1. 行者にんにくの栄養成分:アリシン
行者にんにくは、にんにくにも勝る強い香りを特徴とする山菜である。修行僧の滋養源であったという説もあるほど、栄養的には優れた食材であることでもよく知られている。にんにくよりも強いといわれる香りは、行者にんにくが含むアリシンが原因である。まずは、そのアリシンの効能について見てみよう。
その香りは食欲増進の効能あり
アリシンは、硫黄を含む植物成分であるアイリンが原因で生まれる成分とされている。自然界においては害虫や動物を避けるために発せられるといわれるアリシン独特のにおいは、人間にとっては食欲増進の効果をもたらすのである(※1)。またアリシンには、カビやピロリ菌内のたんぱく質と結びつき、殺菌作用を示すことも特筆すべきかもしれない(※1)。
行者にんにくが豚肉と相性がよい理由もアリシン
行者にんにくのレシピには、豚肉と合わせるものが多い。これも、アリシンに理由があるのである。豚肉には、水溶性ビタミンB1が豊富に含まれている。アリシンはこのビタミンB1と結合し脂溶性を増すため、腸内におけるビタミンB1の吸収を高めるのである(※1)。アリシンはまた熱に弱いという性質を有しているため、行者にんにくも生で食べるとよりその効能を感じることができるかもしれない。
2. 行者にんにくの栄養成分:β-カロテンやビタミンK
行者にんにくには、アリシンのほかにもβ-カロテンやビタミンKなどのビタミン類も豊富に含まれている。これらの栄養は、どのような働きをしてくれるのであろうか。
β-カロテンとは
カロチノイドの中でも分子中に酸素を含まないものをカロテンと呼ぶ。カロテンは抗酸化作用を示すものが多く、生活習慣病の予防に役に立つといわれている。β-カロテンを酸化還元することによって、人工的にビタミンAを吸収できるというメリットもある(※2)。ビタミンAは、視覚、聴覚、生殖などの機能維持、成長促進、皮膚や粘膜などの維持に効能がある栄養素である。β-カロテンは腸ねん膜でビタミンAとなり、健康に寄与してくれるのである。また、安全な色素として乳製品の着色料に使用されることもある栄養分である。
ビタミンKとは
ビタミンKには血液凝固を促進する作用がある(※3)。ビタミンKは、血液凝固機能を正常に維持する作用があるため、抗出血性ビタミンの別称があるほどである。ビタミンKが欠乏すると、血液凝固時間が延長して出血しやすくなるといわれているのである。
いずれも脂溶性ビタミン
行者にんにくに含まれるβ-カロテンもビタミンKも、いずれも脂溶性ビタミンである。脂溶性ビタミンは、血液の凝固や視覚に関するさまざまなプロセスに関与する性質を有している。そのため、油を使用し天ぷらなどに料理すると効率よく摂取できる。
3. 行者にんにくの栄養:食べ過ぎに注意
行者にんにくは、自然の恩恵を受けた栄養価の高い山菜である。また、希少性が高いことでもよく知られている。入手が難しく食べられる期間が短い行者にんにく、ついつい食べ過ぎてしまうこともあるかもしれない。しかし、行者にんにくの食べ過ぎには注意が必要である。その理由を見てみよう。
注意すべきアリシンの特徴
メリットが多いアリシンであるが、一方で反応性が強く胃粘膜を傷つけたり、腸内細菌を死滅させてしまう可能性も否定できないとされている(※1)。とくに、生で食べすぎない用心が必要かもしれない。アリシンの影響で、腹痛や吐き気を誘発する可能性もあることをよく覚えておこう。
結論
行者にんにくは古来、修行者たちの栄養源として愛好されてきたという言い伝えがあるだけに、数ある山菜の中でもとくに珍重されている。とくに、にんにくのような強い香りを生むアリシンは、食欲の刺激や殺菌作用のメリットが多い。ビタミン類も多く含まれているため、行者にんにくは率先して春の食卓にのせたい食材だ。とはいえ、アリシンはその殺菌作用から刺激が強すぎるという短所もあるので、食べ過ぎには注意しよう。
(参考文献)
※1 日本薬学会環境・衛生部会 ニンニクと健康
http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kanei/topics/topics59.html
※2 厚生労働省 脂溶性ビタミン
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042635.pdf
※3 厚生労働省 ビタミンK
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4l.pdf
※1 日本薬学会環境・衛生部会 ニンニクと健康
http://bukai.pharm.or.jp/bukai_kanei/topics/topics59.html
※2 厚生労働省 脂溶性ビタミン
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042635.pdf
※3 厚生労働省 ビタミンK
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4l.pdf
この記事もCheck!