1. エアコンの「平均使用年数」とは
総務省統計局が5年ごとに実施している「全国消費実態調査(現・全国家計構造調査)」(※1)によると、全世帯におけるエアコンの普及率は86.4%であった(平成26年度調査)。つまり、エアコンは9割近くの世帯で普及しているということだ。まずはエアコンの寿命の前に、平均使用年数について知っておこう。
エアコンの平均使用年数
内閣府が行った平成30年3月までの1年間の消費動向調査(※2)における「主要耐久消費財の買替え状況」によると、エアコンの平均使用年数は13.6 年であった。すべてが寿命というわけではないが、買い替え理由を見ると故障によるものが全体の69.1%を占めていた。
携帯電話やデジタルカメラなどと比べてみると分かるが、エアコンは使えるうちに交換するよりも、寿命などで故障するまで使い続ける方が多い傾向にあるとみてよいだろう。
携帯電話やデジタルカメラなどと比べてみると分かるが、エアコンは使えるうちに交換するよりも、寿命などで故障するまで使い続ける方が多い傾向にあるとみてよいだろう。
設計標準使用期間を10年とするエアコンが多い
経年劣化が原因の事故を防止する目的で、平成21年から「長期使用製品安全点検制度」が施行されている。エアコンは同制度における「設計標準使用期間」「点検期間」などの表示義務の対象だが、その設計標準使用期間を算出するにはまず使用条件を明確にする必要がある。以下は、JIS(日本産業規格)が制定した同制度におけるエアコンの使用条件だ。
- 冷房室内温度:27℃
- 暖房室内温度:20℃
- 東京モデル:冷房112日間(1日9時間使用)、暖房169日間(1日7時間使用)
上記を元に、大手エアコンメーカーの多くは設計標準使用期間は10年としている。上述した平均使用年数が13.6 年であることを考えると、概ね設計標準使用期間を数年上回る頃に寿命を迎えたり故障したりするケースが増えると考えられる。
エアコンの部品保有期間は9年を下回ることはできない
エアコンの補修用性能部品保有期間を調べたところ、製造終了から10年だった。つまり製造が終了しても、在庫さえあれば10年間は部品交換をともなう修理が可能ということになる。ちなみに全国家庭電気製品公正取引協議会による特定製品は、補修用性能部品表示対象品目と保有期間が定められている。エアコンはその対象品目であり、保有期間は9年を下回ることはできない。
したがって、寿命ではないが故障したという場合でも、製造終了から9年以内であれば(かつ在庫があれば)修理できる可能性がある。
したがって、寿命ではないが故障したという場合でも、製造終了から9年以内であれば(かつ在庫があれば)修理できる可能性がある。
2. エアコンの平均寿命は?
では、エアコンのリアルな寿命というのはどれくらいなのだろうか?
寿命も10〜13年と考えてよい
日常的に使っているかどうか、お手入れはしているかどうかなどさまざまな要因に依存するが、エアコンの寿命は10〜13年程度と考えてよいだろう。もちろん、使い方によっては5年で寿命を迎えることもあるだろうし、15年使い続けられることもあるかもしれない。
3. エアコンの寿命が近づいているサイン
エアコンの寿命が近づくと、さまざまな症状となって現れることがある。エアコンからのサインだ。お使いのエアコンが以下の症状に当てはまる場合、寿命が近いことが考えられる。
漏電ブレーカーが頻繁に落ちる
契約しているアンペア数が少ないことも考えられるが、それ以外にもエアコン内部でショートや漏電が発生していることも考えられる。危険なのですぐに使用を中止しよう。
異臭がする
異臭はエアコン内部でカビが発生していたり、侵入した害虫などの死骸が腐敗していたりすることが考えられる。フィルターや吹き出し口などのカビは取り除けるが、内部は業者でなければキレイにできない。また焦げたにおいは、内部でショートしているなどが考えられる。
室内機から水漏れがする
一時的な水漏れなら、大量に発生した結露が原因の場合がある。フィルターの掃除などをして様子を見よう。水漏れが続く場合はドレンホースが折れ曲がっていたり、詰まっていたりすることが考えられる。
室外機から水漏れがする
