目次
1. レンズ豆とは?

レンズ豆(ひら豆)とは、マメ科ヒラマメ属の一年草のことで、その種子は「食用のレンズ豆」として知られている。地域によって大きさや色は異なるが、一般的には直径4 〜8mm程度、厚さ2~3mm程度の平たい丸形をしている。「皮ありの褐色/緑褐色」と「皮なしの黄色/赤橙色」があり、日本では皮ありの褐色タイプが多く販売されている。枝豆のような豆特有の甘みが特徴である(※1)。
レンズ豆の歴史と現在
「人類が最初に栽培した植物のひとつ」といわれているレンズ豆は、メソポタミア地域を中心とする西アジア原産の植物とされている。その後、紀元前2000年頃にはエジプトやローマ、インドにも伝わり、現在はさまざまな国で食べられている。2019年の世界の年間生産量は約573万トンで、カナダ、インド、オーストラリアの順に多い(※2)。日本は主にアメリカやカナダから輸入している。
2. 市販のレンズ豆の種類・分類

日本では「皮ありの褐色タイプ」のレンズ豆が多く売られているが、市販のレンズ豆には「乾燥/水煮」「皮あり/皮なし」「褐色/緑褐色/暗緑色」などさまざまなタイプがある。そこでここでは市販されているレンズ豆の種類を確認しておこう。
その1.乾燥タイプと水煮タイプ
乾燥タイプは長期保存が可能なことや、ゆで加減で好みの硬さに調整できることが特徴だ。一方、水煮タイプはフタを開けたらすぐ使えることや、煮汁まで使えることなどが特徴である。料理や使用する時期などを踏まえて、乾燥タイプと水煮タイプを選ぶようにしよう。
その2.皮ありタイプと皮なしタイプ
市販のレンズ豆には「皮あり茶レンズ豆(ブラウンレンティル)」と「皮なし赤レンズ豆(レッドレンティル)」がある。前者は煮崩れしにくく、豆特有の食感を楽しめる。一方、後者は煮崩れしやすく、マッシュにする際に向いている。レンズ豆の形を残したいかどうかなどで選ぶようにしよう。
その3.褐色タイプや緑褐色タイプなど
レンズ豆は地域によって品種が異なり、外皮には褐色・緑褐色・暗緑色・黒褐色などさまざまな色味がある。また、レンズ豆は内部の色も異なり、主に黄色か赤橙色のいずれかであることが多い。産地や皮の有無を判断したい場合には、レンズ豆の色味を確認してみよう。
3. レンズ豆の特徴と魅力を紹介!

世界的にはレンズ豆は有名で多く食べられているが、大豆などが主流の日本ではあまり食べられていない。しかし、レンズ豆には「簡単に調理できる」などさまざまな特徴・魅力がある。そんなレンズ豆の特徴や魅力をチェックしておこう。
魅力1.手軽に食べられる
一般的な乾燥豆は「一晩水に浸して戻す」「食べる前には下茹でする」などの下準備が必要になる。しかし、平たい形状が特徴のレンズ豆は火が通りやすいため、水で戻すという工程は不要。また、皮ありのレンズ豆は多少アクが出るが、下茹でせずにほかの食材と一緒に加熱調理することができる。アクが気になるなら下茹でがおすすめだが、下茹で自体も10~15分程度で完了するのでお手軽だ。
魅力2.豆特有の味と香りがする
豆特有の風味や食感が優れていることもレンズ豆の魅力だ。豆特有の「緑の香り」が料理のアクセントとなり、噛むと枝豆のような甘みが口の中に広がる。また、ホクホクとした柔らかな食感も楽しめる。こうした特徴を持つレンズ豆は、サラダ・煮込み料理・汁物などさまざまな料理に使える。
魅力3.栄養価が優れている
レンズ豆は、ほかの豆類と比べて栄養価が優れている。例えば、乾燥タイプ100gあたりの鉄分は9.0mgであり、黄大豆(6.8mg)やインゲン豆(6.0g)よりも多い。一方で脂質量は1.5gと非常に少なく、カロリーは313kcalと低い。そのため、たんぱく質・ビタミン類・ミネラル類・食物繊維などは豊富だが、低カロリー・低脂質なのがレンズ豆の特徴となっている(※3)。
4. レンズ豆の基本的な栄養価

