1. ほうぼうとは?
ほうぼう(魴鮄)とは、カサゴ目ホウボウ科ホウボウ属の海水魚である。普段は浸水25~615m程度の泥砂地に生息している。頬張った頭部と円筒形の胴体などが特徴であり、成魚になると全長40cm程度になり、体色も黒色から赤色に変化する。古くは高級魚とされていたが、近年は安定的に漁獲できるようになり大衆魚となった。甘みが強く、特に産卵前の秋~冬は脂がのっていて美味しい。
ほうぼうの由来と別名
ほうぼうの名前の由来はいくつかあるが、「這う魚(はうさかな)が訛ったという説」や「鳴き声がほうぼうと聞こえるという説」が有力である。また、江戸時代の頃は上流階級が食べていたことから「君魚(きみうお)」と呼ばれていた。そのほかにも地方名にキミ、キミヨ、ドコ、カナガシラなどがある。英語圏では「Searobin」または「Bluefin searobin」と呼ばれている。
ほうぼうの主な産地や旬
ほうぼうは、北海道南部から南シナ海まで広範囲に生息している深海魚である。全国的に漁獲されているが、東京都中央卸売市場の「市場統計情報」によれば(※1)、千葉県・長崎県・兵庫県・愛媛県で獲れたほうぼうが多く流通している。また、一般的な旬は11月~翌年2月頃とされているが、同統計によれば2020年の年間取引数量は約220トンであり、特に3~4月頃に多く取引されている。
2. ほうぼうの特徴や魅力とは?
ほうぼうは見た目がユニークではあるものの、その身や内臓(珍味)は非常に美味しいといわれている。そのため、大衆魚になった近年でも、時期や大きさによっては1尾数千円という高値で取引されることもある。ここではそんなほうぼうの特徴や魅力について確認しておこう。
その1.甘みがあり脂ののりがイイ
ほうぼうの身はクセがなく甘みが強いため、非常に美味しいことで知られている。また、産卵前のほうぼうは脂ものっており、トロトロとした柔らかさで特に美味しい。そのため、鮮度のよいものは刺身にして食べることも多いという。なお、ほうぼうは頭が大きいため、可食部が少ない(歩留まりが悪い)という欠点がある。お店で購入するときは、できる限り大きいものを選ぶようにしよう。
その2.アラやキモなども美味しい
ほうぼうは歩留まりが悪いものの、その一方でアラやキモも美味しく食べられるのが特徴である。アラの部分からはいい出汁が出るため、煮付けや汁物などにすると美味しい。また、浮袋や内臓などは湯がいてからポン酢をかかえてサッパリと食べたり、昆布だしと一緒に煮込んで「ちり鍋」にしたりして食べることが多い。このようにほうぼうは、余すところなく楽しめる魚となっている。
3. ほうぼうの基本的な栄養価
文部科学省の「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」には(※2)、ほうぼう(生)の栄養価が収録されている。これによれば「ほうぼう100gあたりの栄養価」は以下のようになっている。
ほうぼう(生)100gあたりの栄養価
- エネルギー:110kcal
- たんぱく質:19.6g
- 脂質:4.2g
- 炭水化物:Tr
- 脂肪酸
・飽和脂肪酸:0.96g
・一価不飽和脂肪酸:1.04g
・多価不飽和脂肪酸:0.85g - ビタミン
・ビタミンA(レチノール):9μg
・ビタミンD:3μg
・ビタミンE:0.5mg
・ビタミンK:0μg
・ビタミンB1:0.09mg
・ビタミンB2:0.15mg
・ナイアシン:5mg
・ビタミンB6:0.44mg
・ビタミンB12:2.2μg
・葉酸:5μg
・パントテン酸:0.82mg
・ビオチン:-
・ビタミンC:3mg - ミネラル
・ナトリウム:110mg
・カリウム:380mg
・カルシウム:42mg
・マグネシウム:34mg
・リン:200mg
・鉄:0.4mg
・亜鉛:0.5mg
・銅:0.04mg
・マンガン:0.05mg
・ヨウ素:-
・セレン:-
・クロム:-
・モリブデン:- - 食物繊維:0g
4. 美味しいほうぼうの選び方
ほうぼうは、一般的なスーパーや魚屋などでも見かけることがある。お店などでほうぼうを選べるときには、以下のポイントを参考に美味しいものを見極めよう。
