1. 鱧には毒があるので刺身はNG!

魚の食べ方の中でも刺身は人気がある。お祝い事の席だけでなく日常的に食べられる刺身だが、実は鱧の刺身はないことは知っているだろうか。鱧は高級魚の1つに数えられるが、関西地方ではよく食べられており、刺身で食べていないのは不思議に思うだろう。その理由は鱧の生態に隠されており、刺身として食べられないようになっているのだ。
鱧の血液には毒が含まれている
意外と知られていないのだが、鱧の血液には毒が含まれている(※)。毒というと怖いイメージがあるが鱧に含まれている毒は「イクシオトキシン」という種類で、食べても即死するというわけではなく、腹痛や下痢を起こす程度である。しかし毒が含まれていることに変わりはなく、少量でも食中毒症状によって苦痛を感じ、万が一大量に鱧の血液を摂取してしまった場合には命の危険もある。
鱧は加熱しないと食べられない
血液に毒があると聞くと、身は安全だと考えるかもしれない。しかし、鱧を捌いている最中に血液が身につく危険性もあり必ずしも安全だとはいえない。そうすると鱧を食べること自体が危険だと思うかもしれないが、実はイクシオトキシンは熱に弱く、加熱することで分解される。つまり加熱すれば無毒化し、安全に食べられるのだ。鱧を食べるときは加熱が必須で、これが鱧の刺身がない理由である。
2. ウナギやアナゴにも毒がある!?

鱧に毒があることは分かったが、鱧と見ためが似ているウナギやアナゴはどうだろうか。魚は見ためが似ていても分類が異なっていたり、逆に見ためが違っていても分類が同じだったりするため、なかなか判別しにくい部分がある。ここではウナギとアナゴについて詳しく見ていこう。
鱧と同じ仲間
見ためが似ている鱧とウナギ、アナゴは分類も同じだ。いずれも「ウナギ目」に分類されており、非常に近い性質を持つ。性質が近いからといって必ずしも同じ分類の魚が毒を持つわけではないが、ウナギ目の場合は同じ毒を持っている。つまり、ウナギとアナゴもイクシオトキシンという毒を持っているのだ。毒が含まれている場所も同じでウナギとアナゴの血液中に含まれている(※)。
ウナギもアナゴも刺身では食べられない
イクシオトキシンは加熱することで無毒化する。そのため、ウナギとアナゴも問題なく食べることができる。しかし、鱧と同じく生で食べるのは難しい。注意を払っていても身に血液が付着する可能性があるからだ。そのため、ウナギもアナゴも鱧同様、刺身として食べることは難しい。寿司屋に並ぶウナギやアナゴが加熱されているのも同様の理由だが、加熱することで身がふっくらとして美味しくなる。ウナギやアナゴは刺身でなくても美味しく食べられるため、加熱調理したことで生まれる味わいを楽しもう。
3. 鱧の美味しい食べ方

刺身では食べられない鱧だが、長い歴史の中でさまざまな鱧料理が生まれた。いずれも鱧の食感や味わいを堪能できる。ここでは代表的な鱧料理を紹介する。
鱧の湯引き
鱧の湯引きは茹でた鱧を氷水で〆るだけのシンプルな料理だ。しかし、骨切りした鱧を茹でることで身が丸まり花が咲いたようになり、見ためがきれいな一品だ。また、氷水で〆ることで身が引き締まり、プリプリの食感を楽しむことができる。簡単ながらもしっかりと鱧の味わいを楽しめる。梅肉ダレまたは辛子酢味噌をつけて食べるのが鉄板だ。
鱧の天ぷら
少し手間のかかる天ぷらだが、上手に揚げることができれば衣のサクッとした食感と鱧のふわっとした身の食感を楽しむことができる。鱧だけでもよいが、鱧を大葉で包んで揚げれば大葉の清涼感が鱧と組み合わさり、さっぱりとした味わいを楽しめる。鱧と同じ時期に旬を迎える夏野菜と一緒に揚げれば夏の味覚を満喫できる一品になる。
鱧鍋
鍋というと寒い時期のイメージがあるが、暑い夏に鱧鍋を楽しむのもおすすめだ。鱧と野菜の旨みが凝縮した鍋に鱧をくぐらせることで、鱧がより美味しくなる。出汁に焼いた鱧のアラを使うと余すところなく鱧の味わいを楽しめる。鱧鍋には玉ねぎを入れるのが一般的で、ぜひ大量の玉ねぎを入れて鱧鍋を味わおう。
結論
鱧の刺身がないのは鱧の血液に毒が含まれているからだ。幸いなことに加熱すれば無毒化するのだが、刺身としては食べられない。鱧と同じ分類に属するウナギやアナゴも同様の毒を血液に含んでいるため、刺身としては食べられない。しかし、加熱すれば食べられるので鱧の湯引きや天ぷら、鍋などの料理で鱧の味わいを満喫しよう。
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