前述のとおりレンズ豆は、栄養面でも優れている豆類である。そんなレンズ豆の栄養価を「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考に紹介する(※3)。なお、同成分表には乾燥タイプとゆでタイプの2種類が収録されているが、以下は「レンズ豆(乾燥)」の100gあたりの数値である。
レンズ豆(乾燥)100gあたりの栄養価
- エネルギー:313kcal
- たんぱく質:23.2g
- 脂質:1.5g
- 炭水化物:60.7g
- 脂肪酸
・飽和脂肪酸:0.17g
・一価不飽和脂肪酸:0.3g
・多価不飽和脂肪酸:0.48g - ビタミン
・βカロテン:29μg
・ビタミンD:0μg
・ビタミンE:0.8mg
・ビタミンK:17μg
・ビタミンB1:0.52mg
・ビタミンB2:0.17mg
・ナイアシン:2.5mg
・ビタミンB6:0.55mg
・ビタミンB12:0μg
・葉酸:77μg
・パントテン酸:1.58mg
・ビオチン:23.0μg
・ビタミンC:1mg - ミネラル
・ナトリウム:Tr
・カリウム:1000mg
・カルシウム:57mg
・マグネシウム:100mg
・リン:430mg
・鉄:9.0mg
・亜鉛:4.8mg
・銅:0.95mg
・マンガン:1.57mg
・ヨウ素:0μg
・セレン:54μg
・クロム:2μg
・モリブデン:180μg - 食物繊維:16.7g
(・水溶性食物繊維:1.0g)
(・不溶性食物繊維:15.7g)
5. レンズ豆の基本的なゆで方

水煮タイプのレンズ豆はゆでずにすぐに使えるが、乾燥タイプのレンズ豆は食べる前に茹でる必要がある。乾燥タイプには「皮あり」と「皮なし」があるが、基本的には同じように茹でることが可能である。美味しく食べるためにも、以下の正しい手順でレンズ豆をゆでるようにしよう。
レンズ豆のゆで方・手順
- レンズ豆をサッと水洗いする
- 鍋にたっぷりの水とレンズ豆を入れる
※ローリエや鶏ガラスープの素を入れてもよい - 中火で10~20分程度茹でる
※途中、あくを取るようにする - ザルにあげて粗熱を取れば完成
6. レンズ豆でできる時短料理3選

レンズ豆は手軽に調理できるため時短メニューとの相性が非常にいい。特にすぐに食べられる水煮タイプであれば料理のレパートリーは多い。しかし、保存性が高い乾燥タイプも、うまく使えば時短レシピに活用できる。以下では忙しいときに役立つおすすめの時短料理を3つ紹介する。
料理1.水筒で作るレンズ豆のスープ
レンズ豆は、ステンレスボトルの中でゆでることが可能だ。この利点をいかせば、ステンレスボトルでスープを作ることもできる。500mlボトルを使う場合は50mg程度のレンズ豆とコンソメ、お湯を入れる。それからよく振って30分ほど寝かしておくだけで、簡単にレンズ豆のスープが完成する。
料理2.レンズ豆の炊き込みご飯
レンズ豆を使った炊き込みご飯も手軽で美味しい。作り方は簡単で、普通のご飯を炊くのと同じ要領で準備し、お釜に30分~1時間程度浸けておいたレンズ豆と、味付け用のオリーブオイル・ローリエ・塩コショウを加える。あとはいつも通りお米を炊けばOKだ。
料理3.レンズ豆とウィンナーの煮込み
肉類と相性がよいレンズ豆を使って煮込み料理を作ってみよう。時短したいならウィンナーと組み合わせるのがおすすめ。鍋に少なめの水とレンズ豆、ローリエを入れて15~20分程度煮込む。それからウィンナーを入れてさらに5~10分程度煮込もう。最後に塩コショウで味付けすれば完成だ。
7. レンズ豆の正しい保存方法

レンズ豆は「乾燥/ゆで」「開封/未開封」などで異なる。例えば、未開封の乾燥タイプなら常温保存が可能。また、自宅で茹でたレンズ豆は冷蔵庫か冷凍庫のいずれかで保管するのが基本となる。冷蔵保存の場合は、フタつきの保存容器に移し替えてから冷蔵庫に入れる。冷凍保存の場合は、冷凍用保存袋に入れてから冷凍庫に入れればOKだ。レンズ豆の保存方法の詳細は以下のページで確認しよう。
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8. 市販のおすすめ乾燥レンズ豆3選

