1. 食物繊維とは?

健康や美容について語るとき、食物繊維という単語はよく耳にする。文字面から繊維質のものであることを想像しがちな食物繊維だが、実はねばねばしていたりさらさらしているものもある。(※3)食物繊維は、大腸まで達して腸内環境を整える作用を持っている。(※3)成人男性が1日に摂取すべき食物繊維の目標量は21g以上である。(※2)
その食物繊維には、水溶性と不溶性の2つの種類がある。それぞれのタイプを説明する。
水溶性食物繊維とは?
文字通り水に溶ける性質を持つ水溶性食物繊維は、植物性の食材に由来するものが多い。ペクチンやアルギン酸がそれにあたる。これらの食物繊維は水に溶けてゼリーのような形状となり、さまざまな働きをする。
たとえば食後の血糖値上昇を抑制したり、コレステロールを排出させるなど、生活習慣病の予防に寄与する作用が多い。ナトリウムを排出する働きもあるため、高血圧予防の一助ともなる。(※2)
不溶性食物繊維とは?
水に溶けない食物繊維には、植物に由来するセルロースなどのほか、動物性の食材に存在するキチンがある。不溶性食物繊維には、水分を吸収して便のかさを増やす作用がある。こうすることで、腸内はより刺激されて排便が順調に行われるのである。(※2)また腸内細菌のためのエサとなり、新たな菌を生み出す働きもある。(※3)
2. 食物繊維の効果効能

食物繊維は、大腸まで到達する栄養成分として、排便を助けて腸に働きかけをする作用が主なものとされてきた。しかし近年、糖尿病をはじめとする生活習慣病との関連も注目されるようになり、食物繊維の栄養的価値が見直されている。(※4)
とくに近代に入って、穀物の精製化が進み、日本人にかぎらず食物繊維の摂取不足は世界規模における問題となっている。食物繊維は便秘や大腸がんなどの腸の疾患にかぎらず、虚血性心臓病や胆石などの疾病を予防する働きもあるとされるようになった。(※4)
大腸内で分解される食物繊維はビフィズス菌をはじめとする数々の善玉菌のエサとなり、これによって腸内環境が改善される。国立研究開発法人理化学研究所の辨野義己教授によれば、多くの病気の原因が腸内環境にあるとされている。(※5)つまり、腸内環境を改善する食物繊維の摂取は、健康維持へと直結する可能性も高いのである。
3. もやしの種類

もやしは野菜の名前ではない
もやしというとスーパーで売られているものを想像するが、実際にはもやしとは穀類や豆などの種子を暗所で人為的に発芽させたものを指す。大豆や緑豆がその代表であるが、かいわれ大根やアルファルファもその仲間である。近年は、食味が異なるさまざまなもやしの種類が増えた。代表的なもやしについて、それぞれ説明する。
大豆もやし
大豆もやしとは、大豆の豆の部分がしっかりと残る、歯ごたえのよいタイプである。省略して豆もやしとも呼ばれ、ナムルなどの韓国料理にも使われる。納豆などの原料にもなる小粒のタイプを使った大豆もやしは、江戸時代から日本の食卓に存在していたとされる。豆の部分が煮崩れしないため、鍋物にも向いているもやしである。
ブラックマッペもやし
ブラックマッペもやしには、黒豆もやしの別名がある。その名の通り、煮豆にする黒豆によく似た色をした豆が原料である。もやしそのものの歯ごたえのよさが特徴であり、古くから日本にあるもやしとして愛され続けている。
りょくとうもやし
りょくとうもやしは、緑豆もやしと書く。日本で出回っているもやしの多くは、このりょくとうもやしである。緑豆は青小豆とも書き、中国原産で春雨の原料でもある。みずみずしさやしゃきっとした食感でよく知られており、さまざまな料理に使用される。
アルファルファもやし
もやしは植物の種類ではなく豆や穀類の発芽したものを指すため、アルファルファの名で知られる野菜も広義ではもやしの一種なのである。アルファルファはマメ科ウマゴヤシ属の植物で、中央アジア原産とされている。日本には江戸時代に到来したものの食卓には普及せず、明治時代に牧草として栽培されていたことが記録されている。生でも食せる食べやすさが見直されて、近年はスーパーでよく目にするようになった。
4. もやしの食物繊維含有量

それでは、それぞれの種類のもやしにどの程度の食物繊維が含まれているか見てみよう。文部科学省の食品成分データベースの数字は、100g当たりのものである。今回は、もやし1袋およそ200gの食物繊維の含有量もともに紹介する。(※6)成人男性の食物繊維の摂取目標量は21g以上/日であることも考慮に入れて、その数字を見てほしい。
もやしの食物繊維量(100gあたり:200g(一袋)あたり)
- 大豆もやし:2.3g:4.6g
- ブラックマッペもやし:1.5g:3.0g
- りょくとうもやし:1.3g:2.6g
- アルファルファもやし:1.4g:2.8g
5. もやしの食物繊維量は調理で変わる?

