1. 薬膳の基礎知識
薬膳とは、食べる人の体調や体質に合わせて作る料理のことである。生薬と呼ばれる漢方の原料にもなっている素材を使うことあるが、なくても問題ない。生薬という文字を目にすると途端に難しく感じるが、我々が日常的に食べている食材の中にも生薬は存在する。生姜などがよい例だ。
食材と生薬
では、食材と生薬の間には、どのような違いがあるのだろうか?薬膳における食材とは、効能が穏やかで継続的に食べても体への影響が少ないとされるもの。対して生薬は、体調不良や病を治癒する効果の高いものだと言える。
食材の特性を知る
薬膳は食材の特性を知り、暮らしに上手に取り入れるために生み出された知恵のひとつ。効果の高さを求めるのであれば、より深い知識や、生薬を利用するテクニックが必要であるが、健康を維持する目的で取り入れるのであれば、食材の特性を学ぶだけで十分に楽しむことができる。食材の特性を知ることは、薬膳の入り口に立つことにつながる。
2. 薬膳と和食材
薬膳の基礎
食材には、それぞれ特性が存在し、熱性、温性、平性、涼性、寒性といい、合わせて五性といわれる。食材が身体を温める方向に向かわせるか、冷やす方向に向かわせるかで、この5つの性質に分類される。これをバランスよく取り入れることが、健康を維持するためには欠かせない。平性をベースに、そのほか4つを上手に組み合わせ、バランスを調整することが重要だ。また旬の食材は、その季節に食べるべき栄養素が含まれていることが多いので、積極的に食したい。ただ、体調や暮らしている環境によって、取り入れるべき食材は変わるので、一概には言えないということも覚えておこう。
薬膳と和食材
代表的な和食材は、薬膳においてどのような役割があるのだろう?我々日本人の暮らしに欠かせないご飯(うるち米)は、平性に分類される。慢性疲労の解消や胃腸を中心に、体調を整える役割をしてくれる。同じく平性で知られるのが、山芋だ。漢方にも使われる山芋は、滋養強壮と疲労回復に効果があると言われている。豆腐やそばは涼性や寒性に属しており、余分な熱を排出し、デトックスの効果があるとされる、鮭や生姜、みかんは温性や熱性にあたり、体を温め、血の巡りをよくする。
3. 薬膳を日常に取り入れる
季節の薬膳・春
日本は四季のある国。実は人間の体も、季節によって変化が起きている。薬膳は、その変化が円滑に行われるようアシストする作用もある。例えば、芽吹きの季節である春は、人間の体も老廃物を外に出して、生まれ変わるための季節。花粉症や肌荒れなどが起こりやすい。そこで、デトックス効果が期待できる食材や、気の巡りをよくする食材を取り入れるとよい。
季節の薬膳・夏と秋
夏は、体に溜まった熱を取り除いてくれるトマトやきゅうり、豆腐などの食材を上手に取り入れたい。ただ、昨今は冷房で体が冷えていることもあるので、注意が必要である。胃腸の機能を高めるトウモロコシや枝豆、カツオなどもよいだろう。秋は、乾燥が気になり始める季節。薬膳においては、体を潤す食材が必要だと言われている。大根、レンコン、柿などがおすすめだ。
季節の薬膳・冬
冬は、体の冷えをいかに和らげるかが重要。体を中から温めてくれるような食材を、積極的に取り入れたい。栗やニラ、かぼちゃ、鶏肉などがおすすめだ。また、気の巡りをよくする柚子やみかんもよいだろう。
結論
薬膳は、とても奥が深い。体の状態や季節との関係、食材の組み合わせなど、複合的に考えて取り入れる必要がある。生薬を用いるとなると、これらをきちんと学ぶ必要が出てくるが、日頃から食べている食材を中心に取り入れるのであれば、もっと気楽に楽しむことができる。毎日の食卓に薬膳を取り入れるといった趣旨の書籍も、多く出版されている。興味のある人は読んでみると、暮らしが少し変わるかもしれない。