冷媒ガスが漏れているおそれがある。取り付けたばかりであれば施工不良も考えられるが、それ以外の場合は配管の劣化による亀裂や、室外機を移動させた際に抜けたといったことが原因かもしれない。
異音がする
室内機の送風ファンと室外機のコンプレッサーのいずれかもしくはその両方に、何らかのトラブルが生じているおそれがある。
エアコンが操作できない
本体の電源プラグを抜いて再起動したり、リモコンの電池を入れ換えたりしても解消されない場合、本体もしくはリモコンのいずれか、または両方が故障しているおそれがある。
冷房・暖房機能が低下した
フィルターの目詰まりなどが原因であればお手入れで解消できることもあるが、そうでなければ冷媒ガスが漏れているおそれがある。
一例だが、エアコンの寿命が近づいているときはこうした症状が見られる。リモコン操作などは電池切れといった初歩的なトラブルも想定されるが、まずは取扱説明書を確認し、改善しない場合はメーカーへ相談しよう。
一例だが、エアコンの寿命が近づいているときはこうした症状が見られる。リモコン操作などは電池切れといった初歩的なトラブルも想定されるが、まずは取扱説明書を確認し、改善しない場合はメーカーへ相談しよう。
4. エアコンを買い替えるか修理するかの判断基準
続いて、エアコンの寿命が近いときに上記のような症状が現れた場合、買い替えるか修理するかの判断基準を解説する。
買い替えるか修理するかの判断基準は?
明らかに寿命を迎えたエアコンであれば買い替えるしかないが、そうでない場合は修理すべきかどうか迷うこともあるだろう。冒頭でもお伝えしたように、メーカーが部品を保有している期間は製造終了から9〜10年程度だ。
したがって故障したエアコンが製造終了から10年以上経過しているのであれば、買い替えたほうがよい。10年未満でも、新機種が登場しておりより省エネ性などが向上しているエアコンがあれば買い替えをおすすめする。
一方、メーカー保証が残っている期間や、購入してから5年など年月が浅いときは修理を検討しよう。ただし修理代が数万円を超えるといった場合は、買い替えたほうがよいケースもある。
したがって故障したエアコンが製造終了から10年以上経過しているのであれば、買い替えたほうがよい。10年未満でも、新機種が登場しておりより省エネ性などが向上しているエアコンがあれば買い替えをおすすめする。
一方、メーカー保証が残っている期間や、購入してから5年など年月が浅いときは修理を検討しよう。ただし修理代が数万円を超えるといった場合は、買い替えたほうがよいケースもある。
5. エアコンの寿命を縮めないための使い方のコツ
電気代が高額になりがちなエアコンだが、故障となれば修理代も安くはない。できればエアコンは長く使用したいところだ。続いては、エアコンの寿命をできるだけ縮めないようにするための使い方のコツをお伝えする。
フィルター掃除はこまめに行う
エアコンのフィルターはホコリが溜まりやすい。ホコリを溜めたままにすると空気循環が悪くなり、内部基盤やファンなどにも負荷がかかる。結果的に、劣化を招き寿命を縮めることにつながってしまう。負荷が高いと消費電力も多くなり、電気代も膨らんでしまう。経済的に使用するためにも、フィルターの掃除は重要だ。
オンオフの頻度は少なめにする
エアコンは、起動時および指定温度に達するまでに多くの電力を消費する。頻繁にオンオフを繰り返すと起動する回数が増え、電気代がかさむとともにエアコン自体の寿命を縮めかねない。もちろん必要なときは仕方がないが、極力オンオフの頻度は減らすように心がけよう。
室外機の置き場の再考とメンテナンスを行う
室外機周辺をチェックし、空気循環が悪いと感じたら配置を再考しよう。あるいは、物があるせいで空気循環を悪化させているとすれば、物をどかすなどしよう。あわせて室外機のクリーニングや、直射日光が当たるようならカバーをかけるといった対策をして、少しでも寿命を縮めない工夫を取り入れよう。
月に1回は「ならし運転」をする
エアコンは使いすぎるのも寿命を縮めるが、長期間使わないのも劣化を早める要素となる。エアコンが不要の季節であっても、月に1回は送風などでならし運転をするとよいだろう。
定期点検と専門家によるエアコンクリーニングを行う
