1. チョコレートとテンパリング

チョコレートとは
チョコレートと人間の歴史は、非常に長い。チョコレートの原料となるカカオと人間の関わりは、なんと紀元前からあったというのだ。そもそも神秘的な力をもつ植物とされており、祈祷や薬、貨幣など、現在の甘いお菓子というイメージとはかけ離れた形で活用されてきた。しかも、19世紀になるまでチョコレートは飲み物という概念であった。
現在、チョコレートというとカカオの樹の果実の中にある種をパルプと呼ばれる果肉に包まれた状態で発酵、乾燥させる。ローストなどの加工を施し、皮を取り除き、中心部分のカカオニブを取り出す。カカオバターと呼ばれる脂肪分を豊富に含んでいるカカオニブをすりつぶしたものがカカオマスだ。これにミルクや砂糖などをまぜ、成形すると我々がよく知るチョコレートになる。
テンパリングとは
チョコレートを食べたときのなめらかな口溶け。これは25℃くらいで溶けはじめ、32℃くらいで完全に溶けるカカオバターによるものである。テンパリングとは、このカカオバターの結晶を一旦分解し、同じ構造に作り直す作業を指している。結晶を均一化することで融点が揃い、ツヤがあり、常温ではぱきっと折れるのに口に入れるととろけるあのチョコレートが完成するのだ。
テンパリングはサイエンス
カカオバターは、凝固したときに6タイプの結晶になるとされている。それぞれ、大きさも融点も異なり、そのなかでもV型という形の結晶が優良なチョコレート作りに欠かせない。V型の結晶だけを整列させた状態にするのがテンパリングの意味である。なんの脈略もなく、チョコレートを溶かし、冷やして固めるとさまざまなタイプの結晶が混じり合い、柔らかく、なんともいえないポロポロっとした食感のチョコレートになってしまうのだ。表面に白いブルームと呼ばれる斑点が現れるのもこのためである。
2. チョコレートのテンパリング方法

テンパリングは、温度調整が鍵となる。プロは台の上にチョコレートを流し、大胆にテンパリングするが、ここでは、家庭で行える方法を紹介していこう。
まずはチョコレートを温めて溶かす。チョコレートが完全に溶ける温度は32℃といわれているが、それは見た目の問題。カカオバターの結晶をすべて溶かすには、45〜50℃まで温度を上げる必要がある。湯せんにかけて溶かすが、このとき湯がチョコレートに入らないようにすることも重要だ。常にかき混ぜながら溶かしたら、次は氷水を張ったボウルに移し、静かにかき混ぜて、28℃まで温度を下げる。再度湯せんにかけて、30℃くらいまで上げたらできあがり。
できあがりの合図
金属のヘラなど、平らなものにチョコレートをすくい取り、しばらく置いて美しく固まれば成功。テンパリングのあとは、チョコレートの温度を27〜30℃の間に保つことが重要だ。ちなみにぱきっと音を鳴らして折れるチョコレートは、美しくテンパリングされている証。
注意点
テンパリング後に、32℃以上になってしまった場合、もう一度、最初から行う必要がある。温度が上がらないようにするためには、冷たい水で絞った布巾を用意して、ボウルの底や側面をふくといい。これだけで温度の上昇を抑えることができる。上記の方法以外にも、電子レンジを使った方法も登場しているので、いくつかトライしてみるといいだろう。
3. チョコレートのテンパリングを成功させる秘訣

チョコレート選び
チョコレートのブランド、種類によって、溶解温度には違いがある。これはカカオバターの含有量や乳成分の有無によるもので、これらを確認してからテンパリングを行うのが正解だ。テンパリングにおすすめのチョコレートは、フレーク状のもの。最低でも200gはないと上手に行うことができない。
準備は完璧に
チョコレートのテンパリングは、温度調節が必須。食品用の温度計がなくては行うことができない。そのほか、耐熱ボウル、湯、氷水、ヘラ、布巾など、必要なものをすべて揃えてから始めるのが鉄則。成功と失敗の分かれ目は、1℃単位で訪れる。途中であれこれ準備しているようでは、間に合わないのだ。
使い道
テンパリングしたチョコレートは、そのまま型に入れて固めたり、コーティングに使うのが正解。急冷しすぎず、16〜18℃程度でゆっくり冷やし固めよう。
結論
テンパリングは、チョコレートを美しく、そして美味しい状態へ導く方法である。チョコレートの中にあるカカオバターの結晶の状態を均一に揃えることで、温度調節が欠かせない。成功の秘訣は、準備から仕上げまで丁寧に行うこと。プロのパティシエになった気分で、挑戦してみてほしい。
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