1. 「ブロイラー」とは
まずはブロイラーから、どういった種類の鶏肉なのかを詳しく解説していこう。
短期間で出荷する食用の若鶏
短期間で出荷することを目的に飼育される鶏の品種がブロイラーだ。実は、スーパーや精肉店などで手に入る鶏肉の多くがこれであり「若鶏」と表現されることもある。通常、成鶏となるのに必要な期間は4~5カ月だが、ブロイラーは40~50日と非常に短い。日本で食べられる鶏肉のほとんどがブロイラーであると述べたが、日本国内のみで年間6億羽ものブロイラーが出荷されているというから驚きである。
ブロイラーの主な産地
ブロイラーは、出荷サイクルを早めるためにアメリカで開発された。日本では第二次世界大戦後から飼育が始まり、今現在も生産されているが輸入に頼る部分も多い。世界の主な生産国はブラジルや中国、タイやアメリカなどである。国内では鹿児島県、宮崎県、岩手県が3大生産地となっている。
2. 「地鶏」とは
次に、地鶏について見ていこう。何となく高級そうなイメージがあるが、その感覚は正解だ。地鶏は厳しい条件を満たしてやっと認められるのである。
JAS規格に準じた食鶏
- 在来種純系もしくは在来種を片親か両親に使っていること
- 飼育期間が孵化日から80日以上あること
- 孵化から28日以降は1平米あたり10羽以下の環境で平飼いされていること
「JAS(日本農林規格)」(※1)で定められている地鶏の定義である。在来種とは、明治時代までに国内で成立、または導入され定着した品種を指すほか、平飼いとは鶏が地面の上を自由に動き回ることのできる飼い方をいう。ギュウギュウ詰めの状態で飼育され、短期的に大量生産されるブロイラーとは大きく異なり、放し飼いで健康的且つ大切に育てられた質の高い食鶏が地鶏である。国内で流通している鶏肉のうち、地鶏の割合はわずか1%程度であることからも、いかに希少品種であるかが分かる。
代表的な地鶏の種類と産地
- 比内地鶏(秋田)
- 東京しゃも(東京)
- 名古屋コーチン(愛知)
- 大和肉鶏(奈良)
- 近江しゃも(滋賀)
- 薩摩味鶏(鹿児島)
これは代表的な地鶏と産地だが、ほかにも地鶏と認可されている食鶏の数は多い。たとえば宮崎県だけでも「海部どり」「霧島どり」「サラダチキン」「高千穂どり」「日南どり」「日向赤鶏」「日向どり」「都味どり」「みやざき地鶏」「宮崎の赤どり」がある。
3. 「銘柄鶏」とは?
もうひとつ、銘柄鶏についても知っておこう。同じタイプと勘違いされがちだが、銘柄鶏と地鶏とは異なる。
こだわって育てられた食鶏
地鶏のような明確な定義はなく「美味しさ」を求めて飼料や飼育期間を工夫し、こだわって育てられた食鶏を銘柄鶏と呼ぶ(※1)。わかりやすくいうと、地鶏の条件には当てはまらないがブロイラーではない食鶏や、ブロイラーをアップグレードした食鶏が銘柄鶏である。ブロイラーと同じ品種から作る「若鶏系」と、それ以外の「赤系」に分けられるが、前者はブロイラーにカウントされる場合もある。
代表的な銘柄鶏の種類と産地
- 南部どり(岩手)
- 地養鶏(岩手・宮城・福島)
- 伊勢赤鶏(三重)
- 紀州うめどり(和歌山)
- 佐賀県産若鶏 骨太有明鶏(佐賀)
地鶏にもいえることだが、銘柄鶏は生産地と深く関わりを持つ。地域性が大きな特徴のひとつで、郷土料理やご当地グルメを通して地域の活性化に貢献している。
4. ブロイラーと地鶏の味や値段の違いは?
ブロイラーと地鶏とでは味わいが異なる。それぞれの特徴や、値段の違いなども覚えておこう。
ブロイラーの味わい
ほとんど動かないブロイラーは、さまざまな料理に使われることからも分かるように、柔らかくて食べやすい肉質が特徴であるが、味わいは淡白だ。大きな鶏舎の中ですし詰め状態で飼育されることによるストレスや、ホルモン剤などの影響により、品質や味は劣るという声もある。
地鶏の味わい
地鶏は1平米あたり10羽以下の広々とした環境で動き回って育つ。筋肉に関係する運動量は肉質に顕著に結び付くため、地鶏の歯ごたえ(弾力)はブロイラーの比ではない。また濃厚なうえ水分量が豊富なことから深みのある味わいも特徴である。淡泊な味わいのブロイラーに食べ慣れている方が地鶏を食べた場合、鶏本来の風味を持つ美味しさに驚くはずだ。
値段の違い
上述の通り、国内で流通している地鶏の割合はわずか1%程度である。ほかの品種の比率も交えて紹介すると、ブロイラー53%、若鶏系銘柄鶏42%でおよそ9割を占める。次いで赤系銘柄鶏4%、地鶏1%と続く。地鶏は希少な分だけ高価で、ブロイラーの3〜4倍あるいは6倍ほどの金額で取引されることも多い。
5. ブロイラーで作るチキン南蛮の簡単レシピ
地鶏は気軽に食べられないかもしれないが、ブロイラーだって美味しく調理することは可能だ。最後にチキン南蛮のおすすめレシピを紹介しよう。
材料
鶏むね肉・塩胡椒・小麦粉・卵・サラダ油を用意しよう。4人分作るのであれば、分量は鶏むね肉2枚、小麦粉27g(大さじ3杯)、卵2〜3個といったところだ。塩胡椒とサラダ油は適量でよい。また、タレとして醤油と酢を大さじ2杯ずつ、砂糖大さじ3杯、水大さじ3杯、それに小さじ1杯の片栗粉を水(小さじ2杯)で溶いておく。そのほか、市販のタルタルソースの用意も忘れないようにしよう。
作り方
- 鶏むね肉を食べやすい大きさにカットし、塩胡椒と小麦粉をまぶしておく
- タレの材料をを鍋で沸騰させ、水溶き片栗粉でとろみをつけておく
- フライパンにサラダ油をひいて熱し、鶏むね肉に溶いた卵を絡めながら揚げ焼きする
- タレを絡めて皿に盛り付け、タルタルソースをかけたら完成
地鶏では硬くなりがちな唐揚げやチキン南蛮も、肉質が柔らかいブロイラーであれば外はカリッと中はジューシーに仕上がる。レタスやトマトなど、お好みの野菜を添えていただこう。
結論
ブロイラーと地鶏、そして銘柄鶏の違いはお分かりいただけただろうか。希少価値の高い地鶏だが、機会があればぜひその味を堪能してほしい。もちろんブロイラーも十分に美味だ。いろいろな料理に合う汎用性が高いのも特徴である。これを機に、いろいろな鶏肉料理にチャレンジしてみてはいかがだろうか?
(参考文献)
- 1:農林水産省 日本農林規格の改正について「地鶏肉」
https://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/pdf/jas_tyousa_kai_sryou2_150609.pdf
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