エアコンは数年使用する内に、手入れのできない内部に汚れが溜まり機能が低下する。そこで3〜5年を目安に定期点検を行い、シーズン前には専門家によるエアコンクリーニングをするとよい。定期点検とクリーニングで、エアコンの負荷が軽くなり劣化や故障を未然に防ぐことになる。結果的にエアコンを経済的に使用し、寿命を延ばすことにつながるだろう。
エアコンの洗浄は自身でもできるが、樹脂部分の割れや排水経路の詰まり、水漏れ、故障の原因となることもある。ほとんどのメーカーでは、専門家によるクリーニングを推奨しているようだ。
エアコンの洗浄は自身でもできるが、樹脂部分の割れや排水経路の詰まり、水漏れ、故障の原因となることもある。ほとんどのメーカーでは、専門家によるクリーニングを推奨しているようだ。
6. エアコンのフィルターの掃除方法
使用頻度にもよるが、エアコンのフィルターは定期的に掃除することが大切だ。簡単なので、やり方を覚えておこう。ただしメーカーや機種によって若干、異なる場合がある。先に取扱説明書をチェックしよう。
用意するもの
- 掃除機
- 汚れてもよい歯ブラシ
エアコンのフィルターはこれだけあれば十分だ。掃除機はハンディタイプが便利だがなければ一般的なものでよい。
エアコンのフィルターの掃除方法
- 室内機のフィルターを外し、掃除機でホコリを吸い取る
- 残ったホコリは浴室のシャワーなどで洗い流す
- 風通しのよい日陰に干す
- 室外機正面のフィルターのホコリを掃除機で吸い取る
- 残ったホコリを使い古しの歯ブラシなどで取り除く
- 室外機側面のフィルターも同様の手順でホコリを落とす
- 洗って干しておいたフィルターが完全に乾いたら元へ戻す
なお室外機側面にはフィン(金属のフィルターのようなもの)がある。フィンは熱交換に欠かせない重要なパーツなので、強い力を与えないように気をつけよう。
7. 寿命を迎えたエアコンの処分方法と注意点
残念ながら寿命を迎えてしまったエアコンは処分しなければならない。正しい処分方法について知っておこう。
エアコンの処分方法
買い替えるのであれば、新しく購入した販売店に引き取ってもらうとよいだろう。あるいは郵便局で家電リサイクル券を購入して、自治体の指定引取場所へ持参する方法もある。または、自治体が指定(委託)している回収業者に回収を依頼するのでもOKだ。
一般のごみとしては処分できない
エアコンは家電リサイクル法によって適切な処分方法が決められている家電である。面倒だからと、間違っても無断で一般のごみ捨て場に廃棄することだけはやめよう。
違法業者に回収を依頼しない
ご家庭から出る廃棄物は「一般廃棄物」である。これを回収できるのは「一般廃棄物処理業許可」を得ており、かつ自治体から委託を受けている業者のみである。「産業廃棄物処理業許可」や「古物商」では回収できないので、トラブルを避けるためにも依頼してはならない。とくに、大音量かつ低速で巡回している業者、チラシを配布している業者、ネットで募集している業者などは自治体の委託を受けていない確率が高いので気をつけよう(※3)。
8. 新しいエアコンを選ぶときのポイント
寿命を迎えたエアコンを処分する場合、あわせて新しいエアコンを購入することになるだろう。もちろん、好きなメーカーや機種、ほしい機能や価格などから絞り込むことになるわけだが、それ以外にも着目しておきたいポイントがある。まとめたので確認していこう。
適用畳数を確認する
部屋の広さと、エアコンの適用畳数が合っているかを確認することは基本だ。部屋の広さに対して適用畳数の小さいエアコンを買ってしまえば、効率が低下して電気代がかかるおそれがある。逆もしかりだ。部屋の広さに対して大きすぎるエアコンは無駄な電気代がかかってしまう。
なお適用畳数「8〜12畳」と書かれていた場合、木造なら8畳、RC造なら12畳といった捉え方になる。また適用畳数は冷房と暖房とで異なる場合がある。その際は適用畳数が小さい方(多くの場合は暖房である)を基準に選ぼう。
なお適用畳数「8〜12畳」と書かれていた場合、木造なら8畳、RC造なら12畳といった捉え方になる。また適用畳数は冷房と暖房とで異なる場合がある。その際は適用畳数が小さい方(多くの場合は暖房である)を基準に選ぼう。
部屋や建物などの特徴を考慮する