もやしは生で食べることがなく、加熱して食べるタイプが大半である。アルファルファもやしのようにサラダとして楽しめるタイプは別として、もやしは火を通すことで食物繊維量が大きく変化するのだろうか。主なもやしの生と加熱後の食物繊維含有量を見てみよう。(※6)
もやしの食物繊維量(生100gあたり:加熱後(茹で)100gあたり)
- 大豆もやし:2.3g:2.2g
- ブラックマッペもやし:1.5g:1.6g
- りょくとうもやし:1.3g:1.5g
数字を比較すると、加熱前後では大きな変化はない。もともと豊富な食物繊維量を誇る大豆もやしは、加熱により0.1g減少するが、それ以外のもやしはわずかに増加する。いずれにしても、加熱することを躊躇するほどの相違ではない。
6. 食物繊維の多い食材

積極的に摂取したい食物繊維であるが、具体的にどのような食材により多く含まれているのだろうか。豆類や穀類はとくに、食物繊維の含有量が多いイメージがある。それぞれのカテゴリーから食物繊維が多いものを紹介する。ぜひ積極的に食生活に取り入れてほしい。
穀類
主食としてお腹の持ちにも貢献してくれることが多い穀類。食物繊維の含有量が多い穀類には、ライ麦や大麦、オートミールなどが挙げられる。これらの食材を、意識して摂取すればより多くの食物繊維を取り入れることができるだろう。
食物繊維量が多い穀類とその量100g当たり(※7)
- オートミール:9.4g
- ライ麦パン:5.6g
- 押し麦めし:4.2g
豆類
豆類にもとくに多くの食物繊維が含まれている。日本伝統の食材には大豆や小豆を原料とするものも多く、抵抗なく食べることができるのも豆類の特長である。食物繊維量がとくに多い豆には、インゲンマメや小豆がある。また、大豆を原料とするおからも、ぜひ頻度を上げて食べてほしい。
食物繊維量が多い豆類とその量100g当たり(※8)
- インゲンマメ(ゆで):13.6g
- おから(生):11.5g
- 小豆全粒(ゆで):12.1g
野菜類
野菜類にも食物繊維が含まれているというイメージは容易に浮かぶが、実際にどのような野菜にとくに多く含まれているのだろうか。突出しているのは切り干し大根である。香味として大活躍してくれるしそ、独特のねばりが魅力のモロヘイヤも食物繊維量が多い。これらの食材は意識してメニューに取り入れたいものである。
食物繊維量が多い野菜類とその量100g当たり(※9)
- 切り干し大根(乾):21.3g
- しその葉(生):7.3g
- モロヘイヤ茎葉(生):5.9g
結論
食物繊維は排便をスムーズにするだけではなく、腸全体に影響を及ぼす重要な栄養素である。(※2)とくに近年注目される腸内環境の改善のためには、食物繊維は意識して取り入れる必要がある。気軽に料理に活用できるもやしには、しっかりと食物繊維が含まれている。それぞれの食感を楽しみながら、さまざまな種類のもやしで料理を楽しんでほしい。
(参考文献)
1.文部科学省「食品成分データベース(野菜類/(もやし類)/だいずもやし)」
2.公益財団法人長寿科学振興財団「食物繊維の働きと1日の摂取量」
3.厚生労働省「食物繊維の必要性と健康」
4.小学館「日本大百科全書(食物繊維)」
5.自由国民社「現代用語の基礎知識(いろんなブームがあったけど...腸内環境が良くなれば健康になれるのか?【2019】)」
6.文部科学省「食品成分データベース(野菜類/(もやし類)/)」
7.文部科学省「食品データベース(穀類)」
8.文部科学省「食品成分データベース(豆類)」
9.文部科学省「食品成分データベース(野菜類)」
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