美味しいほうぼうを選ぶポイント
- 腹部:しっかりと張りがあり硬いもの
- 目:キレイで色がすんでいるもの
- 体表:鮮やかな赤色で鱗がキレイなもの
- 大きさ:大きくてふっくらしているもの
5. ほうぼうの基本的な捌き方
ほうぼうは丸のまま売られていることが多く、基本的には捌いてから調理することとなる。そこでほうぼうの基本的な捌き方を紹介する。以下の手順に従って、ほうぼうを上手に捌いてみよう。
ほうぼうの捌き方・手順
- ウロコ落としなどでほうぼうのウロコを落とす
- 表面の腹ビレ・胸ビレから斜めに包丁を入れる
※裏面も同様に包丁を入れておく - お腹に包丁を入れて内臓を取り出し、頭を落とす
- 血合いに包丁を入れておく
- 水で鱗と血合いを洗い流し、水分を拭き取っておく
- 腹側から中骨に沿って包丁を入れる
- 背側からも同様に中骨に沿って包丁を入れておく
- 腹側から中骨に沿って関節を切って身をはがす
※(6)~(8)を裏身でも同じように行う
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6. ほうぼうの美味しい食べ方3選
新鮮なほうぼうは刺身にするのがおすすめだが、刺身以外にも煮付け・塩焼き・揚げ物・汁物・蒸し物などさまざまな料理で美味しく食べられる。また、ほうぼうの浮袋や内臓などはポン酢和えにしたり、ちり鍋にしたりするのがおすすめ。そんなほうぼうの美味しい食べ方を3種類紹介しておこう。
食べ方1.ほうぼうの煮付け
煮付けは、ほうぼうの定番料理の一つ。頭からしっぽの先まで丁寧に煮込んで作る「ほうぼうの煮付け」は、うま味がいっぱいで非常に美味しい。作るときは3枚におろす必要はないので、ウロコと内臓だけ取り除いておこう。そして、砂糖・醤油・酒・みりんなどを入れた鍋に下処理したほうぼうを入れて中火で10分程度煮たら完成だ。お酒のおつまみにもおすすめの一品である。
食べ方2.ほうぼうの塩焼き
塩焼きも人気があるほうぼう料理の一つである。塩焼きにする場合も煮付けと同じく、ウロコと内臓だけ取り除いておく。そして、酒と塩を振りかけて1時間程度冷蔵庫で寝かせてから、オーブントースターなどで焼くようにしよう。こんがりと両面に焼き色が付いたら「ほうぼうの塩焼き」の完成である。フライパンで焼くときは「フライパン用アルミホイル」を使うとキレイに焼くことが可能だ。
食べ方3.ほうぼうの肝ポン和え
ほうぼうの浮袋や内臓を使って「肝ポン和え」を作るのもおすすめ。作るときは酒を入れた水に浸して臭みを取っておこう。そして、適当な大きさにほぞ切りにしてから、沸騰したお湯で十分火を通しておく。その後、冷水に取って、ポン酢醤油と和えたら完成だ。なお、ほうぼうの内臓には食中毒を起こすアニサキスが寄生している場合がある。少なくとも60℃以上で1分間は加熱しよう(※3)。
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結論
昔は高級魚として食べられていた「ほうぼう」だが、最近は比較的安い値段で購入できるようになっている。また、旬の時期は11月~翌年2月頃であるが、通年スーパーや魚屋などで売られている。その身・アラ・内臓などは非常に美味しく、しかもさまざまな料理に使うことが可能だ。捌くのが大変なら、頭やしっぽ付きで食べられる煮付けや塩焼きなどにするとよいだろう。
【参考文献】
- ※1:東京都中央卸売市場「市場統計情報(月報・年報)」
https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/torihiki/geppo/ - ※2:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/ - ※3:厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html
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