1. 唐辛子がぴりっと効いた料理
世界中で古くから愛されている唐辛子だが、実はかつての日本では唐辛子をメインとした料理はなかった。うどんやそばに香辛料としてふりかけるなど、ほんの少しのアクセントをきかせる脇役として親しまれる存在だったが、戦後の食の多様化にともない、唐辛子をたっぷり使った辛い料理も食卓に普及し始めた。とはいえ、現在でも強烈な辛さのものよりは、控えめな辛さのメニューのほうが一般的に親しまれている。
そんな日本の家庭料理で、唐辛子をメインに使用したメニューとして思い浮かぶのは「ペペロンチーノ」だろう。イタリア語でそのまま「唐辛子」の意味をもつペペロンチーノは、にんにくとオイル、そして唐辛子を主軸としたシンプルなパスタだ。そのほか、ししとう(甘唐辛子)の天ぷらや佃煮など、唐辛子の一種で辛みが控えめな品種であれば日本の家庭料理にもなじみ深い。
2. 激辛!世界の唐辛子料理
日本人の味覚には少々刺激が強めな唐辛子メインの料理だが、世界では驚くほど多くの国で強烈な激辛料理が食べられている。中でもタイ、中国、ブータン、韓国、インドなどの料理は刺激的なイメージがあるのではないだろうか。私たちの生活にもなじみ深いものとしては、タイ料理ではトムヤムクンだろう。エビを主役にさまざまな食材を煮込むすっぱ辛いスープで、唐辛子の辛みだけでなくレモングラスやタマリンドなどの香辛料が奥深い味を作っている。
また、中華料理で激辛といえば有名なのは四川料理だ。麻辣火鍋は麻(山椒)と辣(唐辛子)の辛さ、爽快さが日本でも一時ブームとなった。世界一辛い料理の国として知られるブータンでは、煮込み料理エマダツィが強烈だ。赤米に唐辛子のチーズ煮込みをかけるスタイルで、辛さとマイルドさの両方が楽しめる。
そのほか、韓国のキムチやインドのカレーなど、日常的に激辛料理を食べている国はとても多い。唐辛子に含まれる辛み成分のカプサイシンには発汗作用や食欲増進作用などさまざまな効果があるだけでなく、気温による食料の傷みを抑制し保存性を高める目的もあり、暑さの厳しい国で激辛料理が根付いていると考えられる。
3. 唐辛子の料理への使い方
唐辛子を料理に入れる際、さまざまな使い方を知っておけば格段に風味や辛みが味わいに生きてくる。ここでは料理に活かす唐辛子の使い方の基本を紹介しよう。
まずは生のままで利用する方法。生唐辛子はにんにくと一緒にオイル漬けにしておけば、それだけで風味豊かな万能調味料になる。また、辛さに耐性がある場合、生のまま適当に刻んで食材として料理に入れても美味しい。
乾燥させた唐辛子は、汎用性が高い。簡単な使い方は、炒め油に辛みをつける方法だ。鍋やフライパンに油と乾燥唐辛子を入れ、火にかける。弱火でじっくり炒めることで、唐辛子の辛さと香りを油に移す。唐辛子本体は取り除いても、そのまま食べてもよい。乾燥させることで日持ちもするようになるので、生唐辛子が大量に手に入った場合は干しておくのもひとつの手だ。乾燥させて粉末状にすり潰せば、料理を美味しくするスパイスとしても利用できる。
ちなみに、唐辛子は内側の種やワタの部分に辛み成分が多く含まれている。中を触る場合は手袋をしての作業をおすすめしたい。
4. 唐辛子は料理以外にも使える
唐辛子の成分は料理だけでなく、生活のさまざまなシーンで役に立つ。米びつに入れておけば虫よけになり、唐辛子エキスを散布すれば植物栽培でも防虫効果を発揮する。また、皮膚にカプサイシンが接触することで適度に神経を刺激するため、暖かさを感じるという効果も。靴の中に砕いた唐辛子を少量ガーゼなどに包んで入れることで、つま先の冷え防止としても有用だ。
また、中国や韓国、日本の一部地方においては料理以外にも魔除けとして飾るという使い方も見られる。カプサイシンの虫よけ効果が食物や農作物を守ること、身体を温めて新陳代謝や免疫力を上げることから魔除けの力をもつと考えられたとされている。このように、唐辛子は料理に使う食用として以外にもさまざまな用途で私たちの日常に役立っている。
結論
唐辛子は刺激に弱い人にとっては敬遠したい存在かもしれないが、料理をよりさわやかにしてくれるだけでなく、暮らしのさまざまな場面で役立ってくれる。辛みを引き出しすぎず好みの程度に調整するなど、自分なりの唐辛子の楽しみ方を模索すると料理の幅も広がるだろう。激辛が苦手という人も、刺激的な味が好きという人も、唐辛子の能力の高さを上手に活用してみてほしい。
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