1. そもそも土用丑の日とは?今年はいつ?

毎年夏にやって来る、土用丑の日。現代では夏のイメージしかない「土用」だが、もともとは立春や立夏、立秋や立冬のそれぞれ18日前の期間を指す言葉だった。このうち立秋の前にやってくる土用の日には、干支の「丑」が割り当てられていることから、夏にやってくる土用は「土用丑の日」と呼ばれるようになったという。土用丑の日と、うなぎ。なぜその組み合わせが始まったのか、その起源には諸説ある。有名なもののひとつが、平賀源内の説。江戸時代、商売がうまくいっていなかったうなぎ屋が平賀源内に助言を求めたところ、「『今日は丑の日』と書いた紙を貼りだせ」といわれ、その通りにすると商売が繁盛したとか。それ以来、丑の日にうなぎを食べることが定着し、現代に至るともいわれている。2020年の土用丑の日は、7月21日。毎年この時期のスーパーには、うなぎのかば焼きがズラリと並ぶが、その風景ももはや過去のものになってしまうかもしれない。
2. 土用丑の日が消滅する?うなぎの危機的状況

滋養強壮に効果があると信じられ、古来よりうなぎを愛してやまなかった日本人。そのうなぎがいま、危機的状況を迎えている。うなぎの稚魚である、シラスウナギの漁獲量が減少しているのだ。うなぎの生態は解明されていない部分が多く、養殖をするにも河川に自生している稚魚を捕獲するところから始まる。国ではシラスウナギの採取時期や場所を厳密に規制しているが、獲れる数が減れば必然的に値段も高騰するため、養殖業者間での稚魚捕獲合戦は激しさを増している。シラスウナギは成長すると、ニホンウナギと呼ばれるようになる。このニホンウナギは、2014年に絶滅危惧種に指定された。いまのところ輸出入の規制対象とはなっていないものの、2019年に開催されたワシントン条約の締約国会議では国際取引の規制対象となるのではないかと懸念された。スーパーや外食チェーンでも手軽に食べられるうなぎだが、取り巻いている状況は決して楽観できないのが現実だ。
3. 土用丑の日、今後はどうなる?

土用丑の日にうなぎを食べる食文化は、もう消滅してしまうのだろうか。
・うなぎは回遊魚。輸入しても根源は同じもの
「日本でうなぎが獲れないのであれば、外国で獲れるうなぎを輸入すればいい」と考える人もいるだろう。しかし、うなぎはどこの国で獲れるものも基本的に同一種であるため、ニホンウナギが絶滅すれば、外国産のうなぎも消滅してしまう。世界的に不漁となっているいま、輸入という手段を持ってしても、うなぎ不足の根本的な解決にはならないのだ。
・うなぎ不漁の原因は不明
詳しい生態がわかっていないうなぎだが、不漁の原因もよくわかっていない。水産庁では、自然環境の悪化や密猟などがその要因だと推測しているが、特定には至っていないのが現状だ。水産庁はまた、いまの段階で一般消費者がうなぎを買い控える必要はない、という見解を示している。絶滅危惧種に指定されているものの、捕獲や消費が禁止されているわけではないうなぎ。不漁の根本的な原因が解明され、絶滅の心配なく食べられる日が来るには、もうしばらく時間を要しそうだ。
結論
うなぎに関する研究は日進月歩で進められており、「うなぎ風のなまず」の開発や、「完全養殖」を目指す試みもなされている。2010年には水産研究・教育機構が完全養殖に成功したというニュースもあり、絶滅しつつあるシラスウナギに頼らなくてもうなぎが食べられる環境づくりが進められているようだ。今年はとくに不漁という、うなぎ。土用丑の日には、うなぎを食べられることに感謝しながらも、持続可能な自然との共生についても思いをはせてみたい。
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