レンズ豆は一般的なスーパーなどでも売っているが、近所のお店で見つからない場合はネット通販を利用してみよう。ここではAmazonなどで人気のおすすめ乾燥レンズ豆を3種類紹介する。
おすすめ1.アルカン「ル・ピュイ産 緑レンズ豆」
「ル・ピュイ産 緑レンズ豆AOP500g」は、フランス食材輸入業者のアルカン社が販売している商品である。AOC(フランス原産地呼称)の認証を受けており、レンズ豆の中でも最高品質といわれている。濃い緑色が特徴の皮ありタイプのレンズ豆であり、繊細な香りとしっかりした味わいが魅力となっている。使用する際はたっぷりのお湯で25~30分程度ゆでるようにしよう。
おすすめ2.桜井食品「オーガニック 有機緑レンズ豆」
「オーガニック 有機緑レンズ豆」は、岐阜県美濃加茂市にある桜井食品が販売しているレンズ豆である。アメリカ産のオーガニックレンズ豆であり、緑色っぽい外皮が付いているタイプである。下煮が不要でクセが少ないため、サラダ・スープ・煮込み料理などさまざまな料理に便利に使うことができる。1袋のサイズは500gとなっている。
おすすめ3.アリサン「有機茶レンズ豆」
「有機茶レンズ豆」は、埼玉県にある輸入卸販売業者のアリサンが販売しているレンズ豆である。アメリカ産の茶色の皮が付いたタイプであり、有機栽培されていることが特徴となっている。水戻しが不要であるため、ほかの食材と一緒に煮込んだりして使うことが可能だ。1袋のサイズは500gのほかに1kgなどがある。
9. レンズ豆のよくある質問に回答!

ここまでレンズ豆についてさまざまな観点から説明してきたが、まだレンズ豆に関する疑問や質問もあるだろう。そこでここではレンズ豆に関するよくある疑問・質問について回答しておこう。
Q1.レンズ豆と普通のレンズは関係があるの?
光学レンズ(凸レンズ)は、レンズ豆に見た目が似ていることが由来となっている。中には「レンズ豆の名前の由来には光学レンズが関係している」と説明している場合もあるが、レンズ豆の起源は紀元前5500年までさかのぼるが、光学レンズの起源は13世紀頃(※4)なので間違いだといえる。
Q2.外国ではどのような料理が多いの?
イタリア料理やフランス料理などでも使われるが、レンズ豆の二大生産国の一つであるインドではレンズ豆は「ダルカレー」という料理で親しまれている。ダルにはヒンドゥー語で「豆」という意味があり、レンズ豆のほか緑豆やチャナ豆などを使うこともあるそうだ。
Q3.レンズ豆は世界の五大健康食品の一つなの?
アメリカの健康専門誌『ヘルス(Health)』では、日本の大豆、韓国のキムチ、スペインのオリーブオイル、ギリシャのヨーグルトと並んで、インドのレンズ豆を「世界の五大健康食品」の1つとしている(※5)。この理由には、レンズ豆が日頃からインドの家庭で食べられていること、たんぱく質やビタミン類、食物繊維などを多く含んでいることなどが関係しているようだ。
結論
レンズ豆は日本ではあまり食べられていないが、実は味や香りだけでなく、栄養面や使い勝手も優れている豆類である。特にレンズ豆のスープであれば、ステンレスボトルにお湯と一緒に入れておくだけで作れる。また、炊き込みご飯、煮込み料理、サラダなどにも使うことが可能だ。スーパーなどでも売られているが、もし見つからなければAmazonといったECモールなどで探してみよう。
【参考文献】
- ※1:日本豆類協会「レンズまめ」
https://www.mame.or.jp/syurui/feature/syurui_14.html - ※2:国際連合食糧農業機関統計データベース
http://www.fao.org/faostat/en/#data - ※3:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/ - ※4:日本顕微鏡工業会「2.光学のはじまり」
http://www.microscope.jp/history/02.html - ※5:Health「World's Healthiest Foods: Lentils (India)」
https://www.health.com/food/worlds-healthiest-foods-lentils-india
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