1. マムルオックとは?
ベトナムの調味料
東京から5時間半で行くことのできる国、ベトナム。1975年まで続いたベトナム戦争の影響で世界的に見ても貧困国だったベトナムだが、経済は2000年以降順調に成長しており、インフラの整備も進んでいる。日本を初めとした海外企業も多く進出しており、更なる発展のため、高速鉄道や高速道路もプランされている。急速に発展するベトナムにはハロン湾や古都ホイアンなどの世界遺産があり、旅行先としても人気だ。旅行の楽しみと言えば食事。スパイスやハーブを多用する東南アジアの料理は日本人の口に合わないと言われているが、あっさりしたベトナム料理は日本人にも好まれる。今回紹介する"マムルオック"は、ある魚介類を使ったベトナムの調味料である。
フエ料理に使われる
マムルオックはベトナムの調味料だが、主にフエ料理に使われる。フエとは南北に長いベトナムの中部にある都市で、1802年から1945年まで続いたベトナムの最後の王朝であるグエン朝の首都として栄えた歴史を持つ。旧市街には王宮や寺院といった歴史建造物があり、観光客も多い。王朝時代、宮廷では宮廷料理を、一般市民は宮廷料理から派生した大衆料理を、そして僧侶などは精進料理を食べていた。現在でもその独特なフエの食文化は続いており、宮廷料理はレストランなどで提供されている。
2. マムルオックの原料や味は?
マムルオックの原料はエビ!
マムルオックをベトナム語で書くと"Mam Ruoc"。塩漬けにした食べ物を表す"Mam"と小エビ"Ruoc"を組み合わせた名称の通り、塩を加えたエビを発酵させて作るペースト(タレ)である。同様のペーストは色々な国で作られており、タイのカピ、マレーシアのブラチャン、インドネシアのトゥラシなどがある。また、中国でも海老を発酵させた調味料を使う。このようなペーストはまとめて"シュリンプペースト"と呼ばれており、様々なメーカーが製造している。マムルオックの原料はエビと塩で、主にダシとして使われる。
塩辛さと匂いが特徴!
エビを原料とするマムルオック、どんな味なのだろう?マムルオックはかなり塩辛いペーストである。少量でも料理の味付けや風味づけができるほど強い塩気がある。しかし、特徴的なのは味よりも匂い。発酵食品であるマムルオックには、キムチや納豆などと同様に強烈な匂いがあるのだ。その匂いは「刺激的」と表現できるほど強いが、調理に使えば香ばしい香りに変わる。ちなみに、ベトナム北部でよく使われる調味料"マムトム"も同じくシュリンプペーストだが、塩辛さはマムルオックの方が強い。
3. マムルオックはどう使う?
特徴的なフエ料理
フエはベトナムの中部に位置する小さな街である。人口600万人を超え、企業などの集まるホーチミンやハノイなどの大都市とは異なり、古くからの建物の残るこじんまりとした街並みが特徴だ。小さな街でありながら特徴的な名物料理が多いことで知られており、グルメ目的で訪れる観光客も少なくない。フエで宮廷料理を食べるツアーを組む旅行会社もある。では、マムルオックを使うフエ料理を見てみよう。
宮廷料理にも大衆料理にも!
フエ料理の中で特に有名なものはコム・ヘンとブン・ボー・フエ。野菜とナッツ、そして火にかけたシジミをご飯にのせ、シジミの汁をかけるコム・ヘンは、この地域では定番の朝食メニューである。多くのレストランではコム・ヘンと共にマムルオックを提供し、好みによって調味しながら食べる。ブン・ボー・フエはフォーによく似た麺料理で、牛骨やスパイスを煮込んだスープに米粉から作る麺が入っている。フォーとの違いは、麺と味付け。フォーの麺は平たいが、ブン・ボー・フエは太く丸い。また、薄味はフォーよりも濃くしっかりとしている。このブン・ボー・フエの味付けにもマムルオックが使われている。このほかにも、肉料理や野菜炒めなど家庭料理の味付けに幅広く使われている。
結論
珍しい調味料"マムルオック"について解説した。フエは王宮として栄え、今もなお当時の食文化の残る街である。ホーチミンのようにメジャーな都市ではないが、歴史と共に食事も楽しむことができる。機会があったら訪れ、歴史ある料理を堪能しよう!