目次
1. アボンダンスチーズとは?

アボンダンスチーズとは、スイスとの国境に面しているフランスのサヴォワ地方(オート=サヴォワ県)の伝統的なチーズである。出来立ては直径38~43cm程度、高さ7~8cm程度の円盤形の見た目をしており、内部はクリーム色に近い淡い黄色となっている。また、水分量が少ないハードタイプのチーズであるため、牛乳由来の濃厚な甘みとうま味を楽しむことができる。
アボンダンスの名前の由来
アボンダンス(Abondance)の名前の由来は諸説あるが、一般的にはフランスのサヴォワ地方にある「アボンダンス」という地域に由来しているそうだ。また、「アボンダンス」という名前は谷、修道院、牛の品種にも使われている。このようにさまざまな名前に使われているアボンダンスには、フランス語で「豊穣」「多量」「豊富」などの意味がある。
2. アボンダンスチーズの誕生と現在

アボンダンスチーズの歴史は古く、11世紀頃にはフランスの修道院たちによって作られていたとされている。そして現在でも当時の製法は大切に守られており、美味しいアボンダンスチーズを作るのに生かされているそうだ。そんなアボンダンスチーズの歴史についても確認しておこう。
アボンダンスチーズの誕生
アボンダンスチーズは、11世紀頃にアボンダンス修道院の修道士たちによって作られ始めた。ほかのチーズは酪農と並行して作られていたのに対し、アボンダンスチーズは修道士たちが質を追求して専門的に作っていたという。そんなアボンダンスチーズは1381年のカトリック教会の教皇を決める会議で食べられ、そこで「美味しさ」が認められる。これをきっかけに注目を集めるようになる。
アボンダンスチーズの現在
アボンダンスチーズは、1990年にEU統一の原産地呼称保護である「AOP(現AOC)」に認定されている。また、従来はアボンダンス種のミルクだけから作られていたが、現在はアボンダンス種、モンベリアルド種、タリーヌ種の3種が使われている。なお、製造にあたり規制が設けられているため現在でも手作業で作られることが多く、流通量が少ない希少性の高いチーズとなっている。
3. アボンダンスチーズの特徴や魅力とは?

伝統的な製法で作られているアボンダンスチーズは、牛乳由来の濃厚なコクと熟成による豊かな香りが特徴となっている。そんなアボンダンスチーズならではの特徴や魅力を確認しておこう。
その1.牛乳由来の濃厚なコクを楽しめる
アボンダンスチーズは、1kg分を作るのに10kg程度のミルクを使っている。また、長期熟成させて作る「ハードタイプ」のチーズであるため、水分量が少ないことが特徴でミルク由来の濃い甘み・うま味・コクを楽しめる。しっかりと塩気もあるが、塩辛さはあまり感じない味わいとなっている。
その2.熟成による豊かな香りを楽しめる
アボンダンスチーズは、最低でも100日程度の熟成をさせている。このようにして作ったアボンダンスチーズは、ヘーゼルナッツやパイナップルのようなフルーティーで甘い香りが楽しめる。また、外皮を洗っているため、ウォッシュタイプのような独特な香りを感じることもある。
4. アボンダンスチーズの基本の切り方

アボンダンスチーズは直径40cm前後の大きなチーズであるが、市販されているものはカットされているものが多い。ただし、カットされたものでも大きさによっては切り分けが必要になる。切り分けるときはホールケーキをカットするように、中心から外側に向かって放射線状に切るようにしよう。
アボンダンスチーズを放射線状に切るほうがいい理由は、アボンダンスチーズの熟成度が中心部と外側で異なるからだ。アボンダンスチーズの熟成度は中心部が低く、外側になるにつれて高くなるという。チーズは熟成度が低い部分と高い部分をバランスよくしたほうが、美味しく食べることができる。
アボンダンスチーズを放射線状に切るほうがいい理由は、アボンダンスチーズの熟成度が中心部と外側で異なるからだ。アボンダンスチーズの熟成度は中心部が低く、外側になるにつれて高くなるという。チーズは熟成度が低い部分と高い部分をバランスよくしたほうが、美味しく食べることができる。
5. アボンダンスチーズの美味しい食べ方

