1. 中華料理の基本ともいうべき「油通し」とは?
「油通し」は下加熱処理のひとつで、中華料理でよく用いられる。湯通しとの違いなど、まずは基礎知識を身につけよう。
油通しは中華料理の基本
食材をお湯にくぐらせ、7割ほど火を通すのが湯通しだ。対する油通しは、野菜や肉などの食材を油にサッと、ごく短時間くぐらせる。これによりその食材の美味しさを引き出すという方法だ。
油通しのメリット・デメリット
油通しをすることで本加熱にかかる時間を短縮できる。もちろん、これもメリットだがそれだけではない。食材から余分な水分が抜け落ち、表面のみが焼けて硬くなるため旨みを閉じ込めることができる。その結果、食感がよくなるうえ、色鮮やかになり煮崩れしにくくなるといった利点がある。
欠点といえば手間がかかる点や、大量の油を消費することがあるという程度だろう。
欠点といえば手間がかかる点や、大量の油を消費することがあるという程度だろう。
2. 油通しをしたほうが「油っこくならない」理由
短時間とはいえ油に食材をくぐらせるのが油通しだ。となれば、油っこくならないか心配になる方もいるだろう。ところが油通しをしたほうが「油っこくならない」のである。その理由は次の通りだ。
余分な油が染み込まなくなる
お伝えしたように、油通しをすると表面が焼けて硬くなる。そのため、本加熱をした際に余分な油を吸収しなくなるというわけだ。しかも、油通しをした食材のほうが冷めにくいことも分かっている。
3. 油通しをするとピーマンなどの苦みが和らぐ
ピーマンが苦手という子どもを持つご家庭も多いのではないだろうか?ピーマンの独特の苦みは「クエルシトリン」というポリフェノールの一種によるものだ。実は、油通しをすることでその苦みを和らげることができる。
油通しでクエルシトリンが溶け出す
クエルシトリンは油に溶けやすい性質を持っている。炒める前に油通しすることで溶け出し、苦みを抑えることができるのだ。そのうえ、お伝えしたように食材の表面だけを短時間で加熱することにより、水分や栄養素、旨みなどの成分が閉じ込められて美味しさも増す。ヘルシーに仕上がるうえ野菜の色も鮮やかになる油通しは、まさに炒めものには欠かせない調理法といえるだろう。
4. 基本的な油通しのやり方
さすがに毎日やるのは難しいかもしれないが、休日など時間に余裕があるときはご家庭で油通しをしてみたい、ということもあるだろう。基本的なやり方を紹介するので、機会があればぜひチャレンジしてみてほしい。
野菜を油通しする方法
- 180℃程度に熱した油の中に野菜を入れる
- 全体をサッとかき混ぜる
- すぐにジャーレンやザルで引きあげ、しっかりと油を切る
全体をサッとかき混ぜたら素早く引きあげること、固い野菜から順番に油に投入していくことなどがポイントになる。
肉を油通しする方法
- 肉に片栗粉をまぶしておく
- 130℃程度に熱した油の中に肉を入れる
- 全体をサッとかき混ぜる
- すぐにジャーレンやザルで引きあげ、しっかりと油を切る
肉は熱を入れすぎるとタンパク質の結合が強まり、硬くなってしまう。そのため、油は低めの130℃程度にした方がよい。また直接熱が入ることを防ぐため、片栗粉をまぶしてから油通しをしよう。
5. より手軽にできる油通しのやり方
油通しは、手順は難しくはないが手間がかかる。キッチンが汚れてしまう可能性もあるし、大量の油も消費する。それに火の通し加減も難しいなど、ご家庭で実践するにはハードルが高いこともあるだろう。そこで最後に、ご家庭でもできる簡単なやり方を紹介する。
簡単な油通しのやり方
- 鍋でお湯を沸騰させ、大さじ2杯程度の油を加える
- その中に野菜を入れて30秒程度くぐらせる
- ジャーレンやザルで引きあげ、しっかりとお湯と油を切る
本格的な油通しとは異なるが、こうすることで野菜が油でコーティングされ、油通しに近い効果が得られる。火を通し過ぎるとシャキシャキ感が失われてしまうので、時間には気をつけよう。
結論
中華料理の基本である油通しには「旨みを閉じ込める」「余分な油の吸収を抑える」「冷めにくくする」「食感や色合いがよくなる」などさまざまなメリットがある。手間がかかるうえ大量の油を消費する可能性があるため、ご家庭では手軽にできないかもしれないが、覚えておいて損はないだろう。
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