えたハタハタを漁獲する秋田県とは異なり、鳥取県などでは産卵期以外のハタハタ(シロハタ)も漁獲している。これらの違いは、食感や脂の乗り方にも関係している。
不飽和脂肪酸やビタミンEが豊富!
文部科学省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」によれば、ハタハタには100gあたりDHA(ドコサヘキサエン酸)が710mg、EPA(イコサペンタエン酸)が510mg含まれている。また、ビタミンEは2.2mg含まれる(※1)。これらは日本人が最もよく食べるサケ(鮭)よりも多い。成人男性のオメガ3系脂肪酸の摂取目安量は2.0~2.2gなので(※2)、ハタハタ100gで半分程度おぎなえる。
プチプチ感のする秋田県産と脂の乗った島根県産
秋田県で獲れるメスのハタハタは産卵期を迎えており、「ブリコ」と呼ばれる卵がたっぷりと詰まっている。脂が少なく淡泊な味ながら、プチプチとした食感が楽しめるのが魅力だ。一方、鳥取県で獲れるハタハタは産卵期を迎えていないものが多い。そのため、身がふっくらとしていて脂が乗っているのが特徴である。いずれも骨が少なく身が簡単に離れるため食べやすいことは共通している。
2. ハタハタの漁獲・水揚げの歴史
かつての日本では、年間で4万トン近くハタハタが獲れる時期もあった。これは1950年を過ぎてから秋田県で大量に漁獲するようになったことが関係している。しかし、現在の漁獲量は5,400トンにまで減少した(※3)。なぜこれほどまでに増減したのか。その歴史について確認しておこう(※4)。
1970年頃に漁獲量のピークを迎える
1958年以降の全国のハタハタの漁獲量を見ると、1970年代にかけて漁獲量が増えていることが伺える。この理由は、秋田県や山形県などで日本海北部系群のハタハタが多く漁獲されるようになったからだ。実際、秋田県でのピークを迎えた1968年には年間で約2万トンを漁獲し(※5)、全国の漁獲量は4万トン近くまで増加した。それから1970年代中旬まで、年間3万トン程度の漁獲量が続いた。
1980年代に入り秋田県では大幅に減少
ピーク時には年間で2万トン以上もハタハタの漁獲量があった秋田県ではあるが、1976年になると漁獲量は9,600トンにまで減少。そこからさらに減少の一途をたどる。1979年には約1,400トンとピーク時の10分の1以下にまで減少し、1980年代に入ってからは毎年300トン前後まで落ち込む。これに伴い全国のハタハタの漁獲量も約1万トンと、ピーク時の4分の1程度まで少なくなってしまう。
1992年から3年間、秋田県で全面禁漁を実施
ハタハタの漁獲量が増えない秋田県では、1991年に70トンまで減少する。そして、水産資源を守るために秋田県の漁業者は1992年9月から1995年8月までの3年間の自主的禁漁を実施した。また、1999年には日本海北部系群のハタハタを漁獲している秋田県・青森県・山形県・新潟県の4県で15cm未満のハタハタの漁獲を禁止した(※6)。この頃、全国の漁獲量は約5,000トンにまで減少している。
2000年以降は徐々に漁獲量が回復していく
1990年代の自主的禁漁や水産自然管理協定の締結などにより、2000年代に入ると日本海北部系群のハタハタの漁獲量は徐々に増加していく。その漁獲量は年によって異なるが、約1,500トン前後となった。そして、2019年の全国のハタハタの漁獲量は約5,400トン。都道府県別で多い順にいうと、鳥取県の約1,300トン、次いで兵庫県の約1,200トン、そして秋田県の約800トンとなっている(※3)。
3. ハタハタのおいしい食べ方3選!塩焼きや煮付けなど
ハタハタを県魚にしている秋田県では、ハタハタをさまざまな方法で調理して食べている。たとえばハタハタの田楽やハタハタ寿司、唐揚げ、干物などが有名だが、とくに多い食べ方が塩焼き、煮付け、しょっつる鍋の三つだ。ここではこの三つの食べ方について紹介する。
ハタハタの塩焼き
シンプルにハタハタの味を楽しむなら「塩焼き」がおすすめだ。脂が乗っているハタハタ(シロハタ)であれば、食べた瞬間にジュワっと口の中にジューシーさが広がる。自宅で作るなら塩と酒で下味をつけてから、15分程度オーブントースターで焼くだけ。下処理も必要ないため、簡単に調理できる。
ハタハタの煮付け
秋田県を代表する郷土料理でもある「ハタハタの煮付け(醤油煮)」も人気である。醤油・酒・みりん・砂糖で味付けした煮付けは、ふっくらとした柔らかいハタハタの身と相性が抜群にいい。煮付けも調味料とハタハタを鍋で7~8分煮るだけなので、簡単においしいハタハタ料理を作れる。
しょっつる鍋
「しょっつる」とはハタハタで作った魚醤(ぎょしょう)という調味料だ。そのしょっつるを使ってハタハタを炊いた料理が「しょっつる鍋」である。ハタハタの身はもちろん、しょっつるで煮込んだ野菜もおいしい。味付けはしょっつると白だしとシンプルだが、野菜のうま味があるので問題ない。
4. ハタハタはどこで食べられる?
東北地方や関西地方ではスーパーや魚屋でハタハタを見かけることはあるが、全国のスーパーでハタハタを見かけることはあまり多くない。もしハタハタが食べたいなら専門店に行ったり、通販サイトを使ったりするのがいいだろう。また、旬の時期にハタハタ釣りに行くというのも一つの手だ。
ECサイトではハタハタの干物が多い
時期にもよるが、比較的一年中食べられるのが「ハタハタの干物」である。また、旬の時期なら「冷凍のハタハタ」を扱っていることもある。産地は秋田県産・山形県産、鳥取県産・兵庫県産のほか、海外産も販売されている。なお、オスと子持ちのメスとでは値段が大きく異なるのでよく確認しよう。
年末なら秋田県などでの釣りもおすすめ
年末の秋田県や山形県には、ハタハタを目当てした釣り人が多く訪れているそうだ。「初心者でも釣りやすい」といわれているため、もし興味があるならハタハタ釣りに挑戦するとよいだろう。なお、ハタハタ釣りには「全長15cmのものは海にかえす」などいくつかルールもある。そのほか、ごみやタバコとの捨てのマナー違反にも注意して、楽しくハタハタ釣りを行うようにしよう。
結論
塩焼き、煮付け、鍋料理など、どのように調理してもおいしく食べられるハタハタ。かつては乱獲などが原因で漁獲量が少なくなった時期もあったが、漁獲量が増えた今現在は「東北地方で獲れるもの」と「山陰地方で獲れるもの」の二種類を食べることができる。産地や旬によって味が異なるため、食べたい料理や好みに合わせて選ぶようにしよう。
【参考文献】
- ※1:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10228_7&MODE=0
- ※2:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年)」https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
- ※3:農林水産省「海面漁業生産統計調査」https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kaimen_gyosei/index.html
- ※4:日本水産資源保護協会「わが国の水産業 はたはた」http://www.fish-jfrca.jp/02/pdf/pamphlet/093.pdf
- ※5:秋田県庁「秋田県におけるハタハタ漁獲量の推移」https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/3435
- ※6:水産庁「日本海北部マガレイ、ハタハタ資源回復計画」https://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_keikaku/pdf/magahata.pdf
この記事もCheck!