ヘーゼルナッツやフルーティーな香りがするアボンダンスチーズは、適当な大きさにカットしてそのまま食べるのがおすすめ。また、チーズフォンデュ・ラクレット・グラタンなどにしても美味しく食べられる。ここではそんなアボンダンスチーズの美味しい食べ方をいくつか紹介しておこう。
食べ方1.そのまま
アボンダンスチーズの味と香りを存分に楽しむなら、特別な調理はせずにそのまま食べるのが一番よい。適当な厚さにスライスしてもいいし、サイコロ状にカットするのもよい。また、クラッカーなどと一緒に食べればお酒のおつまみにもなる。ワイン・日本酒などにも合う定番の食べ方といえる。
食べ方2.ベルトゥー
ベルトゥーとはアボンダンスチーズを白ワインに浸して作る伝統的なサヴォワ料理である。耐熱容器にすりおろしたアボンダンスチーズを入れて、その上からサヴォワ産の白ワイン・コショウ・ナツメグを振りかけてオーブンで焼くというもの。表面がきつね色に変化したら完成である。チーズフォンデュのような感覚で食べられるため、パンや茹でた野菜類などを付けて食べるのがおすすめだ。
食べ方3.ラクレット
チーズの種類にもラクレットはあるが、ここでいうラクレットはサヴォワ料理のことである。料理としてのラクレットはチーズの表面を温めて溶かし、それをパン・肉料理・魚料理・野菜などにかけて食べるというものだ。専用のラクレットグリルもあるが、自宅で行うならアボンダンスチーズを電子レンジで加熱するのがおすすめ。簡単にトロトロとした濃厚チーズを作ることができる。
6. アボンダンスチーズに合うお酒の種類

多くのハードチーズには赤ワインが合うのだが、フルーティーな味わいが特徴のアボンダンスチーズには白ワインのほうがよく合う。また、料理としてアボンダンスチーズを食べる場合には日本酒を合わせても美味しい。具体的におすすめのお酒についても確認しておこう。
お酒1.サヴォワ産の白ワイン
アボンダンスチーズは白ワインとの相性が非常にいい。特に辛口の白ワインとの相性がよいのだが、銘柄がわからなければサヴォワ産の白ワインを選ぶのがおすすめ。サヴォワ地方には「ルーセット・ド・サヴォワ」「ヴァン・ド・サヴォワ」などの白ワインがあるのでこれらを選ぶようにしよう。
お酒2.辛口の赤ワイン
アボンダンスチーズと一緒に赤ワインを飲むなら、辛口のものを選ぶようにしよう。例えば「コート・シャロネーズ」「コトー・デュ・ロワール」などがおすすめである。ハードチーズとしてのアボンダンスチーズを楽しみたいときには、このような辛口の赤ワインを探してみよう。
お酒3.日本酒
アボンダンスチーズを料理に使う場合は、濃厚な味わいの日本酒がおすすめだ。特に具材に山芋などを入れたり、調味料に醤油を使ったりした和風の料理には日本酒がよくあう。料理によってはワインだけでなく、日本酒を合わせてみるのもいいだろう。
7. アボンダンスチーズの主な入手方法

アボンダンスチーズは生産量が少ないため、日本では入手しにくいチーズの一つとなっている。しかし、高級スーパーやデパートなどが入荷していたり、Amazonや楽天市場のようなECモールで販売されていたりすることもある。また、ネット通販ではセット商品の中に「アボンダンスチーズ」が入っていることもあるようだ。興味があるならお店やネットで探してみるといいだろう。
結論
アボンダンス修道院の修道士たちによって作り出された「アボンダンスチーズ」は、濃厚なコクと豊かな香りが特徴のハードチーズである。修道士たちのこだわりは現在まで受け継がれ、牛の品種や飼料なども細かく規定されている。そのため、生産量が少なく日本ではやや入手しにくいチーズとなっている。もしアボンダンスチーズを入手できたら、ぜひ地元の白ワインなどと一緒に楽しもう。
【参考文献】
- ※:Fromage-Abondance 「Discovery of Abondance cheese」
https://www.fromageabondance.fr/en
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