1. 魚の煮付けに必須の工程「湯引き」とは?

そもそも湯引きとはどういったものなのか、まずは基本的なところから解説しよう。
汚れや臭みを取る工程
熱湯をかけたりサッとくぐらせたりして冷やし、血合いや生臭い成分を落とす下処理のことを湯引きという。湯引きすることで臭みが取り除かれ、食材本来の美味しさが引き立つうえ、刺身の場合は表面の殺菌消毒もできる。加熱後は冷水で手早く締めるのが基本である。
霜降りとの違いは?
湯引きすると、食材の表面が白くなる。この状態が「霜降り」だ。したがって「調理法=湯引き」「状態=霜降り」ということになる。ただし、工程自体を霜降りということもある。
煮魚に生臭さが残りやすい理由
魚が生臭くなるのは、身に残った血液中のトリメチルアミンオキサイドが分解され発生する、トリメチルアミンという成分が原因だ。トリメチルアミンは気化しやすく水に溶けやすい特性を持つ。焼き魚や揚げ物などは、この成分が揮発しやすいうえ、臭みの元である血合いなどが焼け落ちることで、嫌な臭いが残りにくい。一方、煮魚の場合は煮汁にトリメチルアミンが溶け出しそのまま残る。また臭みの元が調理工程で取り除かれることもないので、ほかの調理方法に比べて生臭さが残りやすいのだ。
湯引きをする食材や料理とは?
煮魚や鍋など、煮汁を含む調理の際に下処理として行われることがほとんどだ。鯛やブリのアラ調理、鯛やハモの刺身、ふぐやマグロの醤油漬けなどでも行われる。また魚以外にも、新鮮な鶏肉やミノなどを湯引きして半生状態で食べることもある。
2. 魚の湯引きのやり方

湯引きを覚えて美味しい魚の煮付けを作ることができれば、料理のスキルアップにもなるし楽しくもなるだろう。やり方はシンプルなので、ぜひ覚えておこう。
湯引きの手順
- お湯を沸かす
- 沸騰するまでの間に、表面のヌメリや血合いを流水で洗い落とす
- ボウルに氷水をはり「1」が沸騰するのを待つ
- 別のボウルにザルを重ね、魚を入れたら熱湯を一気に注ぎ込む
- 霜降り状態になったら「3」のボウルに魚を移す
- ヌメリ・鱗・残った血合いを取り除く
- キッチンペーパーなどで水気をよく拭き取って完了
以上が湯引きの基本的なやり方だ。血合いは骨の間にもある。そのため「2」で洗い落とすときに手で取りにくいときは、包丁で軽く切り込みを入れるなどして削ぎ落とそう。
熱湯をかけるだけでは不十分
熱湯にさらしたら必ず氷水で締め、魚に残っている汚れや血合い、鱗などを取り除き水気をしっかり拭こう。霜降りにして冷やしただけでは、発生した成分は減るものの臭いの元は取り除けない。湯引きしてから汚れを取るのは、熱湯で血合いを固め、氷水で身を締めることで取りやすくするためだ。さらに丁寧に処理するなら、湯引きする10分ほど前に塩をふって臭みを浮き出させておこう。塩で、トリメチルアミンが水分と共に流れ出てより洗い落としやすい。
3. 湯引きを生かした魚の煮付けの簡単レシピ

最後にひとつ、湯引きを工程に含むおすすめレシピを紹介しよう。
材料
カレイ・醤油・酒・みりん・砂糖を用意しよう。水を加えてもよいが、ふっくら仕上げるには水ではなく酒をやや多めに入れるとよい。
作り方
湯引きして汚れや血合いを落としたカレイを調味料で煮込んでいくだけだ。皮の表面に軽く切り込みを入れ、落としぶたをするとより味が染み込みやすくなる。少々手間だが、煮汁が少なくなってもカレイは返さず、スプーンなどですくってかけるようにすれば煮崩れ防止になるので、ぜひ試してみてほしい。
結論
DHAやEPAなどが多く含まれ、体にとってもいろいろなよい効果が期待できる魚は、ぜひ積極的に食べたい食材だ。子どもなど魚が苦手な方でも食べやすいようにするためには、臭みを取ることが重要だ。湯引きは手間はかかるが難しくないので、ぜひ覚えて役立ててほしい。