上述のように、木造とRC造などでは適用畳数が異なる。断熱材が使われているかどうかや、日当たり(部屋の向き)、窓の大きさや数などによっても適したエアコンが変わってくる。部屋の間取りや向き、窓の大きさや枚数などの情報を店員さんに伝えるなどし、適切なエアコン選びにつなげよう。
リビングキッチンは選び方に注意が必要
火を使ったり換気扇を回したりするキッチンまたはリビングキッチンは、温度変化がほかの部屋よりも激しい。広さに対して適用畳数の小さいエアコンを買った場合、余計な負荷がかかって電気代が膨らむおそれがある。ジャストサイズよりも、やや大きめのエアコンがおすすめだ。
9. 賃貸住宅におけるエアコンの注意点と寿命がきたときの対処方法
最後に賃貸住宅にお住まいの方に向けて、エアコン関連の注意点や寿命がきたときの対処方法などを解説する。
エアコンが付いていない賃貸住宅の注意点
賃貸住宅にはエアコンのない物件も多い。そうした部屋にエアコンを設置する際は、事前に必ず大家または管理会社の許可を得ることだ。室内にエアコン配管用の穴があいていれば設置は簡単にできるだろう。だが配管用の穴がなく、かつ室外機の設置場所がない場合などは、取り付けが許可されないこともある。内見の際などにエアコンがなかったときは、入居の条件としてエアコン設置を希望してみよう。
なお自分で設置した場合、退去の際に原状回復義務が生じる。エアコンを取り外さなければいけないことに加えて、穴をあけたときは元に戻さねばならず費用が高額になるおそれがあるので覚えておこう。
なお自分で設置した場合、退去の際に原状回復義務が生じる。エアコンを取り外さなければいけないことに加えて、穴をあけたときは元に戻さねばならず費用が高額になるおそれがあるので覚えておこう。
エアコンが付いている賃貸住宅の注意点
既にエアコンが設置されている場合、前住居者の残置物以外は大家が所有者である。そのため賃借人の故意や過失によるケースを除き、故障などの修理は大家負担が一般的だ。だが、故障しているにもかかわらず放置し壁に水漏れ跡がついてしまったときなどは、賃借人の責任となる確率が高い。故障に気づいたら、できるだけ早く大家もしくは管理会社へ連絡しよう。
なおフィルター掃除は、特記事項として賃借人が行うこととされている場合が多い。掃除は自身でこまめに行うとよいだろう。エアコンの劣化を防げるし電気代の節約にもつながる。賃貸住宅に関しては、そのほかにも細かな決まりがある。契約書および重要事項説明書はしっかり目を通しておこう。
なおフィルター掃除は、特記事項として賃借人が行うこととされている場合が多い。掃除は自身でこまめに行うとよいだろう。エアコンの劣化を防げるし電気代の節約にもつながる。賃貸住宅に関しては、そのほかにも細かな決まりがある。契約書および重要事項説明書はしっかり目を通しておこう。
備え付けのエアコンが寿命を迎えたときの対処方法
エアコンが付いている賃貸住宅で、そのエアコンが寿命を迎えたときは、大家あるいは管理会社に速やかに連絡を入れよう。通常使用による寿命であれば、大家負担で交換してもらえる可能性が高い。ただし上述のように、賃貸住宅には細かな決まりがあり、大家や管理会社などによってその内容も異なる。まずは契約書や重要事項説明書を確認しよう。
結論
エアコンの寿命は10〜13年程度と考えておこう。夏の猛暑や酷暑が続く近年、もはやエアコンは必須の家電だ。だが寿命を迎えたからと簡単に買い換えられるほど安くはない。それに健康のためにも、日頃のお手入れや定期点検、クリーニングなどを実施(依頼)して、エアコンの寿命を少しでも延ばすとともに電気代の節約を目指そう。
(参考文献)
- 1:統計局ホームページ_統計データ
https://www.stat.go.jp/data/index.html - 2:消費動向調査 - 内閣府
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/menu_shouhi.html - 3:環境省_廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください!
https://www.env.go.jp/recycle/kaden/tv-recycle/qa.html
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