1. コーヒーはなぜ「珈琲」と書くのか?

「可非」「可否」「黒炒豆」などコーヒーの当て字はいくつかあるが、「珈琲」という文字を作字したのは、幕末の蘭学者「宇田川榕菴」である。榕菴は、コーヒーの木にたわわに実ったコーヒーの赤い果実「コーヒーチェリー」を当時の女性が髪に飾っていたかんざしのようだと思ったという。そのため「珈」は髪に挿してつける花かんざしを、「琲」はかんざしの玉をつなぐ紐をたとえたものだという。榕菴は、まだ庶民がコーヒーを口にすることがほとんどなかった時代に『哥非乙説』という論文も執筆し、養父とともに翻訳したフランス人ショメールの『家庭百科事典』のなかでも、コーヒーの木について植物学的な研究を重ねていた様子がうかがえる。また、榕菴は「珈琲」以外にも酸素、水素、窒素、細胞など科学の分野を中心に50もの言葉を造語したという。それらの言葉は現代でも息づいていて、地道な研究や翻訳などによって彼が残した功績は称賛に価するのである。
2. 「香りの王様」入りのコーヒーとは

「香りの王様」という異名を持つスパイスのカルダモン。心臓という意味の「カルディア」と植物名の「アモーマム」からカルダモンと名付けられたそうだ。北欧でも好まれるスパイスだが、エジプトや中近東諸国では、カルダモンを入れたコーヒーを、客人をもてなす時に出すという。カルダモンはショウガ科の多年草で、まだ実が緑でかたいうちに収穫して乾燥する。さやを割ると、中にはゴマ粒くらいの黒または茶色の実が入っている。清涼感のある香りでピリッと刺激的な辛さと苦味もほのかにある。パンや料理にも使われるが、少量でも非常によく香るため入れ過ぎには注意する。カルダモンをコーヒーに使う時は、料理に使ったさやを入れて楽しんでも十分香りが出る。カルダモンは粉になったものが販売されているので、スパイシーな香りのカルダモンコーヒーが簡単に作れる。カルダモンは、コーヒーだけでなく紅茶に入れたり、チャイに使ったりすることもある。
3. コーヒーのソムリエはいるのか?

ワインのソムリエのような人がコーヒー界にもいるのだろうか。ソムリエはレストランやワインショップで出会うことがあるが、コーヒーのテイスティングを専門にする人にはそうそう出会わない。しかし、コーヒー界にもソムリエに匹敵するカッパー(cupper)という人がいる。そして、コーヒーの鑑定をすることをカッピング(cupping)というのだ。カップ(cup)は「コーヒーの味」を意味していて、コーヒーの味や品質を見極め、評価する(ing)を絡ませてカッピング(cupping)というのである。カッピングをする時は、専用のスプーンを使用して、味と香りの鑑定を行う。コーヒーカッパーは農園の品質管理からコーヒーのカッピングまで幅広くコーヒーに関わっていて、専門の資格を有する。一般にたくさん流通しているコマーシャルコーヒーと極めて上質なスペシャリティコーヒーの明確な区別や評価ができるなど高度な技術が要求される。また、コーヒーマイスターといって、コーヒーに関する豊富な知見と基本的な技術を有し、コーヒーを通じた豊かな生活を提案することを目的にした資格もある。コーヒーマイスターの有資格者は、日本に4,452名(2017年7月現在)いる。
結論
コーヒーの世界は奥が非常に深い。豆の種類も豊富だが、さらにそれをブレンドしたり、カルダモンのようにスパイスを入れたりして楽しむと無限大の可能性が広がるのである。お気に入りの一杯を探してみようではないか。