1. 鱧の産地は淡路島が有名

日本は海に囲まれているため、魚を食べる機会が多い。流通技術の発達により遠い地域で獲れた魚も食卓に並ぶようになったが、それでも地域によって食べられている魚の種類は異なる。鱧もその一つだ。関東ではほとんど食べられることのない鱧だが、一方で関西ではメジャーな魚となっている。その理由は鱧の産地に隠されている。
鱧は温かい水を好む
魚の産地には海水温が大きく関係している。海水温は気温と同じで北に行くほど冷たく、南に行くほど温かくなる。魚にも生息しやすい海水温というのがあり、冷たい水を好む魚は北に、温かい水を好む魚は南に集まる。鱧の場合はどうかというと、鱧は温かい水を好む魚であるため南の地域、とくに瀬戸内や九州に集まる。そのため、鱧の産地といえば瀬戸内や九州となり、鱧の消費場所も瀬戸内海や九州に近い関西が主になったのだ。
淡路島の鱧が有名
瀬戸内や九州が鱧の産地だが、なかでも淡路島は鱧の産地として有名だ。瀬戸内海に浮かぶ淡路島では鱧が多く獲れるということもあるが、品質の高さも注目されている。もともと鱧は高級魚であるが、淡路島で獲れる鱧は小顔でスタイルがよいこと、傷が少ないことから「べっぴん鱧」と呼ばれ、とくに品質がよいとされている。品質のよい鱧を選びたい、食べたいときは淡路島産の鱧であるかどうかもチェックしてみるとよいだろう。
2. 鱧の旬はいつ?価格が安い時期は?

魚は旬の時期でないと食べられないというものではない。しかし、旬を迎えた魚は脂がほどよくのり、ほかの時期の魚と比べるとその美味しさは段違いだ。鱧にも当然ながら旬があるのだが、通常1回しかないはずの旬が鱧には2回も旬があるのだ。その理由を探っていこう。
鱧の1回目の旬は夏
鱧の旬といえば夏のイメージが強い。一般的に旬を迎えた魚は産卵期を迎え、ほどよく脂がのっている。鱧は夏に産卵期を迎えるため、鱧の旬は夏ということになる。そのため、夏の京都ではさまざまな鱧料理に舌鼓を打つことができ、京都を代表する祭りである祇園祭りでも鱧料理が供される。
鱧の2回目の旬は晩秋
なぜ、鱧に2回目の旬があるのかというと産卵を終えた鱧の行動が鍵を握っている。産卵を終えた鱧はやせ細ってしまうのだが、体力を戻すために多くの餌を食べるようになる。すると、10~11月には産卵期と同様に脂がのった状態になり再び旬を迎える。この時期の鱧は「金ハモ」や「落ちハモ」と呼ばれ、知る人ぞ知る美味な鱧なのだ。
鱧を安く手に入れられる時期は?
鱧をとにかく安く手に入れたいならば旬と旬の間、つまり夏と晩秋の間がおすすめだ。しかし、美味しい鱧を食べたいならばおすすめはできない。夏と晩秋の間に獲れた鱧は産卵を終え、やせ細っているため脂がほとんど乗っていないからだ。美味しい鱧を食べたいならば少し値は張るが、旬の時期に食べよう。
3. 鱧の旬と栄養価

味や食感が注目されがちな鱧だが、当然ながらさまざまな栄養素が含まれている。とくに旬の時期は鱧が栄養を溜め込む時期でもあるため、旬以外の時期の鱧と比べると栄養価が高くなる。しかし、そもそもどんな栄養素が鱧に含まれているか分からないと実感しにくいだろう。ここでは日本食品標準成分表(※1)を参考に鱧の栄養素を紹介していく。
ビタミンが多く含まれている
ビタミンは身体の調子を整えるのに必要な栄養素なのだが、野菜に含まれているイメージが強いのではないだろうか。実は鱧にはさまざまなビタミンが含まれているのだ。とくに多く含まれている栄養素がビタミンD、ビタミンB12、ナイアシンの3つだ。ビタミンCなどと比べると知名度が低いのだが、それぞれ重要な役割をもつ。ビタミンDは骨を形成するのに必要な栄養素、ビタミンB12はDNAやアミノ酸の合成に必要な栄養素、そしてナイアシンはさまざまな代謝に関係する栄養素でどれも欠かすことのできないビタミンだ。(※2)
皮にも栄養が含まれている
魚の身と皮の間に栄養が含まれているという話があるが、鱧の場合は皮自体にも栄養素が含まれている。その栄養素というのが、コンドロイチン硫酸だ。ビタミンのように身体に欠かせない栄養素というわけではないが、保湿や水分調整に効果があるといわれている。鱧は皮つきで提供されることが多いので、ぜひ身と皮を一緒に食べてほしい。
結論
鱧は瀬戸内や九州でよく獲れるため、関西を中心に食べられている。夏に産卵を迎えるため、鱧の旬は夏のみと勘違いしてしまうこともあるが、実は産卵を終えて食欲旺盛になった鱧は晩秋に再び旬を迎える。夏に鱧を食べ損なったら、ぜひ晩秋にリトライしてみてはどうだろうか。
(参考文献)
(※1)文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
(※2)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
(※1)文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
(※2)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
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